「お姉ちゃん４」

　葵が愛幕の前に座ってなにかをとっくり眺めていた。
　ひょいっと除くとそこには、愛幕800が写されていた。
　（・・・・・・・・）
　葵の顔をも一回見ると・・・・ウットリしてた。
　（欲しいのか！欲しいのか司馬葵！）
　そう、我弟君はコンピュータ関係が大好きである。
　とくに形が可愛い林檎系の新作はそれはもう好きである。
　（基本的に形で決めるんだコイツは）
　しかし、我が家にコンピュータは余っている。
　思いっきり余っている。
　言ってしまえば、各自に一台を通り越して各部屋に一台ある。
　はっきり言おう、いらない。
　「葵、これ以上ＰＣ増やすのはいくらお父さんでも許してくれないよ」
　そう言えば、物置にも数台有ったような・・・・。
　「葵。聞いてるかー？おーい」
　人の声など届いてないのか、葵はさっさと部屋を出ていった。
　んで、父の部屋の戸が動く音がした。
　（・・・・おねだりか）
　まー高校生がハード買おうと思ったら親にたかるしかない訳ですが・・・。
　（これでＰＣ何台目だ？ひーふーみー・・・）
　いかに息子に甘い父親でも止めるだろう・・とタカをくくっていた私の前に親父のプラチナカード持った葵が帰ってきた。
　「うぉい！！！！！」
　（何を考えてるあのクソ親父！！！！！！！）


　
　「お父さん！！！！」
　怒鳴りに言った目の前には、見事ににやけた男が居た・・・・。
　「お姉ちゃん！葵が「お父さん」て！！！声に出して言ったんだよ！！！あー何年振りだろうねー。オーイオイ（泣）」
　・・・・・駄目だこりゃ・・・・。
　（と言うかアンタの育て方には前々から言いたい事が山程あんですけど・・）
　もういいお前の金だ。私は知らん。



　
　
　「ハロ〜♪ソフマップファ〜ン♪」
　「音程ずれてる」
　「・・・・・・・（♪）」
　と言うわけで、私・妹・弟の３人で電気屋街。
　葵に一人で買い物させるといらん物まで買い込むので、私はお目付役。
　妹は車の運転を買ってでたので運転手として同行。
　目的地は妹の歌ってた祖父地図。


　
　「マックは〜４階でーす」
　「はいはい。葵！行くよ」
　さっそく何か変な物を買い込みかけてる葵の襟首掴んでさっさと４階へ行く。
　・・・・筈なんだけど。

　「だー！！！エアーダスターはまだ有る！買うな！！！！」
　「・・・・・（残念そう）」
　「ねーねー。このマウスパッド可愛い�｡」
　「勝手にカゴに入れるな！！！って葵！どさくさで何を買ってる！」
　�Tキーボードを打つ時手が疲れない羊のぬいぐるみ�U
　「・・・・・いらん！」
　「・・・（ガーン！！）」
　「あーあ。葵ちゃんかわいそー」
　「あんなのが家に何個有ると思ってんの！葵！マウスももう要らないからね！！！」
　「・・・（思い切り不服そう）」
　「いいからさっさと４階に向かう！！！！」
　「葵ちゃん。見てみてーブラシー」
　「（楽しそう）」
　「聞けよテメー等！！！！」

　やっとの事で４階。
　「あー疲れた・・・・」
　しかも知らない内にマウスパッド４枚も買ってるし・・・。
　いいけどさ、親の金だから。
　「発見〜♪愛幕800ちゃん」
　目ざとい妹が獲物を発見した。
　どれどれ、葵の愛しい愛幕800ってどんな子かなー。

　

　林檎　愛幕800　スーパードライブモデル　￥244800。
　ディスプレイが有って、細い首が有って、下に半円の胴体がある。
　（なんか無人島の椰子の木みたい）
　真っ白でかなり可愛いけどね。

　「葵、見つかったよ。さっさと買いなさい」
　向こうの方でウロウロしてた葵を呼ぶ。
　「・・・・・・・・」
　「・・・・・・（首を傾げる）」
　「・・・・・・・・」
　なに？
　「葵。コレでしょ？どうしたのよ」
　つーか何を不思議そうな顔してんのよ？
　コレと違うの？
　戸惑ってる私を無視して葵はずっと悩んでいた。
　「・・・・・・（ジッ）」
　「何？・・・・首を傾げない？」
　ってどういう意味だ？
　コンピュータが首を傾げる？
　ん？
　思わず私も首を傾げてしまった。
　「・・・・お姉ちゃん。もしかして葵ちゃん、コレの事言ってるんじゃない？」
　妹が指さした先には、ＴＶでしてた愛幕800のＣＭが流れていた。

　

　サラリーマンが歩いている。
　ショーウインドウに愛幕800が並んでいる。
　サラリーマン眺める。
　愛幕800もサラリーマンを眺める。
　サラリーマン首を傾げる。
　愛幕800も首を傾げる。
　サラリーマン去る。
　その後ろ姿を愛幕800が追って見ている。

　・・・・・いや、このＣＭは見た事あるけどさ・・・。
　「・・・葵くん。もしかして・・・コレ本気にしたの？」
　「・・・・・・・（こくり）」
　「・・・・・・」
　「・・・・・・」
　「・・・・・・」
　「あ・・・・あははははははははは！！！！！！」
　「葵ちゃんかわいいーーーー！！！！！！！！」
　「馬鹿だねーアンタは・・あははははは。首傾げる訳ないじゃん！！はははは」

　
　いやホントに、ＣＭを真に受けるな馬鹿者。

　
　結局この後葵の買う気は失せたようで、３人でご飯食べて帰った。



　

　葵は大笑いされて傷ついたのかしばらく機嫌が悪かった。

　しかたないので妹と紙に「愛幕八百」と書いて葵の愛幕に貼りまくってやった。
　旗まで立ててやったけど機嫌は悪かった。

　
　しょうがないので林檎社に「首傾げる愛幕800」作って下さいハガキを書いてやった。

　機嫌が直った。

　可愛い奴め。

　（でも作ってはくれないだろう・・・そんな物）

※おまけ※

　「・・・・・お姉ちゃんＳ＆葵。ちょーっと聞きたいんだけど。なんでハード買ってないのにこんなにお父さんのカードは残金が減っているのかなー？」

　『豪遊しまくったから！』
　「・・・（こくり）」

　「・・・・・・・（涙）」

　自業自得ですがなお父様。