「ねむねむ」

 「ふぁぁ・・・・」
 生徒会室。
 神鳳が口に手をあてて大きくアクビしました。
 「あら、どうしたの?」
 「おや、双樹さん。見られてしまいましたか」
 目ざとく見つけた双樹に神鳳は少し恥ずかしそうに言いました。
 「どこかのアロマなら解るけど貴方がアクビなんて珍しいわね。寝かしてくれないハニーでも居るのかしら?」
 「そんな色気のある話なら良かったんですが・・・・」
 心なしか顔色が悪い神鳳に双樹も眉をひそめました。
 「また例の?」
 「ええ、ここ数日霊の干渉が激しくて寝てられないんですよ」
 「ホント色気のない話ね」
 「ご期待に添えず申し訳ありませんね」
 軽口を叩きながらも神鳳はしんどそうです。
 「前から気になってたんだけど。その霊の干渉って具体的にはどんな感じなの?」
 「そうですね・・・・。耳元で大勢の人が小さい声でずっっっっっっっっっっっっっっっっと囁いてる感じですかね」
 「・・・・凄くイヤね」
 「ええ、凄く嫌ですよ」
 その顔は本当に嫌そうでした。
 「普段はまだ自力でコントロールも出来るのですが・・・・。こうも数が多いと」
 言って机に沈み込む神鳳を双樹は心配そうに見ました
 「眠れる香を調合するのは簡単なんだけど・・・・」
 「お気持ちだけ頂きます」
 眠りの香で強制的に寝るのもひとつの方法でしたが、それはそれで霊に体を乗っ取られる可能性も出てきて危険なのでした。
 「何かこう、ぱっと霊達を遠ざける方法があれば良いんですが・・・・」
 「・・・・そうねぇ」
 弱ってる神鳳に同情して双樹も頭を悩ませますが、如何せん専門分野で無いので良い知恵も出てきません。
 と、そこへ
 「どもでーす!ミルクとハンガー貰いに来ましたー!」
 いつもの脳天気な笑顔を浮かべ九龍が入って来ました。

 ザッザザザザザザザザザザ………………ザァー‥‥‥‥‥‥サーー・・・・

 「あ」
 「え?」
 「はい?」
 九龍が入って来た途端、強い風に吹き飛ばされたかのように霊達の存在が消えました。

 
 「おやま」
 「小山?」
 神鳳の側に久し振りに静かな空間が戻ってきました。
 「あらま」
 「アロマ?」

 そう、九龍自身はまったく気付いておりませんが腐っても黄龍の血筋。
 低級霊は近づく事さえ出来ない高貴な気をまとっているのでした。
 但し本人は無自覚で、特に恩恵もありません。
 (むしろ、強い化け物に目を付けられる厄介な気であります)

 「おやおや」
 「どしたん?神鳳くん」
 「いえ、九龍くんは結構凄い力の持ち主なんですね」
 頭痛の種が無くなってにこにこと神鳳が言います。
 「??僕は《力》持ってへんっすよ?」
 イマイチ何を言われてるか解らない九龍は首を傾げました。
 「そう言えば、以前僕が墓場の霊を呼び起こした時も全然平気でしたね」
 「あれは凄かったなー、学校内がゾンビ映画みたいやったよー」
 大変楽しそうに言いました。
 どうにもこうにも緊張感の無いお子さまです。
 「まーそれはそれとして、九龍くん」
 「はいな?」
 こいこいと手招きされて神鳳の側に行きます。
 「それでは、双樹さん。後は宜しくお願いします」
 「・・・・ま、仕方ないわね」
 「はい??」
 言うなりいきなり神鳳に抱きすくめられソファに落とされました。

 「なにー!!!!神鳳くん何事!!!!」
 「・・・・静かにしてください・・寝不足なんで・・・す・・・」

 そして、そのまま寝てしまいました。

 「・・・・双樹ちゃーん」
 「しばらく辛抱してあげてね。寝てないのよ彼」
 と言われて頭のひとつも撫でられれば九龍は諦めるしかありません。


 
 数十分後。
 やって来た夷澤が見たのはソファで爆睡する九龍と神鳳でした。
 「・・・・何してんすかこの人達」
 「しー。安眠枕とその溺愛者がそろって安眠を貪っているのよ」


 その後やって来た阿門が黙って上からコートを掛けてあげました。

 何だかんだ言って幸せな集団です。




 タイトルに意味無し
 
 霊の干渉って実際にどんな物かは解りませんが
 「2日寝てないんですよ」って事なのでよっぽど五月蠅いんだろうと
 11話夜の自由行動。この会話では「渡さない」を選んだ方が好きです
 「呪いが飛んでいくかもしれませんよ」は彼の内面をもの凄く表してると思う・・・・怖いよー

 双樹さんと神鳳さんは仲良しさん
 生徒会室で軽口たたき合う仲
 お昼とか一緒に食べる仲
 あんまり仲良しなんで一時期「あの二人付き合ってんの?」とか噂が立ってしまうくらい(その後自然消滅)

 阿門さんは双樹も神鳳も好きです。九龍は・・・・ややこしい感情。夷澤は・・・・嫌いじゃないよ多分
 起こさないようにそっとコートを掛けます(優しいお父さん)
 二人が起きてしまったらちょっと狼狽えるタイプだと嬉しいです