「呪いのビデオ」

 デンジャラス葵こと美里葵の隠し撮りビデオ(鏡の部屋より)『緋勇龍麻密着1時間25分47秒(壬生紅葉編)』は仲間の女子(と一部男子)の手から手へバケツリレーのごとく渡り歩いた。
 そして仲間外の者の手にも渡ったのである。
 
 「母さん、具合はどう?」
 「ええ、最近とっても良いわ」
 ここは壬生の母の病室。
 「母さん、りんごでもむこうか?」
 「ありがとう紅葉」
 なごやかな会話が続くかと思われたが・・
 「ところで紅葉、緋勇君とはいつ結婚するの?」
 スパッ
 りんごが3分の1に切断される。
 「は・・・?何の事?母さん・・・」
 「もう18だしできるわよねぇ。でも母さんこの体だし、あちらの方に迷惑かけるのもなんだし・・やっぱりもう少し待ってもらって・・」
 「結婚はまだする気は無いよってそうじゃなくて何の話?」
 「何の話って、告白してする事したら後は結婚でしょ?」
 きょとんとする壬生母。冗談ではないらしい。しかし、する事ってアンタ・・・
 「それとも紅葉!緋勇君の体目当てなの!ああやっぱり女手一つで育てたのがいけなかったのね!天国のアナタ許してぇぇぇぇぇぇぇ」
 とり乱す母。天滴の針が抜けそうだ。ヤバいって。
 「母さん。僕は龍麻のすべてが好きなんだ体だけが目当てじゃないよ!だから安心してねっ母さん・・」
 「紅葉やっぱり母さんの子ね。立派よ・・・・でもする事はしてるのよね」
 手を握り合って真剣に話す会話か?しかし、ここにつっこんでくれる者は居ない。
 「ところで母さん。何で龍麻の事を知ってるんだい?」
 ―って言うか僕と龍麻がヤってる事を知ってるんだい?と聞きたいけれど恐ろしくて聞けない壬生。
 「あら、それはこの前あなたの友人って女の子からビデオを借りたからよ」
 ・・・・ビデオ・・・・
 「白いセーラー服の似合うキレイな子だったわ」
 ・・・・白のセーラー・・・・
 ―美里葵―
 「それにしても紅葉ったら母さんの知らないウチに大人になってるんだから♪」
 ・・・なぜ、渡す・・・・
 「でも、紅葉のやり方を見てるとお父さんを思い出すわ〜、やっぱり親子なのね」
 やり方ってなに?そんなのが似てても嬉しくないよ母さん・・・
 「紅葉、顔が真っ青よ。どうしたの?」
 何とか気力のみで立っている壬生。顔がウルトラマリンだ。
 「大丈夫だよ、母さん。ところで、そのビデオどこで観たの?」
 ここは病室。テレビもビデオも無い。
 「看護婦さんの仮眠室で、皆さんで観たの。皆さん喜んでくれて♪立派な息子さんて誉めて下さって♪―って紅葉床に寝ると冷たいわよ?」
 がっくりと床に倒れふす壬生。あわれ・・
 「もう、しょうのない子ね。それでね話は戻るんだけど、母さんこの体だし婿養子でもいいから・・紅葉のしたいようにしなさい、ね」
 床に寝ている壬生に毛布を掛てやる母。
 「・・・ところで母さん」
 「紅葉、顔が青から白になってるわよ。本当に大丈夫?看護婦さん呼ぶ?」
 それだけは死んでも嫌だ。
 「・・・そのビデオは?」
 抹殺せねば。できればこの病院ごと抹殺したい・・・
 「ビデオ?ああ、ビデオならこの前お見舞いに来て下さった館長さんにお渡ししたけど?紅葉もらってないの?渡しときますって言ってらしたけど」
 ・・・・・館長の手に・・・・・
 もはや生きている事すら嫌になった壬生の耳に、昔見たアニメのセリフが流れて来た。
 Tパトラッシュ僕はもう疲れたよU
 ああそうだねネロ・・僕ももう疲れたよ・・・・
 「紅葉?大丈夫?」
 彼岸へと旅出ちそうな壬生。

 「hhhh弦麻ぁぁぁぁぁぁ」
 「じゃかましいわ!このヒゲソバ!弟子のホモビデオ観て泣いてんじゃねぇぇ!」
 所変って龍麻の部屋。
 なぜか鳴滝館長はここでビデオを観ていた。
 「なんであんな女とーーーー」
 「黙れぇぇ!こんのホモ親父!人の母親をけなすな!」
 「弦麻ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 「うるさいわ!死ね!」
 隣りで泣き叫ぶヒゲ親父と美里の抹殺を真剣に考える龍麻。

 
 
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