「おばあちゃんとたぬき」

 「彼はタヌキではないかと思うんです」
 突然の神鳳の言葉に生徒会室に歩を進めていた、阿門、双樹、夷澤の足が止まりました。
 『・・・・・・・・・は?』
 「いえ、先程会った転校生の事なんですが。・・・彼はタヌキではないかと」
 マヌケな声を出した3人に神鳳はもう一度同じ事を言いました。
 ただ、もう一度言ったからと言って内容が理解出来るとは限りません。

 「・・・・狸と言うのは・・・食えない奴だと・・・そういう意味か」
 阿門が違うだろうなと思いつつ聞きました。
 「いいえ、四つ足でシッポがあってポンポコと鳴く方ですよ」
 「・・・・タヌキってポンポコ鳴くんすか?」
 「黙りなさい夷澤。殺しますよ」
 夷澤の至極もっともな質問は一刀両断切り捨てられました。

 「・・・・・神鳳」
 複雑な顔をしている阿門に気付いたのか、神鳳が補足しました。
 「解りました、ご説明します。実は実家の裏が山でして、冬になるとよく家までタヌキが餌を求めてやって来てたんです。その中でも一匹人懐っこいのがおりまして、僕も妹も可愛がっていたものです。でも、ある年からぱったり姿を見せなくなりまして・・・・・・まさか東京で人間になっているとは」

 (((説明になってない!!!!!)))

 全員が心の中で突っ込みました。
 「神鳳、落ち着け。アレは人間だ」
 阿門が何とか諭そうとしました。
 「でも、彼はタヌキですよ?」

 (((でもって何だ!!!!)))

 また全員が思いました。

 「全体的に黒いですし」
 「学校指定のジャージ着てる子は大体黒いわよ」

 
 「狭い所に潜りますし」
 「墓の事を言ってるなら俺達も同様だ」

 「干し芋とか好きそうですし」
 「俺だって干し芋くらい食べますよ」

 「何より、彼を見た時この辺がトンッとなりましたから」
 言って自分の胸を指さします。
 「トン?キュンとかじゃなくて?」
 「トンッです」
 双樹の言葉に神鳳はノックするような仕草をしました。

 「とにかく、葉佩九龍くんはタヌキですよ」
 にっこりと、自信を持って言う神鳳に後の3人は
 (((ああ、もう何を言っても駄目だ)))
 と悟りました。

 「さっそく明日から餌付けしないと。やっぱり最初は干し芋ですか」
 決意も新たに楽しそうな神鳳に、双樹は溜息をまじえて
 「頑張ってね」
 と言いました。
 後の2人は溜息オンリーです。



 そしてその頃、グラウンドでは、
 「・・・・・お祖母ちゃん」
 「は?」
 「あの細目の彼、僕のおばあちゃんだよ!」
 「落ち着け九ちゃん。話が見えない」
 九龍が皆守に訴えておりました。

 「おばあちゃんなんやって!」
 「だから誰がだ!」
 「あの会計の人」
 「神鳳は男だ」
 「でもおばあちゃんやって!そっくりやもん!僕が墓荒らしとかしてるから怒りに甦りはったんや!!どーしよ!!」
 「いいから!落ち着けー!!」

 そしてコチラも堂々巡りの意味不明でありました。


 【後日談】

 「甲ちゃん。やっぱりあの彼はおばあちゃんだよ。さっき廊下で干し芋貰った」

 「双樹さん。やっぱり彼はタヌキでしたよ。干し芋あげたら嬉しそうでした」

 『はぁぁぁぁぁ』

 「どうしよう、どうやったらあの世に戻ってくれるんかな。甲ちゃん何ぞ意見なかかね?」

 
 「明日は干し柿と豆大福どっちが良いですかね?どう思います?双樹さん」

 相方の重い溜息も何のその、何というか似ている2人で御座います。




 ウチの神鳳は九龍をタヌキだと思ってるんだよ
 と相方に言ったらうけたから書く

 そして九龍と龍麻の祖母は同じ人物で(従兄弟だから)
 九龍は神鳳に似てると言い(顔が)
 龍麻は御門に似てると言う(性格が)
 どんな祖母だったか想像せよ/10点