「いぬせんせとぼく2」

 「せんせーいぬせんせー」
 「・・・・何だ・・」
 夜中に揺り起こされた。
 時計を見ると午前2時。
 「コワイゆめみたー」
 ・・・またか。
 ここ最近龍麻はこの時間になると怖い夢を見たと言って俺を起こす。
 おそらく両親のいない寂しさがそんな夢を見させているのだろうが・・・
 「ホラこっちに来い」
 「うーコワイよー」
 泣いている龍麻をとりあえず抱っこしてやるが毎晩の事だ。
 さて、どーするか・・・

 「あさー!あさだーせんせーおきろーーーー」
 「・・・・・」
 眠い・・・
 「いぬせんせー、あさですよー!おーきろー」
 コイツ朝になると元気だな。
 「けさはパンでいす」
 「わかったわかった」
 食パン片手に笑う龍麻を見てると昨日の事などウソのようだ。
 しかし、今晩もどうせ見るだろう。
 「龍麻、お父さんとお母さんが居なくて寂しいか?」
 「ん?・・んー・・んーーーべつにーせんせいるし・・・」
 寂しいんだな。
 「まーこれもジンセイやし。だいじょぶだいじょぶ」
 4歳児らしい発言をしろ。
 ピーンポーン
 ん?客か?
 「はーい」
 龍麻が玄関で何かを受けとっている。
 宅急便か。
 「わーい♪おとさんとおかさんからオミヤゲー♪」
 「弦麻と加代から?」
 「あけて、あけて」
 カッターが見つからなかったので包丁で封を開ける。
 中から出てきたのは・・・
 「わーい♪にんぎょうだー」
 木でできた人形がひとつ。
 パッと見はデッサン用の人形に見えるが・・・
 目と鼻と口が×模様で描いてあり、左の胸には・マーク、全身には赤黒い塗料で呪文のような物が書いてある。指まで細かく作ってある所が気色悪い。
 しかも背中にはスライド式の物入れまで付いている。・・・何を入れるんだ?
 「わーい♪わーい♪にんぎょーにんぎょー♪」
 ・・・嬉しいか?触っていると手が腐ってきそうだぞ?
 「龍麻、中味はコレだけか?」
 「うん」
 相変らず解らん女だ。
 「せんせ、このにんぎょ、よーちえんもってってもいい?」
 「ああ、勝手にしろ」
 まあ、喜んでいる事だし良しとするか。

 夕方
 幼稚園から帰って来た龍麻が人形とはしゃいでいる。
 「どーかしたのか?」
 「んー?せんせ、このにんぎょうスゴイんだよ」
 「凄い?」
 見た目は確かに凄いが・・・
 「あんね、きょうユータがまたいらんコトゆーたからムカツイてなぐろうとおもったら。コレが『ボクヲ、ツカイナサイ』っていった」
 「・・・・何だと?」
 人形がしゃべった?
 「だからコレが『ボクノセナカニTツメUカTカミノケUヲイレテツカイナサイ』っていったん」
 まさか・・・
 「で、使ったのか?」
 「うん、ユータのかみのけいれて、いしでなぐったんそしたら「あたまイタイ」ってなきだした。せんせ、このにんぎょスゴイね」
 ・・・・・・・
 「・・・龍麻・・」
 「ん?」
 「二度とその人形を使うな」
 少しキツイ目に言う。
 「なして?」
 「なんでもだ。持っているのはかまわんが絶対に今日みたいな使い方はするな。解ったか?」
 「・・ん、わかた。もーつかえへん」
 「よし」
 呪いのアイテムなんかで味をしめたらロクな大人にならんからな。
 それなら自分の手でケンカをしているほうがマシだ。
 「いいか、使うなよ」
 「うん、やくそくする」
 いい子だ。
 「こんどはじぶんでなかす」
 まあ、程々にな。

 話しもすんだので夕飯にする。
 とりあえず簡単にチャーハンとみそ汁だ。
 「いぬせんせ。このコにナマエつけたん、きいて」
 呪い人形に名前を付けたのか。
 「何て付けたんだ?」
 「シャカ」
 ・・・・・・オイ
 「せなかにかいたん」
 人形の背中にでっかくマジックで「釈迦」と書いてある。
 これは人形も釈迦も嫌だろう・・・
 「そいやーおかさんなんでコレおくってきたんやろ?」
 「さーな」
 変った女だからな。
 「うれし−なー、おかさんからのにんぎょー♪」
 ピョンコピョンコ飛びはねる龍麻は兎のようだ。
 「とりあえず飯は座って食え」
 「はーい」

 その晩、龍麻は起してこなかった。
 呪い人形でも慰めにはなったらしい。

 後日、1通の手紙が届いた。

 Tハロ〜♪杜人ちゃんにマイハニ〜龍麻元気?
  私は超元気よ♪この前赤い敵に腕切られたけどねー(駄目じゃん)
  あ、今は生えてきたから大丈夫♪
  それはそれとして、人形届いた?可愛いでしょー。
  あれは有名な呪い人形なの。ちゃんと神夷で試したから効果はバッチリよ♪
  まー1回は使ってみてね♪
  それじゃあ、愛をこ・め・て・             緋勇加代より・
  
  本当は鬼の首のホルマリン浸けだったんだけどナルナル(鳴滝)が
  泣いて止めるからこんな感じになりました。どない?
  それはそうと、たっくん元気にやってるかー?お父さんはめっさ元気だぞー♪
  早く赤い奴倒してたっくんに会いたいよー・・・・
  それじゃあ、風邪とか引かないようにね。         緋勇弦麻より☆

  追信d杜人くん、龍麻に手を出したらぶち殺すから。U

 「・・・・・・・」
 「せんせ、はやくてがみよんでー」
 龍麻だけはマトモな人間に育てよう。
 俺はそう心に誓った。
 「せんせーてがみーよんでー」


 と、言うわけで久しぶりの「いぬぼく」です。
 弦麻パパ初登場。っと言っても手紙ですが。
 弦麻と加代は両者共ボケです。もしくは年中新婚カップル。バカップルとも言う。
 作中の「赤い敵」は柳生さんの事です。まだ、名前を覚えてもらってません(笑)
 龍麻のセリフが全部ひらがななのは読みにくいですが我慢して下さい。
 こっちも書きにくいです・・・くそう4歳児・・・
 それでは、また感想などいただけると嬉しいです♪

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