「犬神先生エンディング」
月・・・月の石・・・
・・・今夜は満月か・・・あの上からならアノ人も見つけられますかな・・?
「ん?」
見上げた視界に黒い点・・・だんだん大きくなって・・・・
ゴン!
いったーーーー!!!!痛い!ええ!それはもう!
ゴロゴロゴロゴロ・・・・
痛みにのたうつ龍麻の目の前をゴロゴロと転がる物。
それは無骨な黒い石。
大人の拳大のソレを掴んで回りを見周すが辺りに人影は無い。
フト思い立って上を見ると隣りのビルの屋上でオレンジ色の光が動いていた。
・・・煙草の火?
・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・!
見つけたーーーーーー!!!!!!!
一蹴りでフェンスを飛び越え、扉を蹴破(ろうとしたら開いていた)、階段を4段飛ばしで登り、屋上のドアを勢いよく開けたその先に・・・・
いた
探してたのはこの人だ・・・・
「遅いぞ緋勇」
だだっぴろい屋上で煙草を吸って佇む不機嫌そうな男。
犬神杜人。
「・・・どうした?馬鹿みたいな顔をして」
「・・・ハァー・・逢いたかったです・・・」
その龍麻の言葉にさらに顔が不機嫌になる。
「誘ったのはお前だろう?それにしてもこんなに遅くまで何をしていたんだ?」
そう言われてよく見れば犬神の足元には小山になる程の煙草の吸い殻が落ちている。
「いやー・・・記憶を求めてさまよってました」
一応は真実なのだが・・・なんと現実離れした言葉か・・・
「・・・・・・・阿呆」
案の上、犬神のあきれかえった言葉が煙と共にはき出された。
「・・・と言う訳なんです・・・」
とりあえず事情を説明する。
「・・・・・・・・・」
「なんなら美里に電話しますか?」
さすがの美里も龍麻の相手が犬神とは思ってなかったらしく連絡はいってなかった。
「いい、信じてやる」
「どうも、ありがとうございます!・・・しかし、ココ寒いですね・・」
見渡す限り何も無い、ただ広いというだけの屋上。
何を考えて俺はこんな所にコノ人を呼び出したんだ?
ひょこひょこと屋上をブラつくが何も無い。
周りはまっ暗なビルの群・・・
「お前はT穴場Uだと言ってたぞ」
穴場?何のだ?
さらにウロウロすると・・・・
ん?
!!!!!!!!!!!!
「おー!ちょっと!こっちこっち!えーっと名前なんだっけ?まーいいからコッチ!」
屋上のフェンスから身を乗り出して手を振る龍麻に犬神が慌ててやって来る。
「どうした?」
「コッチ見ろー!」
そう言って犬神の頭を掴んで自分の見ている方行を向けさせる。
そこに見えたのは・・・
真っ黒なビルの間から幻のように浮び上がるクリスマスツリー
「凄い!やるなビフォー僕」
ちなみに今はアフター僕。
「お前はこういうのを見つけるのがうまかったからな・・」
ジーー
「何だ?」
「そんな感じで僕の事聞かして下さい・・・ささ、どうぞ」
にこーっと邪気の無い顔で促されて、渋々といった様子で話し始める。
「・・お前は、転校初日から何かと問題を起していたな、喧嘩は日常茶飯事。暇さえあれば旧校舎に入り浸り。授業中は寝てるかボーっとしているか、必ず3時間目の休み時間は食堂でパンを貪る。昼休みは蓬莱寺等とつるんでいるか一人で俺の所でウダウダしている。テスト前になればテストの山当てで蓬莱寺と賭け事。最近では遠野とグルになって生徒会費を横流ししようとしてたな・・・あと」
「ストーップ!」
これ以上は籔蛇になると思い犬神の口を塞ぐ。
「解りましたからストップ・・・ハァー・・」
犬神の口を手で塞いだまま龍麻がツイっと顔を上げた。
「・・・・・」
その顔には見覚えがある・・・・
この言い方はおかしいが・・・確かにさっきまでの緋勇とは違う・・・
・・・という事は・・・
「モガッ!(緋勇)」
「あっ、気づきました?今さっき戻って来たんです記憶。とりあえずリターン僕という事で・・・」
ゴン!
