「新宿コロボックル〜陽の気だだ漏れ〜」
「さて、行こうか龍麻」
「おう」
小さい龍麻を胸ポケットに入れて向かった先は、
「おこんばんはー」
「お邪魔します」
如月宅でした。
いつものようにご飯をたかりにきた壬生と龍麻です。
すると、今日は先客として御門がおりました。
「珍しい」
「こんばんは、御門さん」
「・・・ええ」
PS3プレイ中なので、返事がおざなりです。
「やあ、いらっしゃい」
奥から刺身ののった大皿を片手に如月が出てきました。
そのまま手を伸ばすと、
「壬生、借りるよ」
「は?」
「ん?」
ポケットから龍麻を引っ張り出し、大皿の隅に乗せるとまた台所へ戻って行きました。
「何だ?僕は刺身のつまか?」
ちなみに皿の中身は平目の薄造りです。
「ヒラメー!!」
「私の手土産です」
「白身魚大好きー!」
大好きだそうです。
「そうそう、僕らも手土産持って来たぞなもし」
「お米です」
今日の手土産はお米10キロです。
「実用的ですね」
「実用的でせう」
ちなみに、過去に持って来た物に、味噌と醤油があります。
「龍麻、如月さんにお米渡してくるから」
「ほいじゃ僕はゲーム見てるから、御門の所に連れてって」
「はいはい」
大皿から龍麻をつまみ上げ、御門の肩に乗せました。
「御門さん、龍麻をよろしくお願いします」
「ええ・・・・・」
目はゲーム画面から動きません。
自分の肩で、髪の毛と戯れる龍麻をガン無視して御門はゲームに夢中です。
「構えよう」
「断る」
「冷たい」
「貴方、私がこのゲームをする為にどれだけ睡眠時間を削って仕事を終わらせたか、教えてあげましょうか!」
よく見れば目の下に濃くクマが。
「寝ろ!」
「いやです!」
その時、ふすまがガラッと開いて如月がきっぱりと、
「御門。隣の部屋に布団をしくから夕飯まで横になるといい。と、言うか横になれ。倒れられでもしたら僕が迷惑だ」
僕が、を強調して言いました。
「・・わかりました。折れましょう」
「御門が折れた!」
「我が家のPS3が壊れている今。ここが出入り禁止にされると困りますから」
御門はこういう理由でこの家に来ています。
「それはタイマー?」
「タイマー」
「・・・タイマー?」
意味のわからない如月を放って二人はうんうんとうなずき合います。
「ソニータイマーっすよ」
「ソニータイマー?」
「都市伝説ですよ、如月さん。あと、布団ひきました」
「都市伝説なんかじゃない、ソニーならば作れるわな」
「そうです。ソニーの技術力をなめてはいけません」
二人の力説を軽く無視して、
「御門。龍麻を連れてさっさと寝てくるといい」
また龍麻を大皿の端に乗せると、それごと御門に渡しました。
「だから、僕は刺身のつまか何かか」
抗議する龍麻に如月が言いました。
「龍麻。気付いてないのか?」
「何が?」
「今の君は」
「今の僕は?」
「ガソリンの気化並に陽の気を垂れ流してるんだよ」
「・・・・・・なんですと?」
如月の言葉に御門も、
「大きい時は人間の体で気の放出も押さえられてたんでしょうが、今は鱗むき出しですからね」
同意しました。
「それが証拠に、ほら」
龍麻の横に醤油さしを置きます。
「龍麻!醤油さしに身長負けてる!」
「なんと!前来た時は僕の方が勝ってたのに・・・・」
前は頭一個分醤油さしに勝ってましたが、今はほぼ同じ大きさです。
「陽の気だだ漏れですからね」
「それは縮むよ」
当たり前のように言われます。
「で、その漏れ出てる陽の気のおかげで、刺身もずっと新鮮なんだ」
「確かに!さっきから放置されてるにもかかわらず刺身がツヤツヤ!」
これが、龍麻が刺身皿に乗せられてる理由です。
「ラップいらず。本当に便利だよ」
「いいですね。この生き物」
「神様の鱗をラップ代わりにすんな!!」
罰当たりな二人です。
「あの、如月さん。御門さん」
ほっとかれていた壬生が恐る恐る二人に聞きます。
「このまま気が流れ出てると最終的にはどうなるんですか?」
「それはまあ・・・・」
「鱗に戻るでしょう」
あっさり御門が言いました。
「困ります!」
「困る!」
龍麻より早く壬生が答えました。
「今更龍麻に去られたら困ります。そんな事になったら明日から何を糧に生きていけばいいのか・・・・・今すぐ手首を切りますよ」
「待て!!!!」
どこまでもネガティブな男です。
