「犬神先生と僕7」
「・・・緋勇」
「はい?」
「お前、なんで俺なんかに懷いているんだ?」
ここは生物準備室。
毎日のようにやってくる緋勇にコーヒーを入れさしながらフト聞いてみた。
「懷く・・・あーそういえば懷いてますねー」
他人事のように言うな。
なぜか転校初日からまとわりついて来たろうが。
「なぜに僕が犬神先生に懷いているのか・・・聞きたいですか?」
聞きたいといえば聞きたいが・・・
嫌な予感もする・・・
「いや、やめておこう」
「そんなに聞きたいんでしたらお教えします。はい、コーヒー」
お前こそ人の話を聞け・・・
「ぢつは僕・・・」
とりあえずコーヒーを一口・・・
「先生の事、実父だと思ってたんです」
ブハッ!
思いっきりコーヒーを吹いてしまった・・・
「先生、はいティッシュ」
「・・・すまん」
飛び散ったコーヒーを拭き取る。
「・・・で、何だと・・」
「いえね、僕ちっこい頃、犬神先生がほんまの父親だと思ってたんですよ」
「・・・・・・」
「原因はコレです」
そう言ってカバンから写真を取り出す。
「覚えてます?」
「ああ」
加代が中国へ旅立つ前に二人で取った物だ。
懷かしい・・・
「先生。思い出に浸らんで下さい。で、話は戻りますが・・僕自分が養子って事、ちっさい頃から薄々感じてたんですよ。顔が・・特に目が家族の誰とも似てないんで、そんでその頃にこの写真見つけて『ああ、これが母親だな』って解って『じゃあこの横のが父親か?』って・・・・だからこの学校に来て先生見た時は嬉しくって。なんか珍獣を見たようで・・それで今にいたりますマル」
「そうか」
「そうです。先生、光栄ですか?」
「・・・・お前が息子だったら苦労したろうな」
「ヒドイ・・マジパパだと思っていたのに・・・・でも、違うってのはコレ見てイッパツで解ったんですけどね」
「コレ?」
「コレ」
渡されたのは別の写真。
・・・・なるほど・・・
「確かに一目で解るな」
「解るでしょう?」
「でも、父親じゃなくても先生の事は好きですよ」
光栄でしょう?とまた言われた。
「それでは、今日はこのへんで帰ります。京一等も部活終る頃だし・・・あっ、先生その写真は貸しときますから・・」
「から?」
「ドップリと失恋の痛手に苦しんで下さい」
「・・・?・・・このッ!」
緋勇は殴ろうとした俺の手を交わしてさっさと部屋を出て行った。
逃げ足の速さは蓬莱寺並だな・・・「まったく・・」
俺は机に座り直すと、緋勇の置いていった写真を眺めた。
1枚は俺と加代の物。
もう、1枚は弦麻と加代。
こうして並べてみるとハッキリと違いが解る。
違うのは加代の表情。
どちらを愛しているかなんて一目瞭然だ。
「・・・ここまではっきりしてると腹も立たんな」
犬神はそう言って写真を机にしまうと帰る為に部屋を出た。
犬神先生・・・他の所じゃ龍麻を育ててるんですよ・・っと自分でつっこんでみたりする
とりあえず加代ちゃんに思いっきり振られている犬神先生。相手にされてなかったな・・・
ウチの龍麻が目を隠してるのは家族と似てないからです。家族は二重、龍麻は一重。というワケで加代も一重。