「鬼さんどちら?」

 鬼哭村
 どこぞの山奥にあるこの村は仰々しい名前とは裏腹に大変のどかな村でございました。
 もっともこの村が底抜けにのどかになったのは某少年が来てからですが・・・


 「・・・・父上。私の進むべき道はこれであっているのでしょうか・・・」
 立派な墓石の前で、己の進む道について悩んでいるのはこの村の村長・九角天戒でした。
 この九角さん、鬼道衆という怖ろしげな集団の頭であるにもかかわらず大変優しい人な為、時々自分の道に悩んでしまうのでした。
 そんな時はすべての始まりである父の墓前に来るのです。
 しかし、たかが石に話しかけて悩みが解決するのでしょうか?
 「父上・・・」
 それはそれとして悩んでいた天戒の後ろからけたたましい足音が近づいて来ました。
 「天戒ーーー!!!」
 某少年こと緋勇龍斗でした。
 ガシッ!
 「たっ龍?」
 いきなり龍斗に抱きつかれて天戒はびっくりしました。
 そしてもう一人。
 「わーははは、龍々ナイスや!」
 京都の遊び人們天丸でした。
 ガッシ!
 ついでコイツも抱きつきました。
 そして更にもう一人。
 「あー、畜生!そうきたか」
 鬼道衆の末っ子こと風祭奥継も来ました。
 風祭は天戒に抱きつきはせず、悔しそうにその前で立ち止まりました。
 「くっそー!・・・・いーち、にー・・・」
 そして数を数え始めました。
 「・・・・・おい、龍に們天丸。それに奥継。これは一体何だ?」
 二人に抱きつかれて意味が分からない天戒がそう聞きました。
 「あ、お屋形様・・これは・・・その。〜〜〜たんたん!お前が説明しろ!」
 「へいへい。それはいいから数かぞえろよー」
 「うるせー!解ってるよ。さーん、しー・・・」
 また数を数え始めた風祭を確認してから、龍斗はにんまりと天戒を見上げて言いました。
 「今な三人で色鬼してんだわ」
 「色鬼?」

 色鬼=鬼ごっこの亜種。まず鬼が好きな色を言い、他の人は鬼に捕まらないようにその色を見つけてタッチ。全員が色にタッチしたら十数えてまた初めから。
 基本的に鬼は見つけにくい色を言う。

    
 「で、奥継が赤色指名したから天戒を探してたんだ」
 「見つかって良かったわー。もう少しで捕まる所やったで」
 なーっと二人で顔を見合わせて笑う。
 その顔は本当に楽しそうで抱きつかれて戸惑っていた天戒も少し楽しくなった。
 そんな天戒を見て龍斗は言った。

 「天戒もするか?」

 天戒が苦笑しながら頷くのを見て、一人は驚いて、一人は面白がって、最後の一人は楽しそうに笑いました。



 「・・・・きゅー、じゅうー。次は銀色だよ、銀色」
 桔梗がそう大声で言うと皆バタバタと蜘蛛の子を散らしたように走りました。

 「銀だったら剣も大丈夫だよな。壬生、村正抜けよ」
 「・・・・これは呪われてるのだぞ」
 「かまわねーって、ホラ桔梗が来るぞ!」
 構わなくはないだろう・・・と思う壬生と全然お構いなしな火邑。
 
 
 「わー!桔梗の姉さん足早いわ」
 「ふふふ、早く探さないと捕まえてしまうよ?」
 「ばか!們天丸コッチ来んな!」
 「ええやん。一蓮托生やー」
 「バカ野郎ー!」
 們天丸の顔に蹴りを入れる風祭とそれを見て笑ってしまった桔梗。

 「銀てどんな色だ?」
 「どんなって言われても説明が難しいな・・・・そうだ!御神槌神父の髪の色だよ」
 「ああ、わがった」
 「こんな事ならスプーンでもポケットに入れて来るんだったなぁ」
 「・・・スプーンてなんだ?」
 質問が堂々巡りの泰山とクリス。

 「龍斗さん。さー私の所にどうぞ」
 「わーい。御神槌さんだー」
 「師匠!御神槌には近づいたら駄目だぞ」
 「・・・・・貴方は本当に失礼ですね。九桐さん」
 「すまない。どうもお前の目は汚れているように見えてな」
 「・・・・・ふふふふ」
 「・・・・あーはははは」
 目は笑ってないです、御神槌と九桐。で、その雰囲気に入っていけない龍斗。

 「ほほほ、ここでこうして見ているだけでも楽しいの」
 「ふふふ、本当ですね。・・・・奈涸さんと弥勒さんは行かれないんですか?」
 「どうもああして走り回るのは苦手でね。それに見てるだけの方が楽しい時もあるさ」
 「片手だとどうしてもバランスが悪くてな・・・」
 縁側にてくつろぐ、足の悪い雹と目の見えない比良坂、それと二人に茶を入れてやってる奈涸。ついでに弥勒。

 
 きゃーきゃー騒ぐ皆を遠巻きに見ている人物二人。
 「・・・・・下忍から聞いて来てみれば・・・また面妖な・・・」
 鬼道衆の頭脳・嵐王。
 「おう、嵐王か。どうだ、お前も仲間に入るか?」
 と、ちょっと休憩中の九角。
 「・・・・若。我々は鬼道衆ですぞ?この様な子供の遊びに興じるなぞ・・」
 「・・・・言うな嵐王。見てみろ、皆楽しそうではないか」
 言った先には笑って走り回っている鬼道衆のメンバー達。
 しかし、嵐王は渋い顔のままでした。
 「・・・・嵐王。お前の言いたい事も良く解っているつもりだ。しかし、最近こんな時間もいいのではないかと思ってきたのだ。こうして皆が復讐など忘れて遊んでいられる時間がな・・・・・」
 「・・・・・・・・若」
 その時向こうから掛けてくる人影一つ。
 「天戒。サボってたら駄目だぞーって嵐王さん。仲間入りますかー?」
 にっこりと脳天気な顔で微笑まれて・・・・・
 九角も横で笑って見ていて・・・・・


 
 「次ー!嵐王さんが鬼ー!逃げろーーーー」

 
 「おやおや、嵐王様まで・・・」
 下忍の呆れたような楽しそうな声がしている、鬼哭村は今日もお天気でした。

 





 「はぐれ龍1・2」をお持ちの方は解られると思いますが
 最後の「鬼ごっこ」ロングバージョンです
 最初書いてたのはコチラなのですが、長くなりすぎたので切ってあのタイプになりました
 両方アホっぽいですが、何かほのぼので好きです
 本当にコイツ等20手前か?って感じですが・・・・・
 この村には悲しい事が無いと良いなと思ってます

 そして、はぐれ龍4書いてません・・・・すいません

 ところでコレどこにも載せてなかったですよね・・・・最近書いたり載せたりを忘れがち

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