「不香の花・国色」
―不香の花―
「おー村雨。ここだぞー」
「先生。急な呼び出しなんて珍らしいな」
村雨が呼び出されたのは村雨の家から程近い公園。
昼間であれば人で溢れているこの場所も夜ともなれば人気は無し。
しかも・・
「寒いぜ先生」
「確かに・・」
男二人で公園のベンチという図も寒いが、温度的にも寒かった。
「で何の用だ?先生」
さみーと手を擦すり合わせつつ村雨。
龍麻は横で空を見上げている。
「んー。あんな、お前に似合う花を見つけたんだ」
「花・・・・?」
それと夜中の呼び出すのとどんな関係が・・・
「―でわざわざこうして待ってる訳だが・・」
「?・・・先生、話が見えねーんだが」
「くっそー、失敗か?お前強運だし今日あたりイケると思ったんだが」
話が見えない。
「先生どこにその花はあるんだ?」
寒くて声がイラつく。
「・・・不香の花・・」
「不香の花?」
初めて聞く名前。
「あっ!よーしOK!」
龍麻が空を見上げたまま歓声を上げる。
「ん?」
ついで見上げた村雨の目に写ったのは・・
「雪・・・そうか雪か」
「ピンポン♪不香の花とは雪だ」
今年最初の初雪。
「・・やっぱ、お前雪似合うわ」
「そいつはどうも」
「いえいえ、どーいたしまして♪あっコレはオマケ」
ひと枝の梅。
「梅か。・・もしくは此の花ってな」
「おー風流♪風流♪やっぱ雪に耐えて麗しいのは梅だよな」
梅をうけとる。
「俺としてはもひとつ欲しいけどな」
ニヤリと村雨。
「雪に梅ときたら・・酒か?」
「当りだ先生。も少し温かい所に行こうぜ。いくら風流でもここじゃ寒いだろ?」
「確かに・・・」
先程から雪は激しくなっている。
「俺の所ならいい酒そろってるぜ」
「おおー♪」
「じゃあ、行くか」
「行こう♪行こう♪」
しんしんと降る不香の花を見ながら雪見酒。
不香の花=雪の異称
―国色―ピンポーン♪ピンポンピンポン・・
「はいはいはい・・・っと村雨か・・」
「トーンが下がってるぜ先生。よっと、邪魔するぜ」
日曜の朝、龍麻のマンション。
「先生。ちょっとは片づけろよ百年の恋も冷めちまうぜ?」
そして例によって散らかっている龍麻の部屋。
「五月蠅いぞ朝っぱらから・・・って何だ?ソレ」
ソレとは村雨の持って来たデカイ・・・
「・・牡丹か?」
「おっ、よく知ってるな先生」
「知っとるわいそんくらい・・・・しかしデカイな・・」
村雨が抱えるくらいデカイ。
「この前の礼にな。貰ってくれるだろう?先生」
「おー♪もらう♪もらう♪」
龍麻が受けとると花に隠れて見えなくなった。
「・・前が見えん」
「無理すんなって、運んでやるよ」
「んじゃ、空いてる所に・・」
「・・・・どこだよソレ」
とにかく散らかった部屋。とりあえすベランダの前を空けてそこに置く。
「わーい♪牡丹だーー♪」
デカイ花が嬉しいらしい。
「先生に似合うと思ってな」
「牡丹はテメーだろ。花札にもあるじゃん」
心外なという顔で龍麻。
「いやいや異称がな」
「?」
「牡丹の異称は国色」
「こくしょく?」
「国色には他にも意味が有ってな・・」
小振りの牡丹を一つ龍麻の髪に差してやる。
「絶世の美人って事なんだぜ」
「はぁ?って花を差すな!」
「似合うぜ先生」
ニヤリと笑われて外せなくなる。
「・・・・【怒】」
「まあまあ、先生の好きな酒も持ってきたんだ。どうだ?」
「さけ。」
物につられる男。牡丹の前で花見酒の二人。
「先生。美人の異称は国色の他にもあんだぜ」
牡丹を二つ三つと髪に差す。
「だーもー!牡丹を次々と摘むな無くなるだろうが!」
「代りに先生が居るだろ?」
「なんだそりゃ?」
「解語の花ってな」
ガクッ(何とかしろよこの親父)
「綺麗な華に囲まれると酒が旨いな。先生」
「へいへい・・」
美しい花を肴に花見酒。国色=牡丹の異称。または美人の異称。
解語の花=言葉を話す花という意味で美人の異称。もとは楊貴妃を指した。
カラスマやんへ捧げる。
初雪と牡丹て季節あってへんけど・・
なんか村雨、風流な人に・・・
やっぱ華道の家元?
「不香(ふきょう)の花」「国色(こくしょく)」「解語(かいご)の花」はTわかつきめぐみ・言の葉遊学Uから。
壬生が出ないとほのぼのするなぁ・・・・