「お姉ちゃん2」
たまたま駅前で葵と会ったので自転車の後ろに乗せてもらった。
らくちん♪らくちん♪
「到着〜♪たーだいま・・・ん?」
葵が黙って庭の一角を指さした。
お父さんの私物が散乱していた。
と言うかオーディオセットが池から生えてた。
「・・・・・」
「・・・・・」
黙って荷台に乗ると、葵も黙ってこぎ出した。
後ろから聞き慣れた悲鳴が聞こえたが無視した。
キィキィキィ
「・・・これからどうしよっか?」
あんの馬鹿親父また何したんだか・・
「・・・・・」
ああまたナイーブな葵が落ち込んでる。
心配しなくても、どうせお母さんの事だから二時間もすればケロリと忘れるわよ。
「問題はその間どこで時間潰すかよね」
コンビニ?サテン?・・・でも財布が寂しいしなー
葵お金持ってるかなー無理だろうなー有るだけCD買うからなコイツ。
そういえば・・・
「ねぇ、葵。今どこに向かってんの?」
なんか迷いなく突き進んでんですけど。
「(学校)」
は?学校?誰の?アンタの?何で?
「(大丈夫入れる場所有るから)」
いや、そんな問題でなくて。
とか思ってるうちに十二支高校到着。人気の無い学校って不気味。
ガッシャ、ガッシャ。(フェンスをよじ登る音)
まあ、葵くんワイルド。
「(手でこいこい)」
・・・スカートでフェンスを越えろとな?
・・・・・・・
・・・・・・
(葵がも一度こいこい)
・・・・・
・・・越えてやったとも。良かったタイトでなくて。
「ちょっと葵!どこよー?」
人気の無いグラウンドで一人なんてやだよー。
どこ行ったー!馬鹿弟!
ヒュン!
ポーン!
テンテンテン!
野球ボール?
ってアッチから歩いて来る葵は何でグローブ着用?
え?体育倉庫こじ開けた?アンタ変な所大胆よね・・・
「(キャッチボールしよう姉さん)」
・・・は?この寒空に?グランド不法侵入して?しかも姉弟で?君は馬鹿?
さむ!
「(オーライ)」
「いくわよー」
・・・やってまーす。いいの私も馬鹿だから。
って言うか金属バット重!
ドリャア!
ごん☆
ボテボテ・・・
「・・・・」
何!その目は!
いっとくけどコレが普通の女の子(?)よ!
「(アメリカ式お手上げポーズ)」
ブチ!
ああ!待ってろ!飛ばしてやろうじゃねーか!
「・・・(首をかしげる)」
「いいから待ってなさい!」
えーっと体育倉庫は・・・発見!
ガサガサガサ・・・!ふふふ(キラーン)
「・・・(待ちぼうけ)」
ビシィッ!
バシッ!
「!?」
「ナイスキャッチ!」
ふふふ
これぞお姉さまの十八番テニス!
これなら届くわよー(ニヤリ)
球もテニスボールにしてみました。
「んじゃ、仕切り直しね」
「(手を上げる)」
「はい。司馬葵くん」
「(勝負しよう)」
は?勝負?いいわよ別に。
「それじゃあ10球勝負!パーフェクトでアンタの勝ち。1球でもミスしたら私の勝ち。どう?」
「(オッケーサイン)」
なんかその余裕ツラが気になるんですけど。
「負けたら向こう1週間目太郎の散歩はアンタね!」
ちなみに目太郎てのはウチの犬。(本名メタトロン)可愛いんだけど力強いから散歩したくないのよね。
(ちなみに紀州犬とピレネーの雑種。笑っちゃうくらいデカイ)
「(姉さんは?)」
「私?私が負けたら帰りの自転車乗せてあげる」
「(ズルイ)」
「アンタが勝てば問題ない!ホラ!早くするわよ!」
実際問題なしだったんだけどね。
スパーン!
パシッ!
スパーン!
ビシッ!
ズパン!
バシン!
・・・おいおい私の弟は化け物か?
言っておくけど私テニスは上手よ?
くそー葵の出てる試合見とけばよかった!凄いじゃねーかこんちくしょう!
「(笑い)」
余裕かますな!
あー悔しい!どおりで余裕かましてると思った。
・・・最後の1球。
絶対葵が取れない球を打ってやる!
「葵!最後いくわよ!」
「(いつでもどうぞ)」
顔狙ったろかコラ!
スッパーン!!
私が打ったのは激高い球。
目論みでは葵の頭を越えて飛んでいく筈・・・だった。
ええ、だったのよ。
「(姉さん重くない?)」
重いわ!
ギッショ!
ギッショ!
ペダルがぁぁぁ・・
「I want to ride my bicycle 〜♪ I want to rede my bike〜♪」
歌うな!
しかも嫌味かその歌は!
つーかこんな時だけ声出すな!
「I want to ride my bicycle 〜♪ I want to ride it where I like〜♪
」
ギッショ!
ギッショ!
「葵〜降り落とされたくなかったら別の歌にして」
というか本当振り落としたい・・・・
重いんだよテメーは。
「・・・・りんごの森の子猫たちに♪」
「ぎゃははは!」
アンタのキャラでスプーンおばさんは止めてー!
つーか何でそんな古い歌歌えるのかね・・・・
(今にして思えばココでこんな事さえ考えなければ・・・)
ズルッ!
『あっ』
ぎゃああああ!
ペダルを踏み外したのは誰の所為?
傷だらけで帰って大笑いされたのは誰の所為?
この筋肉痛は誰の所為?
後日。
「だからアンタが散歩に行くのは筋が通ってると思うのよ。姉さんは」
「・・・・・・・」
「ホラ目太郎もあんなに喜んでる」
「・・・・・・・」
「ん?何か言いたそうね」
「(運動しないと太るよ姉さん)」
「・・・・さっさと行け!!!」
「(笑い)」
またキャッチボールしようねって可愛いこと言ってたけど、この筋肉痛が治るまで死んでもしてやんない。
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