一つの村があって。
 家族みたいに暮らしてた仲間達が居て。
 慕ってきてくれる村人が居て。
 そこはとてもとても良い所で。
 生まれて初めて持った自分の『帰る場所』でした。

 それが一瞬ですべて無くなりました。

 みんなみんな死にました。
 全部自分の所為でした。

 「はぐれ龍」

 

 「お客さん・・・ちょっとお客さん・・」
 男の声で目を覚ますとそこはどこかの茶店でした。
 「まったく死んでるのかと思ったよ・・・ってお客さん?」
 「ウ・・・・」
 「う?」
 「ウワァァァァァァァァン!!!!!!何!なんなのさ!ここは!!!!!
  っていうかもしかして『陽ディスク』?いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
  帰るーーー!!!!村に帰る!!!!!!!!ウワァァァァァァン!!!」
 いきなり見た目17〜8の男に泣かれて茶店の店主は引きました。
 というか店の客全部引きました。
 


 この人物が我等が主人公・緋勇龍斗くん。
 陰からやってきた子でございます。
 あちらでの幸せな生活を全部赤毛に潰されて泣く泣くコチラにやってきました。
 っていうか今泣いてます。

 「あの、大丈夫ですか?」
 泣きわめく龍斗にそう声を掛けたのが、コチラのヒロイン美里藍さんでした。
 全客の引く中、彼女だけが近寄ってまいりました。
 端から見ればまさに聖女に写る事でしょう・・・・もちろん計算ですが。
 「どこかお体の具合でも悪いのですか?」
 体というよりは心のような気もしますが、それはそれとして龍斗の前へと腰を下ろします。
 「あの、この薬良かったら飲んで?」
 といって懐から謎の薬を出しました。
 袋には小さくT驚異の洗脳効果Uと書いてありました。
 「・・・・・・・・・・」
 「すいませーん、お水下さい」
 美里さんは飲ませる気満々のようでした。
 「だぁぁぁぁ!!!!」
 龍斗は渾身の力で薬袋を窓からほりました。
 「あら?薬が消えてしまったわね」
 「・・・・そうだね」
 「・・・・・・・」
 「・・・・・・・」
 しばし無言。
 「・・・・・・お名前聞いてもいいかしら?」
 「・・・・駄目」
 「・・・・・・・」
 「・・・・・・・」
 無言。
 すいません話しが進まないので進めて下さい。
 「・・・・緋勇龍斗です」
 「・・・・美里藍です。美しいに里。それに人を愛するの藍です」
 「・・・・・字違いますよ・・・・」
 「・・・・・そうね」
 「・・・・・・・」
 「・・・・・・・」
 またも沈黙。
 どうも陰スタートだとぎこちないようです。
 そうこうしていると奥からお水を持って女の子がやって来ました。
 「おまたせしましただ〜」
 ここの店員の花音ちゃんです。
 「お客さん具合悪いだか?」
 気立ての良い娘さんみたいです。
 そして龍斗が何か答えるより早く。
 「ええ、そうみたいなの。だからこれから一緒に内藤新宿のお医者様に診て貰いましょうって話していたの。ねえ?緋勇さん」
 「・・・・・・・・う・・・ん?」
 何だか流されております。
 「それじゃあ、私荷物持ってきますから。待ってて下さいね」
 「ね」にアクセントを置いて美里さんは奥へと行ってしまいました。
 そんなに大きい店とは思えないのですが、どこまで行ったのでしょうか?
 「はぁー綺麗な人だ。きっといいとこの娘さんに違いねーだ」
 「・・・・そうかなー?」
 ひっかかりを感じる龍斗でした。


 
 「おい」
 「?」
 後ろから声を掛けられ振り向くと若い侍がおりました。
 龍斗は無視しました。
 「お花ちゃんはここ長いの?」
 「へぇ、ずっと働いてるだ」
 「ふーん」
 花音と普通に会話していたら後ろから力いっぱい殴られました。
 「・・・痛い」
 「・・・・思いっきり無視してんじゃねーよ!」
 どついたのは蓬莱寺京悟でした。
 「だって僕こっちの人じゃないもん・・・陽メンバーなんか死んじゃえ・・・」
 龍斗はボソボソと怖い事を呟きました。
 はっきり言って本音です。
 「・・・何かよくわかんねーけど団子食え。ホラ」
 「ん」
 餌付けされております。
 もぐもぐもぐ・・・・
 団子を食いながら、「あーそういえば奥継も団子好きだったなー」などと懐かしい思いでに浸っておりました。
 ので、気が付いたらもう美里が浪人に掴まっておりました。
 「あり?」
 という訳でいつのまにか、内藤新宿に向かう街道におりました。
 目の前でいかにもな浪人さん(3名)が美里さんを拉致しようとしております。
 どうしますか?

