「NOTE BOOK」

 「ひーちゃん帰ろうぜ」
 いつものように京一が誘いに来るといつも居る筈の相棒が席に居無かった。
 机の上にはノートやら教科書やらがゴチャゴチャ置かれているので帰ってはいないらしい。
 「どーこ行ったんだ?」
 すると近くにいたクラスメートからT呼び出しUとの答え。
 「マリア先生か?」
 近頃、相棒は何かと彼女に呼び出しを受けている。
 しかし、違うらしく首を横に振る。そしてT校舎裏Uとの答え。
 「なーるほど」
 良くも悪くも目立つ彼の相棒はこの手の呼び出しが多い。
 校舎裏で待っているのは、鉄パイプ片手の馬鹿共か、ラブレター片手の女子か、確率は5分5分といった所だ。
 「しょーがねぇ。帰ってくるまで待つか」
 そうと決れば相棒が帰って来るまでに机の上を片づけておくのが良いと思い、散らかった教科書などを重ねていく。
 見た目程優等生でもない相棒は教科書の類はすべて後ろのロッカーに置いて帰る。
 前までは机の中に置いてたのだが、例の呼び出し隊に隠されたり、記念持って帰られてりする為。最近では、鍵付きのロッカーに置くようにしたのだ。
 「ひーちゃんのロッカーナンバーは666と・・」
 慣れた手つきで鍵を開けT異次元につながってんじゃないのかコレUとウワサされている中に本を放り込む。
 どうもロッカーの奥が1点透視になっている気がするが怖いので追求はしない。
 「よし」
 机の上の教科書類は片づいたので、今度は机の中の私物を鞄に入れていく。
 この鞄も仲間内でTあれは絶対四次元につながっているUとウワサになっている1品である。
 「あいわらず謎なモン持って来てるな、ひーちゃん」
 ノート・教科書を除くと残るのは、オモチャと謎のがらくた達、そして授業とは無関係のノート群。
 「ひーちゃんて結構マメだよなー」
 ノートを1冊手に取ってパラパラとめくる。
 ノートのタイトルは「旧校舎における異形達の考察&観察」
 内容は、旧校舎の各階の敵の名前・特徴・落すアイテム・・・・etc
 さらにその階におけるより良い装備品及びメンバーなど、事細かに書かれている。
 あの、御門が感心したという情報ノートである。
 他に、日々の戦闘記録、各個人の技、方陣技一覧などのノートがある。
 この膨大かつ緻密な情報で今までの戦闘がスムーズかつ安全にいけているといっても過言ではない。
 「こーゆー所が信頼できるトコだよな」
 あらためて相棒を見直す京一。
 「ん?なんだこのノート」
 机のさらに奥から1冊のノートが出てきた。
 それは、間にルーズリーフを挟んで枚数を増やせるタイプで先程のノートとは形式が異なる。
 さらに写真やらフセンやらが張ってあり、そうとうなブ厚さをしている。
 「・・・?」
 あまり罪悪感無くページを開いてみる。
 そこには細かい字で何やらびっしりと書いてある。
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・パタン
 ノートをそっと相棒の机に戻す。
 心無しか顔が青ざめている。
 「おー京一。おまたー、さっ帰るか」
 相棒登場。右手が血に染まっている所を見ると呼び出しは鉄パイプの方だったらしい。
 「・・・・・ひーちゃん」
 「なに?」
 「・・・・・・いや、なんでもねー」
 「ん?そうか?じゃー、ラーメンでも食って帰るか。あー腹減った。まったく放課後に呼び出すなってな」
 「・・・・・ああ」
 相棒は楽しげに話しが京一にはさっきのノートが頭から離れない。
 「醍醐は部活だっけか?」
 「・・・・・ああ」
 「そんじゃ、二人で行くか」
 「・・・・・そうだな」


 
 Tひーちゃん・・・・・U
 T何だあのノート・・・・・・U
 Tあの・・・・U
 T『人間観察記録(仲間編)』って・・・・U
 Tなんで女子メンバーの生理週期まで知ってんだよ・・・・U
 T俺の持ってるエロ本のタイトルまで書いてあるし・・・U
 Tあきらかに電話盗聴されてるし・・・U
 Tひーちゃん・・・・もしかしてストーカー・・・U
 Tそれとも何でも観察するのが趣味なのか・・・・U
 T俺達はアサガオとかと同じなのか?U
 T教えてくれよ・・・ひーちゃん・・・U

 「あー今日はコーンラーメンにしよう。京一は何にすんだ?奢ってやるぞ」
 「・・・・ミソラーメン」
 「京一はそればっかだな。飽きねーか?」
 「・・・・いや」

 Tそういや、ラーメンの事も書いてあったな・・・・U
 T今日のこの事も書かれんだろうな・・・・U

 そう思うと背中に冷たい物が流れた。

 それは、あんな物を書く相棒に対してなのか、それとも・・・

 Tそういえば、俺のページ他の奴より少し多かったよな・・・U

 それが少し嬉しかったりする自分に対してなのかは解らなかった。


 ヤバヤバですね緋勇君。

 女子の生理週期は単純に知っといた方が戦闘の援護に呼ぶ時に役立つからいいだろうと私は思うのですが・・・

 だって2日目とかに呼ばれんのは嫌じゃないですか・・・相方には「こんな男は嫌」と言われたが・・

 どうやって調べてるかは謎・・・ゴミ箱とかはあさってないですから・・・念の為に

 盗聴は暇な時にちょろっと・・御門に教えて貰ったようです。あとハッキング。

 根本は「アサガオ観察記録」と変りません。もちろん「狼男観察記録」「吸血鬼観察記録」もあります。

 「暗殺家観察記録」も。

 ページが多いだけで喜ぶのはまだ甘いね、京一君。別ノートにならないと。

 

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