「お客さん・・・ちょっとお客さん・・」
男の声で目を覚ますとそこはどこかの茶店でした。
「まったく死んでるのかと思ったよ・・・ってお客さん?」
「ウ・・・・」
「う?」
「ウワァァァァァァァァン!!!!!!何!なんなのさ!ここは!!!!!
っていうかもしかして『陽ディスク』?いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
帰るーーー!!!!村に帰る!!!!!!!!ウワァァァァァァン!!!」
いきなり見た目17〜8の男に泣かれて茶店の店主は引きました。
というか店の客全部引きました。
この人物が我等が主人公・緋勇龍斗くん。
陰からやってきた子でございます。
あちらでの幸せな生活を全部赤毛に潰されて泣く泣くコチラにやってきました。
っていうか今泣いてます。
「あの、大丈夫ですか?」
泣きわめく龍斗にそう声を掛けたのが、コチラのヒロイン美里藍さんでした。
全客の引く中、彼女だけが近寄ってまいりました。
端から見ればまさに聖女に写る事でしょう・・・・もちろん計算ですが。
「どこかお体の具合でも悪いのですか?」
体というよりは心のような気もしますが、それはそれとして龍斗の前へと腰を下ろします。
「あの、この薬良かったら飲んで?」
といって懐から謎の薬を出しました。
袋には小さくT驚異の洗脳効果Uと書いてありました。
「・・・・・・・・・・」
「すいませーん、お水下さい」
美里さんは飲ませる気満々のようでした。
「だぁぁぁぁ!!!!」
龍斗は渾身の力で薬袋を窓からほりました。
「あら?薬が消えてしまったわね」
「・・・・そうだね」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
しばし無言。
「・・・・・・お名前聞いてもいいかしら?」
「・・・・駄目」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
無言。
すいません話しが進まないので進めて下さい。
「・・・・緋勇龍斗です」
「・・・・美里藍です。美しいに里。それに人を愛するの藍です」
「・・・・・字違いますよ・・・・」
「・・・・・そうね」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
またも沈黙。
どうも陰スタートだとぎこちないようです。
そうこうしていると奥からお水を持って女の子がやって来ました。
「おまたせしましただ〜」
ここの店員の花音ちゃんです。
「お客さん具合悪いだか?」
気立ての良い娘さんみたいです。
そして龍斗が何か答えるより早く。
「ええ、そうみたいなの。だからこれから一緒に内藤新宿のお医者様に診て貰いましょうって話していたの。ねえ?緋勇さん」
「・・・・・・・・う・・・ん?」
何だか流されております。
「それじゃあ、私荷物持ってきますから。待ってて下さいね」
「ね」にアクセントを置いて美里さんは奥へと行ってしまいました。
そんなに大きい店とは思えないのですが、どこまで行ったのでしょうか?
「はぁー綺麗な人だ。きっといいとこの娘さんに違いねーだ」
「・・・・そうかなー?」
ひっかかりを感じる龍斗でした。
「おい」
「?」
後ろから声を掛けられ振り向くと若い侍がおりました。
龍斗は無視しました。
「お花ちゃんはここ長いの?」
「へぇ、ずっと働いてるだ」
「ふーん」
花音と普通に会話していたら後ろから力いっぱい殴られました。
「・・・痛い」
「・・・・思いっきり無視してんじゃねーよ!」
どついたのは蓬莱寺京悟でした。
「だって僕こっちの人じゃないもん・・・陽メンバーなんか死んじゃえ・・・」
龍斗はボソボソと怖い事を呟きました。
はっきり言って本音です。
「・・・何かよくわかんねーけど団子食え。ホラ」
「ん」
餌付けされております。
もぐもぐもぐ・・・・
団子を食いながら、「あーそういえば奥継も団子好きだったなー」などと懐かしい思いでに浸っておりました。
ので、気が付いたらもう美里が浪人に掴まっておりました。
「あり?」
という訳でいつのまにか、内藤新宿に向かう街道におりました。
目の前でいかにもな浪人さん(3名)が美里さんを拉致しようとしております。
どうしますか?
助ける
助けない
モというか村に帰りたい
龍斗が心の選択肢を選んでいたら木の上から蓬莱寺京悟くんが降ってきました。
浪人から美里さんを助けました。
龍斗の出番ありませんでした。
「・・・ちぇ」
助ける気はないものの少し拗ねてしまう龍斗でした。
つい「この男殺しちゃおうかな☆」と思ってしまいました。
と、その時思い切り聞き慣れた声がしました。
「ははは、こいつはいい見物だ」
槍を持った破戒僧こと九桐尚雲でした。
そして龍斗がかつて村で仲良くしていた一人でした。
「・・・・・ああーーー!!!尚雲!!!!!!」
懐かしさの余り龍斗の目はウルウルでした。
そして九桐も一瞬顔がほころびました。
「浪人さん達、そこの師匠・・・・・ゲフンゲフン!無手の兄さんは知らんが、こっちの侍はデキルぞ。気を付けてかかれよ。さ、俺には構わず戦ってくれ」
しかし何事も無かったかのように浪人を龍斗達にけしかけます。
「ちょっと待て!!!!今不自然だったろ!」
当たり前の事ですが京悟から物言いが入ります。
「ははは、何を言ってるんだ不自然な所なんてなかっただろう?」
「そうだぞ、僕はこんな坊さん初めて見たぞ」
「な、師匠」
「なー尚雲」
「・・・めちゃめちゃ知り合いじゃねーか・・・」
わかりやすく知り合いです。
「まーまーいいからホラ戦闘戦闘。はい、バトル1−2スタート!」
勝手に九桐が場を仕切りました。