「それいけ!阿門くん」
今日も今日とて遺跡探索中。
今夜のメンバーは皆守と阿門です。
人呼んで、生徒会トップ−正直あんまり仕事出来ないよねこの二人−コンビです。
それはそれとして三人は遺跡をグルグル回っておりました。
「んー・・・眠い。昨日遅くまでロックフォードしてたから・・・・」
九龍が目をこすりこすり銃をかまえます。
「大丈夫かよ」
不安げな皆守に九龍が大丈夫大丈夫と手を振ります。
「こう見えてもプロですがや」
慣れた調子で撃ちだした弾は、
ダンッ・・・チュイン・・・・チュイン・・・・チュイン・・・・ズドンッ!
壁を跳ね返り、部屋中を駆け抜け、阿門のコートを貫きました。
「「「・・・・・・・・・・・」」」
「・・・銃の照準がぶれているな」
「・・・・にゃぁ」
「向こうの部屋で仮眠とれ」
「ラジャ!」
皆守の提案に一も二もなく三人は移動しました。
「じゃあ、2時間後にお会いしましょう」
九龍はそう言って持参したカーテンにくるまりました。
「くーくーくー」
瞬時に熟睡した九龍を暫く見ていた二人でしたが、やる事もないので暇になりました。
「阿門。俺達も仮眠とっておくか?」
「そうだな」
満場一致で決まりました。
皆守が適当な壁にもたれかかり「さあ、寝るか」と思った矢先、目の前にズイっと何かが押しつけられました。
「・・・・何だ?本?」
それは薄型の本でした。
否、それは絵本でした。
「阿門?」
疑問に思って顔を上げると、そこにはご丁寧にナイトキャップを被り、小脇にテディベアを抱えた阿門が突っ立っていました。
「寝る前には本だろう」
「・・・・・・・・」
皆守の心と背中を嫌な汗が流れました。
(いや、まて)
(俺達18だよな)
(と言うかなんだ帽子は。ナイトキャップて普通かぶるか)
(あと、小脇のテディは何だ!)
(いや、それよりも・・・・この男)
(・・・・まさか)
「では、皆守読んでくれ」
「やっぱりかー!!!!!!!!」
当たり前のように自分の横に寝っ転がった男に、皆守は絶叫しました。
無理もありません。
額に青筋立てた、どデカイ男が寝る前のお話しをねだっているのです。
その手の趣味でない者には最高の悪夢です。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!!!九ちゃん!起きろぉぉぉぉぉぉ!!」
いつものクールさをかなぐり捨てて皆守は九龍を叩き起こしました。
「・・・・皆守どうした?」
そんな皆守を不思議そうに見る阿門でしたが、今の皆守にはどうだっていい事です。
むしろ不思議そうに小首をかしげる阿門など見たくありません。
「起きろーーーーーーー!!!!!!」
「・・・・なにーよ。どしたん?甲ちゃん」
「今すぐに!地上に帰るぞ!!今すぐにだ!!!!!」
「えー・・まだクエスト残っとりゃーすよ」
「頼む。この通りだから帰ってください」
親友の土下座と、後ろで立ってる阿門の奇天烈な格好に九龍はすべてを悟りました。
次の日。生徒会室。
「・・・神鳳。お前阿門のアレ知ってたのか?」
「ええ、知ってますよ」
皆守の問に神鳳は微笑を浮かべて答えました。
「仮眠を取るから読んでくれと言われましてね・・・・」
「ムカついたので、本当は残酷なグリム童話を読んでやりましたよ」
「・・・・お前、非道い奴だな」
「あの図体でお話しねだる方が非道いですよ」
皆守は確かに、と思いました。
その頃の阿門は、
「転校生。お話しを頼んでいいか?」
「いいよー、T豚殺しの真似をした子供の話Uをしたげやう」
人選をミスしてました。
注・「豚殺し〜」豚殺しの真似をして遊んでた子供が豚役の子供を本当に殺してしまうが無罪になる話。教訓も何もない。後味が悪い。
阿門はおぼっちゃんなので、寝る時はナイトキャップ。自分と同い年のテディがいる。お話しが無いと寝れない
人魚姫に涙する。カチカチ山でも涙する。赤い■ウソクと人魚では号泣する。ごん◆つねでは悲しすぎて眠れない
九龍と神鳳はリアリストなのでとくに泣かない(だって絵空事じゃないですか)
最後の「豚殺し〜」は多分グリムだったと思います
この話は何なんだ?と思った記憶がある
大岡越前でも似た話があったようだ