  助ける
  助けない
 モというか村に帰りたい

 龍斗が心の選択肢を選んでいたら木の上から蓬莱寺京悟くんが降ってきました。
 浪人から美里さんを助けました。
 龍斗の出番ありませんでした。
 「・・・ちぇ」
 助ける気はないものの少し拗ねてしまう龍斗でした。
 つい「この男殺しちゃおうかな☆」と思ってしまいました。
 と、その時思い切り聞き慣れた声がしました。
 「ははは、こいつはいい見物だ」
 槍を持った破戒僧こと九桐尚雲でした。
 そして龍斗がかつて村で仲良くしていた一人でした。
 「・・・・・ああーーー!!!尚雲!!!!!!」
 懐かしさの余り龍斗の目はウルウルでした。
 そして九桐も一瞬顔がほころびました。
 「浪人さん達、そこの師匠・・・・・ゲフンゲフン!無手の兄さんは知らんが、こっちの侍はデキルぞ。気を付けてかかれよ。さ、俺には構わず戦ってくれ」
 しかし何事も無かったかのように浪人を龍斗達にけしかけます。
 「ちょっと待て!!!!今不自然だったろ!」
 当たり前の事ですが京悟から物言いが入ります。
 「ははは、何を言ってるんだ不自然な所なんてなかっただろう?」
 「そうだぞ、僕はこんな坊さん初めて見たぞ」
 「な、師匠」
 「なー尚雲」
 「・・・めちゃめちゃ知り合いじゃねーか・・・」
 わかりやすく知り合いです。
 「まーまーいいからホラ戦闘戦闘。はい、バトル1−2スタート!」
 勝手に九桐が場を仕切りました。

 バトル1−2「甲州街道」
 勝利条件・すべての敵を倒せ
 敵・浪人LV1×3


 
 味方・緋勇龍斗  LV48
    蓬莱寺京悟 LV 4

 戦闘開始


 「・・・・あ、式神つけっぱなしやった」
 式神発動・軍茶利夜叉明王(超広範囲吹き飛ばし攻撃)
 ギャー!
 ギャー!
 ギャー!

 ハァァァァ!
 龍斗レベルアップ

 「・・・・・・」
 「・・・・・・」
 「・・・・蓬莱寺君ホントごめん」
 「・・・・・・今はほっといてくれねーか・・・」

 戦闘終了

 「ははは、楽しいぞ!」
 坊主一人で楽しそうです。
 「いい体捌きだった。流石は師匠だな」
 「いやいや、まさか今さらLV1と戦うとは思ってなかったって」
 「ははは、まーそれも一興だろ?」
 「まーねー」
 『あはははは』
 「・・・・仲良さそうだな。テメー等・・・」
 楽しげな二人に混じれない京悟です。
 「いや、今日初対面」
 「そうその通り。あ、そうだせっかくだから名前を聞いておこうか」

 モ名前を名乗る
  名乗らない

 「緋勇龍斗です。初めまして」
 「緋勇か・・・どこかで聞いたような」
 「テメー等さっきからずっとしゃべってるだろうが!!!!!!」
 京悟マジ切れです。
 無理もありませんが・・・・・

 皆様はもうお気づきでしょうが、この話の陰メンバーはすべて過去(未来?)の記憶を持っております。
 ようするにこの九桐尚雲はすでに好感度42%の状態なのです。
 その為、体面上は初対面だけど心は友人という訳のわからない状態なのでした。
 もっとも本人達は気にしてませんが。


 
 「まあまあ、そんな興奮しないで。ところで君の名前は?」
 「蓬莱寺京悟」
 ここで名乗ってしまう所が京悟の人の良い所です。
 「緋勇に蓬莱寺か。よし!戦おう!」
 「は?」
 「やったー」
 訳の解っていない京悟とノリノリの龍斗。
 そして口火を切ったのは龍斗でした。
 「はいはい、バトル1−3甲州街道スタート」
 「今度はお前がしきるんかい!」
 京悟の突っ込みで戦闘開始。

 バトル1−3「甲州街道」
 勝利条件・九桐を倒せ
 敵・九桐尚雲 LV2


 
 味方・緋勇龍斗  LV49
    蓬莱寺京悟 LV 4

 戦闘開始

 「んじゃ、今度は蓬莱寺君に経験値あげるな」
 「おう、すまねーな。いくぜ!」
 「九桐手ェ抜いてやってなー」
 「ははは、しょうがないな」
 「そういう会話すんじゃねー!!!」

