双龍のろけ話

いつも通りの如月家居間。
今日は如月と御門がのんびりとお茶などすすっております。

そこへ、
「のろけたいから聞くがいい!」
と龍麻が襖をバーンと開けて入ってきました。

「聞いてもいいが、ただじゃ困るぞ」
と言う如月の横で御門も頷いています。

「わかっとるわい」
龍麻が後ろから日本酒の一升瓶を取り出して机に置きました。

<如月家ルール>
のろけ話をする場合。酒を持参する
目安:1のろけ=缶ビール1本(360ml)

「いつも思うが「1のろけ」って話題の数なのか、長さなのかどっちなん?」
「どっちでもいいぞ。酒が飲めるなら」
「ですね」
さっそく口を開けて湯呑に注ぎます。

「で、まあ聞いて欲しいんやが」
「いい酒だ。つまみが欲しいな」
「スルメでも焼きなさい」
「聞いて!!」
聞いてやるから待て、と言って如月がスルメを焼きに行きました。
スルメが焼けるまで御門の髪を三つ編みにして遊んで待ちます。

「焼けたぞ」
大皿に乗ったさいたスルメとマヨネーズ&七味がやってきました。

「「で?」」
スルメを齧りながら二人が龍麻の話を聞く体制になりました。

「いやな。先日」と龍麻が話し始めます。
「買い物に行って、ふとビルの前にシュッとした男が立ってるなーと思ったら壬生だった」
「外で見ると新鮮やなーと思って気配を消して後をつけたんやけど」
「あいつ何しててもカッコイイ!」
「あれ?僕の恋人カッコよくね?って50回くらい思った」
「よかったな!解散!!」
如月が会話をブチ切ろうとします。
「よかったよ!集合!!」
が、そうは問屋が卸しません。

「高いお酒の一升瓶を持ってきたんや!最後まで聞けい!」
如月は嫌そうですが、御門は割と好きなので問題なしです。

「で、その話のポイントは?」
「僕の恋人が超カッコイイ!」
「よかったな!」
「よかったよ!」
まあ、何というか二人とも引きません。

「壬生は黙って立ってたら映えますからね」
こういった話が好きな御門はお酒も飲めて楽しそうです。
「黙って本とか読んでたらな」
自ら壬生のコートを選んでる如月からして、彼がかっこいい事に異論はないようです。
が、
「ロングコートのポケットにリリアン入ってるとは思わんよな」
龍麻の言葉に二人がお酒を吹きました。
「「入ってるのか!?」」
「入ってんで」
初耳です。

「あの見た目でリリアン始めると軽いホラーなので止めたほうがよいのでは?」
「逆にあの見た目なので単なるリリアンも陰陽術の一種かと思われてるらしい」
「スタイルで得してるな」
見た目は大事だよなーと三人は頷きました。

「あと、なんか時々スマホ見てニコニコしてたんやけど、あれにそんな楽しい何かが入ってんの?」
((お前の隠し撮り写真を見てるんだよ))と思いましたが、口にしないのは武士の情けです。

「スマホは楽しいですから」
「ああ、スマホは楽しいな」
「さよかー」
龍麻は電子機器に弱いのでそれでごまかされました。

「とりま、僕の壬生はカッコイイという事がわかったので良き収穫でした」
「よかったな」
「よかったですね」
そろそろお酒も無くなるのでのろけ話もここまでです。

三人が酒のグラスやお皿を片付けていると、
「ただいま戻りました」
と、話題の壬生が帰ってきました。

「おかエリー」
「おかえり」
「おかえりなさい」
出迎えた三人の視線は壬生が両手に持つワインに釘づけです。
(((まさか)))

「聞いてほしい話が……」
口を開こうとする壬生を如月が手で制します。
「壬生……確認だが、その話は「の」で始まって「け」で終わる話か?」
如月の言葉に壬生が恥ずかしそうに頷きます。
不覚にも(あ、可愛い)と思いました。

「今朝、まだ布団で寝てる龍麻の横顔が可愛くて……」
「待て!玄関で語り始めるな!!」
せめて家の中に入れ、と言う如月と、
「と言うか、本人の前で語るな!」
それは自分の居ないところで語ってくれ、と思う龍麻と、
「で、ワインは白ですか?赤ですか?」
ワインの種類によってつまみが変わるな、と思ってる御門です。

居間。
ワイン数本の口が開いて畳に転がっています。
「それで、まだ寝ぼけてむにゃむにゃ言ってる龍麻の口元が可愛くて」
「やーめーろー、当人に対して言うなー」
お互い赤ワインを持った龍麻と壬生が喋っています。
向こうでは、
「龍麻が作ったこのつまみ美味いな」
「柿と生ハムってあいますね」
と如月と御門が白ワイン片手につまみを食べておりました。

「お前らもワイン飲んだんだから壬生ののろけ聞けよ!!」
「のろけ話の許容量は一日一人までだ」
すでに出来上がってる如月はもう聞く気がないようです。
「私は聞いてもいいですよ。壬生、来なさい」
とまだ飲めそうな御門は乗り気です。
「御門のとこいけー!僕ののろけ話を僕に聞かせるな!」
龍麻に押された壬生が御門の前に行きます。
「御門さん、龍麻が可愛くて可愛くて」
「そこの所を詳しく」
「布団を引っ張る時の握りしめた指の角度も可愛いんです!」
「なるほどなるほど」
御門が新しいワインのコルクを抜きながら楽しそうでした。

「御門、マジで聞くの楽しんでるやん」
「オタクは、他人の、萌え話も、楽しいらしいぞ……」
龍麻に寄りかかってる如月が眠そうな口調で言います。
そういうもんかーと龍麻は思いました。

なお、この「のろけ話」飲み会は深夜まで続きます。

最後は御門の初音ミク語りと、如月の招き猫についての講義で終わりました。