「7月8日台風停滞」


 
 緋勇龍麻、俺の「先生」。
 この人を一言で言い表わすとしたら「台風」だ。
 周りをかき回すだけかき回して自分はケロッとしている。
 嫌な奴だが嫌いにはなれない。
 そんな所も「台風」に似ている。
 来るとワクワクするしな。

 その台風が目の前をふらふら歩いている。
 何、大荷物で歩いてんだか・・・
 「よお、先生」
 「ん?おー村雨くん。ここで会えるとはラッキー。僕の運も捨てたもんじゃないねー」
 って事はつまり・・
 「俺を探してたのか?」
 「オーイエース。ほら昨日はチミのたんぜうびだったでせう?祝ってあげやうと思ってねー。という訳で七夕にちなんでT竹の子御飯Uをプレゼントホーユー」
 大荷物の正体は竹の子らしい。
 「そいつは悪いな・・・ところで何で竹なんだ?」
 「・・・?七夕は竹の子だろ?だから竹の子御飯」
 ・・・・・
 「先生・・・七夕はT笹Uだ」
 「ほー、平成12年度から変更されたのか?」
 「昔っからずーーーーーーーーーーーーーーーーっとT笹Uだ」
 だいたいT竹UならいいがT竹の子Uでどうやって祝うんだよ・・・
 「おや?・・・まーいっか。さっテメーの家にレッツラゴー」
 まあ、いいけどな・・・

 「うちはずーっと竹の子で祝ってたぞ?裏に死ぬ程生えてたし」
 先生は完全に俺の家で作る気らしく、まあ、俺の方も特に用事があるわけでなし、二人でブラブラとマンションに向かっている。
 ちなみにマサキ等とは昨日祝った・・・先生それを知ってて今日来たのか?
 この人の考えはどーも読めねぇ・・・
 「聞いてんのか?村雨」
 「ああ、聞いてるよ。ところで竹の子でどうやって祝うんだ?」
 「食うんだよ。当り前だろ?」
 「・・・・短冊の立場はどこに行った?」
 「フッ。笹ごときに叶えられる程僕の願い事は簡単じゃないのさ」
 知ってんじゃねーか。
 しかし・・
 「裏庭に竹って事はデカイ家に住んでたんだな」
 「デカイもデカイ10万坪」
 10万・・・・・
 「先生。ホラふいてねーか?」
 「おっ、あれかお前のマンション」
 そのまんま走って行ってしまった。
 おいおい、先生部屋の場所知ってんのか?

 トントン・・・グツグツ・・・グサッ・・・ドコドコ・・ダンッ!・・・コトコト・・
 なにやら激しい音を立てて先生が台所でT黄龍のびっくり竹の子御飯Uなる物を作っている。
 俺の周りには入りきらなかった竹の子がゴロゴロしている。
 どれもこれもえらく立派な竹の子だ。
 ゴロゴロ・・
 なんで竹の子で祝ってんだか・・・
 ゴロゴロ・・

 「もーすぐできまっす」
 「おー」

 「それではどうぞいただいて下さい」
 「うまそうだな」
 あの音からしてどんな物が出てくるのかと思えば、冗談ぬきでうまそうな御飯がやってきた。
 しかし・・・
 「コレだけか?先生」
 机の上には竹の子御飯のみ・・・・
 「ん?そーだな、この辺のん2〜3匹焼くか?」
 匹って生々しいな・・・
 


 「とりあえずいただきます」
 「いただきます」

 もくもくもく・・・・

 男二人が向かい合って竹の子御飯をつつく・・・
 暑苦しい図だな・・

 もくもくもく・・・・

 「そーや、先生の所のサボテン(仮名)は元気か?」
 「元気なんでねーの?ここ1週間程水やりに帰ってないからな」
 相かわらず酷い扱いだな・・・
 そのうち枯れちまうぞ?


 
 もくもく・・・
 「・・・そーか笹か・・」
 先生がポソッと呟く。
 何か嫌な予感がする・・・
 「おい、先生。酒飲むか?」
 「笹・・・笹・・・笹・・」
 ヤバイ・・何か企んでやがる。
 こんな時は、酒だ。酒だ。

 「先生。酒これでいいか・・・・先生?」
 先生の居た所に竹の子で
 カエル マタ クル タツマ
 「・・・・・」

 次の日
 マンションのセキリュティーがメチャメチャに壊され、ドワが外され、竹の子と笹にまみれた俺の部屋の中で、先生がパンダとたわむれていた・・・・
 「やっぱり笹にはパンダだろ?な?」
 グルゥゥゥゥゥ・・・
 な?じゃねーよ・・・


 
 結局、その後。彼の愛するサボテン(仮名)から
 Tいいかげん水をもらえないと死にますU
 という電話が来るまで、台風(とパンダ)は俺の部屋に居すわった。


 なんといいますか・・壬生くんの誕生日SSより長いっすね・・・っていうかアレが短かすぎ・・

 パンダは緋勇家の誰かのペットです。人食いパンダ・・

 サボテンの君がかわいそうになってしまった・・

 書きたかったのは飯を食う龍麻と村雨。

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