「箱」

 「痛ッ」
 僕は注意して足に刺さったソレを抜いた。

 最初にソレを見つけたのは風呂場の排水口。
 絡まった髪の毛の中でソレは光っていた。
 「?」
 指で抓み上げるとソレは黄金色の鱗だった。
 (なんで家の風呂場に鱗が・・・?)
 家と言ってもココは龍麻の家。
 (でも、なんで鱗が?)

 その時はとくに気にも止めず、とりあえず空マッチ箱に入れておいた。

 そして、その日からほぼ1ヵ月に1回は鱗が見つかるようになった。

 (今回は台所か・・)
 足から抜いた鱗をいつものように箱におさめる。

 風呂場、ベットの隙間、洗面所、トイレ、カーペットの下、廊下の隅、そして台所。

 龍麻が動き回る場所で必ず鱗が見つかる。
 数は1〜2枚。
 多分、彼の事だから適当に掃除した残り。


 
 箱を開けて1枚取り出してみる。
 キラキラした鱗。
 (綺麗だな)
 と、思う。


 
 コレの事を龍麻に聞く事はしない。
 何でかは解らないけど聞かない。
 いや、本当は解ってる。
 コレの事を聞いたら龍麻が
 Tあー、見つかったのか。それ僕の鱗。綺麗だろ?U
 って笑うだろう事に。

 そう言われた時に彼を傷付けない自信ができるまで、
 コレの事は僕だけの秘密。


 
 彼が何なのかどうなってるのか何も解らないけど。
 解って何ができるのかも解らないけど。

 せめて、そう言われた時に、
 T綺麗な鱗だね。今度は生えてる所も見してねU
 って笑って言えるくらい強くなるまで、
 君が人でなくても愛していけるくらい強くなるまで、
 この鱗は僕の秘密。
 箱の中の秘密。

 
 

 「壬生。この箱なに?」
 「ああ、それはもう少し秘密なんだ」
 「フーン」
 「もう少し強くなったら開けるんだ」
 「強くってレベルの話か?」
 「うん。心のね」
 「ふーん(コイツだとレベル10くらいか?)」
 「頑張るから」
 「?頑張れな?」
 「うん」
 「(なんかよく解らんな)」
 「頑張るよ」


 わりと前向きな壬生君。

 壬生が小心者なわけじゃないですよ・・・だれだって恋人が鱗持ちだったらびびるでしょ?(私だったら嫌だ)
 
 犬神先生みたいに自分が人間じゃない人と人間な壬生君との考え方の違いです。

 でも、ウチの壬生は龍麻が黄龍でも多分大丈夫だよ。(親としての自信)

 あと、龍麻は例によってあんまし気にしてないです・・・(ちゃんと掃除しろって)

 とりあえず、黄龍くんは月1脱皮。犬神先生と同じく満月の時。

 久しぶりのSSなんですよね・・・・すいませんです

 だって兄の部屋寒いんだもん!(去年も言ってたな・・・)

 リハビリSSでした。(次は符咒の話書きたい)

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