 ふ、見事だ
 九桐敗北

 やったぜ!
 京悟レベルアップ

 戦闘終了

 「ははは、やるねー蓬莱寺君」
 「普通に立ってんじゃねー!」
 やられた筈の九桐でしたが元気に立っておりました。
 というか現実的には九桐はレベル32なので京悟が勝てる筈もありません。
 「じゃ、もう村に帰るよ。いい土産話もできたし」
 なんだか好青年な九桐です。
 「・・・・村」
 そして九桐の言った村に反応してしまった龍斗。
 「ふぇ・・・・ウワァァァァァァァン!村に帰りてぇぇぇぇぇぇ!!!!!
  頼むーーー!!!連れて帰ってよー!!!!尚雲ーーー!!!!!!!!」
 九桐の袖を掴んでまるで駄々っ子でした。
 そしてできる事なら九桐も龍斗を連れて帰りたいのです。
 でもそれは出来ない相談でした。
 やってはいけない事でした。
 「・・・・師匠。解ってるんだろ?帰れないって事くらい」
 「・・・・・・グスグス・・・・わがってる・・・今帰っても一緒だって事くだい・・・でも帰りてーんだもん・・・ヒックヒック」
 子供みたいに泣く龍斗に九桐も困り果てました。
 それで懐からT蟠桃Uを取り出すと龍斗に持たせました。
 「コレやるから。じゃあ。もう大丈夫だよな?師匠」
 「・・・・ん」
 こっくり頷いた龍斗の頭をくしゃくしゃ撫でて九桐は行ってしまいました。


 


 「・・・・めちゃめちゃいい雰囲気じゃねーか」
 「まったくね。途中から完全に忘れられている私はどうしたらいいのかしら?
  ねぇ?うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。
  でも泣いてる緋勇くんは可愛いわ。」
 そしてすっかり忘れられている二人。

 そんな二人をすっかり無視して龍斗は九桐の去って行った先を見ながらボソリと呟きました。

 「・・・やっぱり村に帰りたい・・・・駄目だけど・・な・・・グス」

  鬼哭村


 「ただいま。今日師匠と会ったぞ」
 「なにぃー!」
 「で、たーさんどうだった?」
 「泣いてた。帰りたいってさ」
 「・・・・・だろうねぇ」
 「でも可愛かったぞ。泣いてる師匠は」
 「だー!男を可愛いとか言うな気持ち悪いぜ!」
 「そうか?でも師匠は(頭の悪い)子犬みたいで可愛いと思うがな」
 「ああ確かに、たーさんは店の前で飼い主を待つ雑種犬の背中みたいな可愛さがあるわね」
 「・・・・・・わかんねー」
 「坊やには解らないのさ」
 「坊やって言うな!」
 「とにかく龍は元気にやっているんだな」
 「元気は元気そうでしたよ」
 「そうか・・・・それなら良かった」
 「・・・・若」 
 「・・・・・天戒様」
 「・・・・・・」

 「時が来れば龍もまたこの村に帰ってくるだろう。
  その時はせいぜい笑って迎えてやろうではないか。なあ、お前達」

 『・・・・・はい』

 群からはぐれたTはぐれ龍U
 仲間恋しと泣きながら、村が恋しと泣きながら、今は江戸を目指します。
 

 続きは次回の講釈で。


ゲーム出てから初めての外法小説「はぐれ龍」。この龍斗は「江戸歯車」の龍斗とは別物です

私が陰→陽をやって感じた事をそのまま書いてみました

ちなみに思い出しつつ書いてるので台詞が怪しいです

ゲームやって、この龍斗は絶対記憶持って来てるよなーっと思って書いてみた結果・・・なんか単なる泣き虫の軟弱野郎に・・・あれ?

でもやればやる程鬼哭村に帰りたくなる・・・私だけですかね?

九桐に愛情たっぷりのように見えますが別にそんな事はないです

単に最初に出てきたから・・・・嫌いではないです

っというか陰で嫌いな奴いません!

あー陰に戻してくれ・・・・

とりあえず続き物ですので・・ぼちぼち進めていきます

私自身今の段階で陽3話目なんでこれから龍斗が村に戻れるのか本当に知りません

それでも良ければお付き合い下さいませ

それでは

希望ではゲームにそってラストまで行きたいなーっと・・・・・

戻る