「壬生、落ち着け。ここで手首なんて切られたら畳が汚れるだろう」
如月はいつでも人としてどうなのか、という発言をします。
「でも、如月さん・・・・」
「安心しなさい。減った分は他人の陽の気で補填すればいいのですよ」
割と単純な体です。
「ああ、だから御門と寝ろと」
「ええ、貴方は私の気で陽分を補い、私は貴方から漏れる陽の気でこのクマを消します」
「え?僕の陽の気にそんな効果まで?」
「神の気ですからね。見なさい!」
壬生の腕をぐいと引っ張ります。
「この男が深夜勤務にもかかわらず、肌がツヤツヤなのは貴方のおかげですよ」
「そうなの!?」
「そうなんですか!?」
そうらしいです。
「徹夜続きでもこの卵肌。憎らしい」
「まったくだ」
「・・・・も、申し訳ありません」
壬生が両脇からチクチクといたぶられてます。
「とにかく、赤ん坊のようなサラツヤ肌を取り戻すため寝てきます」
「・・・・おやすみなさい」
「あ、ついでに僕の携帯の充電もよろしく頼む」
「僕の気って充電も出来るのか!?」
以外と自分の事は知りません。
1時間後。
「おはようございます」
お肌ツヤツヤ、髪のキューティクルぴかぴかの御門が起きてきました。
「・・・・1時間で凄いですね」
「これが神の力ですよ」
なぜか御門が誇らしげです。
そして片手に持った大皿には、
「・・・・充電出来た。どうなってんだ僕の気は・・・」
何だかショックを受けてる龍麻が乗ってました。
醤油さしと計測。
「あ、龍麻。伸びてるよ」
「・・・・醤油さしで測るのはのはやめい」
とりあえず、前の身長には戻りました。
「さ、ご飯にしようか」
お夕飯です。
本日のメニュー。
平目の刺身(メイン)
カボチャと鶏肉の煮物(壬生リクエスト)
鳥のからあげ(龍麻リクエスト)
鳥皮の柚コショウ焼き(御門リクエスト)
ほうれん草のおひたし(昨日の残り)
ちくわ(酒のつまみ)
酒(日本酒と梅酒とウィスキー)
「鳥率高い夕飯じゃったのー・・・・」
「君達のリクエストだろ」
「ところで、ちくわにつめるキュウリはどこです?」
「御門はキュウリ派?」
「ええ、貴方は?」
「チーズとケチャップ」
「えらくイタリアンですね」
「蓬莱寺は、そのままが好きだったな」
「村雨さんはマヨネーズ詰めてましたよ」
「ああ、村雨な」
「「男だったら穴には詰めるだろ」とか言ってましたね」
「アホだ」
「ええ、まったく」
「如月さんは?」
「僕はちくわは好きじゃない」
「ところで、食べども食べどもチーズに届かないんだが・・・・」
「龍麻。そのサイズだと無理・・・」
お酒飲んでちくわ話。
「如月の日本酒が美味そう」
おちょこでチビチビと梅酒を飲んでた龍麻が如月の酒をロックオンしました。
「飲むかい?」
「飲むともさ」
コップの端に捕まろうとして、
ドップン!
落ちました。
「ガバババババ・・・・・・・・」
「龍麻!!!!!!」
「おや、神酒とは豪勢ですね」
「ふむ、ヒレ酒みたいなものか」
「助けてあげて下さい!!!」
「ゲホゲホ・・・気管に入った・・・・ウゲー」
自力で出てきました。
「うん、喉ごしが良くなった」
「では、私も」
ジャッポン
「混ぜるなーーーーー」
御門のウイスキーにIN。
「確かに美味しくなりますね」
「・・・・・だから僕を便利アイテム扱いするなー」
その様子をじっと見つめる男一人。
(じーーーー)
「壬生。お前もか!!!!」
「いや、僕は・・・神様とか喉ごしとかそんなのでなく・・・龍麻の出汁入りのお酒というのが・・・気になって・・・・」
(((ああ、この男はこういう男だった)))
三人のコールドアイに見つめられ、壬生は黙ってお酒を飲み干しました。
まあ、如月宅に行った時はこんな感じで夜がふけていきます。
この時、京一は龍麻と劉と中国。村雨はラスベガス
如月宅には常に誰かしら居るのが理想
ちなみに、如月と御門は仲良くもないですが、仲悪くもないです
お互い「こいつよりはマシ」と思い、お互いそこそこ尊敬しあってます
利害が一致すれば、すごい仲良しさんになると思います
ちなみに、龍麻をお釜に入れて炊くと米もふっくらします
お風呂につけとくと温泉になります
一家に一匹いると便利です
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