「リベンジ」

 「やあ劉、御気嫌いかがかにゃー?」
 さわやかな龍麻。
 「アニキ・・そのホウタイはなんや?」
 しかしホウタイでぐるぐる巻きでもある龍麻。
 「ははは、これはどっかのアホがウチの義姉の猫飢えさせよったんで代りに僕がボコられた跡さ」
 前回龍麻の義姉の猫を預かった劉。
 しかし嫌がらせのように長い名前の所為でエサがやれなかったのだ。
 (名前を呼ばないとエサを食べない)
 「えっと、アニキその・・それは・・」
 「ははは、どうした劉?別にテメーの所為で2日も岩山先生のアツ〜イ看護を受けたなんて言ってねーぞ?」
 目がマジである。
 「アニキ〜ワイかて努力したんや〜」
 あの後、とりあえず猫の名前がピカソの本名と解った劉は図書館で調べたのだが、あまりに長いためキチンと発音できず、それが猫には気に入らなかったらしい。
 「努力、根性・・・僕のもっとも嫌いな言葉だ」
 嫌なリーダー・・・
 「まーそれはそれとして。かわいい弟の為にもっかいチャンスをやろう」
 「・・アニキ単にまた預けられたんやないん・・」
 ヒュン!バキ!
 劉の横にあった電柱が折れた。
 「なにか言ったかにゃ〜♪」
 「ウソですめちゃめちゃしたいです」
 へへーと土下座する劉。やっぱり命は惜しい。
 「いい弟を持って嬉しいね〜」
 (ワイはいいアニキが欲しいわ・・・)
 かわいそうな劉。
 「今度の名前はHHH(トリプルエイチ)短かいやろ?」
 「で物はなんや?」
 見た所龍麻は手ブラである。
 「上でさっきから飛んでるやろ」
 「上?」
 上空には軽く見積っても5M以上はある鳥が飛んでいる。
 「アッアニキ、なんやあれ!」
 「ロック鳥。爺ちゃんのペット」
 「ロック鳥てなんや!」
 「なんや知らんのか?アラビアン―ナイトにも出てくるやろ?怪鳥や怪鳥」
 「怪鳥て・・」
 そんな事言われても困るだろう。
 「エサは何でも食うけど特に好物なんが人肉」
 「は?」
 劉が龍麻の言葉を理解するより速くHHHの爪が肩にくいこんだ。
 そしてじゅるっと舌なめずりをしている、そのくちばしから鳥にはおおよそ似つかわしくない犬歯が覗いた。
 「ア・・アニキ・・コイツひょっとして」
 「めっちゃ腹ペコ♪」
 にこやかに龍麻。
 「うぎゃーーー嫌やぁぁぁぁぁぁぁ」
 あっという間に上空へと運ばれていく劉。
 「元気でなー劉。生きてたらまた会おう♪」
 さわやかにホウタイの端を振る龍麻。

 半日後
 バサバサバサ・・
 龍麻のマンションのベランダに先ほどの怪鳥が帰って来た。
 「おかえりHHH。ちゃんとしてきたか?」
 「ギャー!」
 「そーかそーか♪イイ子だ」
 よしよしと頭を撫でてやる。
  トルルルルルル
 「はい緋勇です。あ、岩山先生。先日はどーも・・はい?劉が半分死にかけで病院の屋上に居た?あーもー僕の時以上にめいっぱい可愛いがってあげて下さい。えー彼もそれを望んでますから・・・はいはい・・それじゃあ」
 電話を切ってにやりと龍麻が頬笑む。
 「やっぱ弟なら兄ちゃんの苦労も味わうべきだよな。なあ?HHH」
 「ギャーギャー♪」
 怪鳥も嬉しそうだ。
 「さー松坂牛だよHHH。腹へっただろう」
 ドーンと固まりが出てくる。
 「ギャギャ。」
 「人肉なんてマズくて食えないよな?」
 肉にくらいついてる鳥の頭を撫でてやりつつ龍麻はにこやかに頬笑んでいた。

 
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