「お父さんといっしょ」
緋勇砥石(ひゆうといし)・緋勇弦麻の弟で龍麻の義父
「緋勇、後はお前だけだぞ。早く時間を决めろ」
マリア先生が急病の為(血がたりないらしい)。犬神先生が変わりに担任を勤めている3年2組。
「僕はパスして下さい・・・」
机に張りついて答えるのは、珍しく元気のない緋勇龍麻。
「この時期に二者面談をパスできると思ってるのか?さっさと両親のどっちかに来てもらえ」
「・・・・・・は〜い」
やっぱり元気の無い龍麻。クラスメートも不思議そうに見ている。
「これでHRは終りだ。次の授業の用意をしておけよ」
いつものようにヨレヨレと出て行く犬神。
「h〜、二者面談か〜」
うなだれて、さらにうなだれている龍麻。
「へへ、やっぱりひーちゃんも怒られんのが嫌なのか」
こう言ってやって来たのは、二者面談の後からこずかいをSTOPされている蓬莱寺京一。よっぽど成積が悪かったらしい。
「龍麻は別に成積は悪くないだろう?」
そう言ったのは、小羊の心を持った象・・・もとい醍醐雄矢君。
「そのとうり、成積が地をはってるチミ達と一緒にすんな」
「「hっ」」
「そんなんじゃないんだーーーー」
頭を抱える龍麻・・・ナニがそんなに嫌なのか・・・
それでも、呼ばないといけません。
大事な時期の二者面談ですから。
三日後
「ひーちゃん、今日お父さん来るんだって?」
いつも元気な桜井小蒔と元気の無い龍麻。
「情報早いな桜井」
「杏子がインタビューするって張りきってたんだ」
「・・・・別におもろい父じゃないぞ・・」
おもしろいとかでなく君の父だからインタビューするんだという事には気づいてない。
「でも、ひーちゃんのお父さんて興味あるなー」
「ハァァァ・・・」
とにかく元気の無い龍麻。
放課後
「緋勇、父親はいつ来るんだ?」
ヨレヨレと犬神。
「もう、来ますよ。―で僕は帰ります。父によろしく」
「お前が元気ないなんて珍しいな」
「父に会えば解ります。じゃあ、さようなら」
犬神よりもヨレヨレと帰る龍麻。
「・・・・・・?」
数十分後
カラカラカラ・・・・
「こんにちは、緋勇龍麻の父です」
物静かな男性が入って来た。
息子と同じく顔の半分が前髪という事を除けば、とくに目出った所の無い線の細いやさしげな男性である。
「どうかしましたか?」
「ああ、いえ。担任(代理)の犬神です。どうぞお座り下さい」
「はい」
音も無く座る。なにもかも息子とは対照的である。
(アイツが嫌がっているからどんな人物かと思ったが)
「普通の人ですな」
「はい?」
「いえ、何でも・・ええっと、龍麻君ですが成積も優秀で、まあ、多少問題も起しますが・・」
「・・・・問題ですか・・」
「ええ、でも問題と言うほどの・・・緋勇さん?」
なぜか窓際に居る緋勇父。
(確か座って居たハズ・・)
「あの・・」
「天国の弦麻兄さん!加代義姉さん!僕は龍麻さんを問題を起すような人間に育ててしまいました!」
「緋勇さん・・・?」
空に向かって大声を出す緋勇父。どう声を掛けて良いのか解らずただ見ている犬神。
「申しわけありません。兄さん、義姉さん・・・」
窓枠に足をかける。
「あの、緋勇さん・・・」
「死んで御詫びします・・」
次の瞬間には窓の外・・・ここは三階・・・
「だぁぁぁぁぁぁ!緋勇さん!」
新聞部部室
「自殺グセ?」
コーヒーを飲みつつ杏子。
「クセっつーか何つーか。僕が弦麻パパからの預かり物っていう意識が強くてさ。あれも正義感が強いって言うのかね・・」
「あの・・・ひーちゃん・・今、窓の外にお父さんが落ちていったんだけど・・・」
青い顔した桜井。
「やっぱり・・こうなると思ってたんだ・・・」
龍麻がヤレヤレと窓の外を見ると下には、全身にケチャップをかけたような緋勇父が倒れていた。
Thh・・兄さん、義姉さん、僕の育て方のどこが間違ってたんですか・・・U
こんな所が間違っているとは思わない緋勇砥石(43)
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