龍麻の頭に犬神の鉄拳制裁。
「・・・いつから戻ってたんだ」
あからさまに不機嫌そうに犬神が言う。
「だから、ついさっき。先生が僕の事色々言ってくれてんのを聞いてたら戻って来たんです・・・・ウソじゃねーですよ・・」
犬神が怒っているので語尾が弱くなっていく。
「でも、先生結構僕の事見ててくれたんですねー」
ニヤーっと笑われて犬神の鉄拳制裁がもう一度くるかと思われたが、
「僕だけが見てるんじゃなくて良かった。僕も先生の事ならかなり言えますよ」
この言葉で止めた。
「で、先生クリスマスプレゼントフォーミー」
犬神の機嫌も直ったようなのでさっそく物欲に走る龍麻。
「・・・・もう持っているだろう」
そういって視線は最初に頭に直撃したアノ石に向かられる。
「・・・・えーコレ?って只の石じゃないですか・・・」
ゴツゴツした黒い石。
プレゼントという言葉からかなり遠い代物だ。
「・・・月の石だ。欲しがってたろう?」
「・・・・・・マジ?」
どうやら龍麻の想像とは違ったらしい。
「月の石ってもっとこう乳白色で、ツルンとしたヤツでしょう?」
「・・・・・それは宝石の方だろう・・・ムーンストーンってヤツだ」
「ガーン」
龍麻が目の前で固まってしまったのでしかたなく煙草を吸っている犬神ではあるが、考えてみればかわいそうなのはコッチだ。
せっかく用意したプレゼントが本人の欲しかった物と違うのだ。
これはかなりのショックである。
「・・・・・・・でも、いいや。コッチの方が先生っぽいし」
しばらくして立ち直った龍麻が犬神の方を見てニッと笑った。
「・・・・・」
「それじゃあ、病院に帰ります。送っていってくれますか?」
「・・・・・」
「・・先生?」
「貸してみろ」
「はい?」
「貨せ」
そう言って龍麻の手から石を取る。
ボキ・・・ボキボキボキ・・・
まるで発泡スチロールを砕くように石を砕いていく。
「なっ・・・先生・・・」
いきなりの事に犬神を止めようとするが、そんな事はおまかまいなく石はどんどん崩れていく。
やがて・・・・
「ビンゴ」
「・・・?何ですかコレ?」
黒い石の中から出てきたのは白い原石。
「欲しかったんだろう?」
原石を龍麻の手に握らせる。
「ムーンストーンだ。正真正銘の」
「おお・・・」
あまりの事に声が出ない。
「希に月の石にも含まれると聞いてたが・・・・ラッキーだったな」
ニヤリと龍麻に笑いかける。
「・・・・て事は解らんと砕いたんですか!」
「だから言っているだろう。ラッキーだと」
「(この人は・・・)」
「そら、帰るぞ。タカ子が心配する」
犬神はそう言って、あきれかえっている龍麻の手を取って屋上を後にした。
「・・・・先生」
「なんだ?」
「さっきの事は許してあげますよ・・・・でもね・・」
「コレはなんですか!コレは!」
そう言って犬神の目の前に突き出されたのは小さいシール。
よーく見ると文字が書いてある。
『生物教材・鉱石13』
「・・・・・」
「・・・・・」
「あんたは恋人に学校備品をやるのか!!!!!!!!」
龍麻怒りモード。
「・・・・・貰えただけありがたいと思え」
「だぁ〜〜〜〜〜!解ってたけど愛がないよ〜〜〜〜〜〜」
「五月蠅い・・・・ホレ帰るぞ」
「愛〜〜〜〜愛〜〜〜〜」
「フン」
口調はそっけなくとも繋いだ手はしっかり握られていた。
愛なのか愛じゃないのか解らないこの二人の上を雪はチラチラ降りました。
「・・・・雪まで降ってきた・・・あー鍋食いてー」
「もっと病人らしい事を言え」
「先生、鍋しましょうね。二人で」
「・・・・お前が治ったら・・・な」
【終り】
コッチは村雨のんより時間かけて書いてた気が・・・・・
龍麻が「俺」と「僕」くらいで性格かえないで書けたから楽といえば、めっちゃ楽だった
最初からオチは「教材」で行こうと思って書いてた
ま、先生だしね
村雨のにも書いてたけど、手がのってくればくる程、龍麻が「僕」と言いたがって困った
ウチの子は死ぬまで「僕」だな
ちなみに気に入ってんのはコッチです(笑)