「飼い犬が手を噛むので」

 チャッチャッチャッチャ・・・
 学校の廊下を爪でこする音がする。
 「わっ」
 「キャッ」
 廊下に居た生徒達が道を開けていく。
 「ん?」
 廊下の端に居た犬神が生徒の声に振り向くと・・・
 「なっ」
 廊下を犬神の方に向かって来ているのは仔牛程の黒くデカイ犬。
 (どれくらいデカイかと言うと名犬ジョリーくらい)
 しかも纏っている気は只の犬のソレではない。
 「(何だこいつは)」
 まじまじと見ていた所為で犬と目が合う。
 Tお前は何者だ?ここに何か用か?U
 T・・・言ウ必要ハ無イU
 T・・なんだとU
 いきなり廊下で犬神と犬が睨み合いを始めたため生徒達は遠まきに見ている。
 はっきり言って怪しい。(とくに犬神)
 T貴様ナドニ構ッテイルヒマハ無イ。サッサトノケU
 Tここは俺のテリトリーだ勝手な真似はさせんU
 T・・・ヤル気カ?人狼、死ヌゾ?U
 TそれはこっちのセリフだU
 一触即発の雰囲気。端から見れば犬神先生犬相手に何をしているの?といった感じ。
 その時・・・
 ガラッ
 「あーーー、トルーマン。どーしたんだよーー。」
 いきなり犬の首筋にしがみついて来たのは毎度おなじみ緋勇龍麻。
 「ハァ〜。学校で見るトルーマンも可愛い・・・・。」
 例によってアッチの世界に行ってしまって居る。
 「緋勇。それはお前の犬か?」
 「はい♪このハリー・フランシス・トルーマン(龍麻命名)は僕の一番の親友です」
 「ひーちゃん、一番の親友は俺だろ!」
 そう言って出て来たのは龍麻の親友を自負する蓬莱寺京一。
 「それともこんな犬に負けるのか!」
 ピクッ
 「こんな・・・犬・・?」
 前髪で見えないが龍麻の片方の眉がピクリと上った。
 「僕のトルーマンにむかってこんな犬とはなんじゃーーー!!!!!!」
 「八雲!!!!!!!」
 ドッガァァァァァァン・・・・・
 廊下の壁が壊れて京一が飛んでいった。
 「フッ、ヒエラルキーじゃあトルーマンの方が上じゃ。決ってるだろ、なぁ?トルーマン♪」
 「クゥゥゥゥン」
 T何がクゥゥゥンだこの猫被りが!U
 Tウルサイ!貴様ハ黙ッテイロ!U
 「・・なんかトルーマンと犬神先生仲悪い。同じ犬科なのに・・」
 よよよとトルーマンの首で泣き真似をする。
 「・・・こんなのと一緒にするな」
 Tソノトウリ、コンナデキソコナイ我同胞デハナイU
 お互い火花を散らす。よほどウマが合わないらしい。
 「先生、牙むき出しで怒ると正体バレますよ?トルーマンもここは学校・・・な?」
 「・・・・・・・」
 T・・・・・・・U
 「・・・ふん」
 犬神先生退場。遠まきに見ていた生徒達が道を開ける。
 「で、トルーマンなにしに来たん?」
 「クゥゥン」
 口にくわえた包みを持ち上げる。
 「あー弁当忘れてたか。ありがとうなートルーマン。」
 「クンクン」
 謙遜しているのか首を横に振る。
 「ところでマンションの戸閉りは?」
 「ワン」
 包みの中から鍵を出す。
 「ん〜♪偉い〜♪んじゃ、一緒にゴハン食べて帰るか」
 「ワン♪」
 「緋勇。まだ午後の授業が残っているぞ」
 階段を降りながら犬神が注意した。
 「ヴーグルルルル・・」
 Tダマレ!人狼!U
 「はーい。しゃーないゴハンだけ一緒に食べような♪」
 「クゥーン・・」
 そうして一緒に屋上へと消えていく。

 「何がクゥーンだ。あの猫被りの化け物め」
 なんだかとってもウマが合わない犬神。

 「・・・・ひーちゃん・・俺は・・犬以下なのか・・・?【涙】」
 すっかり忘れられていた京一。


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