「硝子の部屋」

 時は真夜0時、場所は龍麻のマンション。
 今日も今日とて壬生と龍麻はベットでラブラブしていた。

 「そういえば、龍麻。君はどうして美里さんを嫌うんだい?」
 壬生がふと思いついて下に居る龍麻に尋ねる。
 「ああ?嫌ってねーよ」
 龍麻が「こんな時に何聞くねん」という顔をしている。
 「でも、さけてるだろ?」
 「それは・・怖いんだ」
 「怖いって美里さんがかい?」
 壬生にしてみれば、育ちのいいお嬢さんな美里。
 しかし、龍麻にとっては・・・
 「あのな〜アノ女は、花見に誘わなかっただけで恨みがましい目で見るし、修学旅行に弁当作って来るし、さらには、たかが夜店行くのに学校にユカタ持ってくんだぞ、それなのにクリスマスに誘ったら「友達でいましょう」ときたもんだ!ああ、女はやっぱり比良坂だ・・け・・」
 急に声が小さくなる龍麻。
 「・・・?どうしたんだい?」
 「壬生、右向け。右」
 「右・・?」
 ベットから見て右手はベランダ。
 そしてここは8階。
 周りに高い建物はナシ。
 なのに!ベランダに立っていた。
 ・・・・美里が
 しかも手にはスタミナハンディーカム(録画中)を構えている。
 「うふふふ・さすがね龍麻。もう、私に気づくなんて・」
 慣れた手つきで窓硝子を割って入ってくる。
 「こんばんは・龍麻・・・壬生君が固まってるみたいでけど大丈夫?」
 壬生は龍麻の上で右を見たまま固まっている。
 「さっさとどけ!壬生。美里もビデオを切れ!」
 龍麻がベットから飛びおりる、壬生は固まったままだ。
 「あら・安心して、このビデオは仲間内で楽しむだけだから・」
 「・・・そーいう問題か?」
 とりあえずシーツを体にまく。ついでに固まったままの壬生にも毛布を掛ける。
 「でも、だんだん気づくのが早くなるわね。如月君や村雨君の時はもっととれたのに・・残念・」
 「・・・残念じゃねーって」
 楽しげな美里とうんざりしている龍麻。まだ固まっている壬生。
 「さてと、今日はココまでね・じゃあまたね・お二人さん・」
 そう言うと美里は割れた窓から軽やかに飛びおりた。
 スタン。スタスタスタ・・・そのまま道路を歩いて帰る。
 「うふふふふふふふふふふふ・」
 笑い声が恐ろしい。
 
 「・・・帰ったか?おい、壬生復活しろ。アイテム使うか?」
 「・・・いや、大丈夫だ・・・」
 真っ白な顔ではあるが何とかしゃべれるまでは復活した壬生。
 「なっ、美里って怖いだろ?でも、あのビデオ他の女子も観てんだよな〜女って怖いよな」
 「その件なんだけど・・」
 いつの間にか龍麻の後ろに来ている壬生。目が座っている。
 「如月さん村雨さんの時って何の事だい?」
 「ギクッ・・・え?・・いや・・・」
 がしっと肩を捕まれた。
 手が震えているのは怒りの為か?
 「今夜は一晩かけて、じっくりと聞かせてもらうよ。龍麻。」
 ニッコリと笑う顔が・・・怖い。

 この日のビデオが美里の手から他の女子メンバーへと渡り、しかも高見沢の手から壬生の母の手に渡るのだが、それはまたの話。

                             【おしまい】

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