「職業選択の自由」

 「僕なー、小さい頃T湯もみ娘Uになりたかったなも」
 突然そんな事を言われ、その場に居た全員が固まりました。

 
 ここは天香学園グラウンド。
 丁度3-Cの体育が終わり、葉佩、皆守、夕薙の3名が教室に帰ろうと歩を進めた所、前から来た生徒会役員と遭遇したのでした。
 そして、生徒会長である阿門が転校生である葉佩九龍に警告を与え、帰ろうとしたその時。
 突然九龍が言ったのです、
 「湯もみ娘ってどうやったらなれると思う?」
 と。

 「・・・・・湯もみ娘。草津温泉のか?」
 固い静寂を何とか破ったのは阿門でした。
 「そうそう、あの湯を板でかいてる娘さん達。あれって温泉の効能を水で薄めて消さないよう湯を混ぜて冷ましている人達なんだそうな。昔、お母さんと行って入って見てなりたかったんだけれども・・・・どうやってなるんやろ?博学な生徒会長さんご存じ?」
 ご存じ?と聞かれた以上答えないといけないと思ってしまうのが阿門の真面目な所でした。
 「・・・・・やはり、温泉組合とかに登録するのではないか?」
 「うーん、それも考えたんやけど。あれって旅館の仲居さんの可能性もあるでは無いですか。一日中湯もんでるとは思えんし」
 「確かにそうか・・・・・」
 真面目にウーンと悩んでしまう二人に周りも「どうしたらいいんだ」状態でした。

 
 そこへ、
 「センパイ待って下さい・・・・・ってどうしたんですか?」
 生徒会役員唯一の2年、夷澤がやって来ました。
 「夷澤、丁度良い所に。お前T湯もみ娘Uはどうやってなるのか知らないか?」
 「・・・・・・はぁ?」
 イキナリ真面目な顔で「湯もみ娘」と言われて夷澤は混乱しました。
 夷澤は助けを求めるように神鳳と双樹を見ますが、二人とも静かに目線をそらしました。
 「今、とりあえず温泉組合登録の娘説と旅館の仲居説が出たんやけど。メガネくんはどっちや思う?」
 九龍が普通にメガネ呼ばわりしました。
 「メガネくんと言わないで下さい!」
 「だってー名前知らんし」
 「九ちゃん、コイツの名前は夷澤凍也だ」
 見かねた皆守が夷澤を指してそう言いました。
 「ほうほう、夷澤くんか・・・・・・でさー、メガネくん」
 「アンタ何聞いてんですか!!!!!」
 夷澤が切れました。
 切れやすいお子さまのようです。
 「良いから良いから、それより君暇そうだし調べといてくれると嬉しい」
 「・・・・・・・は?」
 「だから湯もみ娘の事。ネットで調べたら載ってるかもしれんで」
 九龍にそう言われおまけに、
 「そうだな、今夜の夜会までに調べておけ」
 と、阿門にまで言われました。
 「・・・・・・・え?」
 「頼んだぞ」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・・はい」
 九龍はともかく会長である阿門には逆らえない夷澤に、その場に居た全員が同情しました。

 「では、転校生。夜会でまた会おう」
 「はいはーい」
 夷澤をそこの放置して生徒会役員メンバーは帰って行きました。


 そして、グラウンドからかなり離れた所で神鳳が言いました。
 「T湯もみ娘UはT娘Uの時点で彼は無理だと思うのですが・・・・?」 
 その言葉に阿門と双樹が『あっ』と思いました。
 「まあ、僕達には関係ありませんけど」
 それもそうだと思いそのままにしました。


 一方、九龍側。
 「イミダスとか草津温泉ガイドに載ってるんやないか?」
 「いいですから!センパイはついて来ないで下さい!!」
 九龍が夷澤をロックオンして遊んでおりました。

 その後ろを皆守と八千穂が付いて行きながら喋ってました。
 「なー八千穂」
 「ん?」
 「九ちゃんてすでにトレジャーハンターだよな」
 「・・・うん」
 「今更他の仕事調べてなにすんだ?」
 「・・・・・さー?」

 
 「あーついでにカンカン上げ下げする人も調べてー」
 「遮断機は機械制御です!!国鉄とかに就職して下さい!!!」


 葉佩九龍18歳。
 本業・トレジャーハンター。家業・忍者。世を忍ぶ仮の姿・高校生。
 なりたい職業・湯もみ娘。カンカン上げ下げする人。
 欠点は後先考えず思った事を口にする所。





書いてから思ったけど夕薙が何処にも出てない・・・・・まーいっか
湯もみ娘、フト思った。アレはどうやってなるんだろう?と
結構、就職の仕方の解らない職ってあるよね。トレジャーハンターもそうか
傭兵とか
どこに募集が出てるのかわからない

夷澤は8話で初めて出てきたんだけど、風祭を彷彿とさせる「虐めたいガキ」ですな。大好き
顔的には某神父によく似てる神鳳が気になります

そしてこの後せっかく調べても夜会はアノ騒ぎで意味が無いという
可哀想な夷澤くんでした