「うぎゃぁぁぁぁーーーーー」
静かな森の中、猿野天国は絶叫しながら走っておりました。
なぜかと言うと、
「お兄ちゃん待ってーーーー」
後ろから兎丸比乃が追いかけて来ているからでした。
「待てるかー!その手の物騒なモン置いてから言え!」
そして兎丸の手にはサブマシンガンが握られておりました。
「バトる?4」
ザザザザザザ・・・・・
草をかき分け、木々の間をジグザグと猿野は走っておりました。
兎丸もその後を必死で追いかけておりました。
時折手に持ったマシンガンを構えるのですが、走っているのと、猿野がわざとジグザグに走る為なかなか撃つ事は出来ませんでした。
二人の距離は約20M。
兎丸の足ならば簡単に縮められそうですが、敢えて兎丸はそれをしませんでした。
なぜなら、
「いいかスバガキ。それ以上近づいたら俺のゴイスー武器でその頭吹き飛ばしてやるからな!」
と言って猿野が威嚇しているからでした。
このゲーム、お互いの武器が解らないのでそう言われたらハッタリと思っていても油断は出来ないのでした。
「ねー兄ちゃんのゴイスー武器って何さ?」
「言えるか!知りたきゃ近づいてみろ!」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
ザザザザザザ・・・・・
猿野は走りながらチラリと自分の鞄を見ました。
そしてその中に入っている武器を思ってうんざりしました。
(・・・・木刀なんて知れたら一瞬で蜂の巣だよな・・・・)
せめてナイフか何かであったならと猿野は絶望的に思いました。
(とりあえず今は何とかしてアイツを巻かねーと)
諦める感の無い兎丸の気配を背中に感じつつも猿野はそう思いました。
ザザザザザザ・・・・・
猿野の背中を追いながら兎丸は考えてました。
(・・・・ゴイスー武器って何だろ。爆弾?ランチャー?爆弾だったら確かにヤバイかも。玉砕覚悟で道連れとかされたらヤだし。やっぱこの距離から狙い撃ちが安全かなー)
思ってマシンガンを構えても当てるのは難しそうで、
(外れたら弾勿体ないなー。もう結構使ってるし。兄ちゃん転けてくれたらいいのに)
そんな事を思いつつ、構えたり下ろしたりして走っておりました。
ザザザザザザ・・・・・ガサッ
一見終わりそうもないこの鬼ごっこも案外とすんなり終わる事になりました。
森が切れたのです。
「ヤベ!」
猿野にとって盾になる木が無くなるのはとても危険でした。
とにかく何か盾になる物を探して猿野は視線を走らせました。
そして目の端に写った木にとりあえず走りました。
しかしその木には先住者が居りました。
そう、スタートから動いて居ない、
「・・・・・・司馬?」
「・・・・・・」←あ、猿野
彼でした。
ザザザザザザ・・・・・ガサッ
「お兄ちゃん見いつけた!」
背後で兎丸の声を聞き、とっさに猿野は地面に伏せました。
タタタタタタタタ・・・・・
思った通りサブマシンガンの音が聞こえ、そして兎丸の絶叫も聞こえました。
「シバくん・・・・シバくん避けて!」
(いや、無理)
現在頭上を通過しているだろう弾の数と速度を考えて猿野は突っ込みました。
タスタスタス・・・・
前で軽い音がして、少し頭を上げて見ると、白いベストが粉々になって赤い物が沢山飛び散っている図が見えました。
(スゲースローに見える)
猿野は怒るとか怖いとかよりそう思いました。
後ろを見ると兎丸が呆然とした顔でマシンガンを構えてました。
そして自分を見ている猿野に気づくとまさに脱兎の勢いで森の中へ消えました。
(・・・・一応は助かったな)
兎丸が完全に消えたのを確認して猿野は身を起こしました。
そして司馬に近づきました。
「・・・・司馬。生きてるかー?おーい」
司馬は木を背に座ったまま死んでおりました。
ベストはボロボロでまだ血が染み出しており、なかなかグロテスクな図でした。
「まあ、お前も親友に殺されたんだ悔いはないよな」
猿野はそう言って司馬の膝にのっていたカバンを漁りました。
そしてカバンの奥から銃を見つけるとズボンとベルトの間にねじ込みました。
残っていた食料も自分のカバンに詰めました。
「悪いけど貰っていくぜ。そんかわり俺が最後まで生き残ったらお前の死体は家に連れて帰ってやるからさ。交換条件な」
猿野はそう言って司馬の頭を軽くポンポンと叩くとその場を後にしました。
風がヒュウっと吹いて司馬のサングラスがかすかにカタカタ言いました。
そしてまたその場は静かになりました。
やがてお昼の放送が始まりました。
司馬の名前が呼ばれました。
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