「これはクリスマスのお話しです」

 「メリークリスマス」
 普通にドアからサンタ姿の神鳳がやって来ました。
 「わー。神鳳くんサンタだー。赤い衣装が似合わにゃー」
 「ふふふ、九龍くん、ペンチで舌を引っこ抜きますよ」
 「誉めたのにそれですか!」
 誉めてません。
 「それはそれとしてプレゼントです」
 「わーい」
 袋の中から何か大きい物を取り出します。
 「モコモコー。何ですかなコレは?」
 「フリース製巨大靴下ですよ」
 ひと一人入れるくらいの大きな靴下でした。
 「じゃあ入って下さい」
 言うなり九龍を放り込みました。
 「ふぎゃっ!・・・フアフアーふーあーーー」
 手触りの良い物好きの九龍は和みました。
 「後はこのまま僕の枕元に置いたら完璧ですね」
 「僕にプレゼント?僕がプレゼント?」
 「九龍くんは「てにをは」にうるさいですね」
 普通はそうです。
 「明日は性夜ですから」
 「字が違います」
 「頑張らないとですね」
 「誰が何に何をですか!」
 「具体的に言いましょうか?」
 「やめて下さいお願いします。このとおりです」
 袋の中で頭を下げてるのでまったく見えません。
 「じゃあ入り口を閉じますよー」
 「閉じないで!」
 九龍が抵抗しました、貞操の危機なので当たり前です。
 しかし、相手は学年一の秀才、幼子の取り扱いに長けた神鳳です。
 「九龍くん、九龍くん」
 カラカラカラ・・・・
 袋の口で特徴的な筒状のお菓子を振りました、
 「マーブルだ」
 「九龍くんが大好きなマーブルチョコですよー」
 そして、にこやかに九龍の頭上で蓋を開けました。
 バラバラバラ・・・・・
 色とりどりのチョコレートが袋の中に散ります。
 「チョコー」
 屈んで拾い始めた九龍の頭上で袋の口がキュッと閉まりました。
 「ぎにゃー!たばかられたー・・・」
 流石は「九龍取り扱い一級」の持ち主です。
 そのまま、よいせと担がれて連行されました。
 
 「たーしーけーてー・・・ポリポリポリ・・・」
 助けを求めてるのかチョコを食べているのかよくわかりませんが、そんな怪しげな袋を持って自室へと急ぐ神鳳の前にもう一人サンタが現れました。
 天パのサンタ、皆守です。
 「こんばんは、皆守くん」
 「よう、神鳳。・・・何持ってんだよ」
 「何って、良いサンタへのプレゼントです」
 普通は良い子へのプレゼントだろう、と皆守は思いました。
 
 ジタバタジタバタ・・・・・
 「袋、暴れてるぞ」
 「気のせいですよ」
 「甲ちゃん。たーしーけーてーーーー」
 「九ちゃんの声がしてるんだが」
 「気のせいですよ」
 「・・・・・」
 「・・・・・」
 ガバッ!
 皆守が袋を奪いました。
 「ああ、せっかくの僕プレが」
 「サンタが欲しがるな」
 そんな問題でも無い気もしますが、とりあえず九龍が袋から解放されました。

 「フリーダム」
 何かホコホコの九龍が出てきました。
 「生まれたてみたいですね」
 「ALLフリースは暑いですよい」
 「底でチョコレートがベタベタになってるぞ」
 「帰って洗濯しないとですね。本番は明日ですから」
 「まだやるんすか」
 「九龍くん。袋プレイは箱性交と並ぶ固形プレイですよ」 
 「「何だそのマニアックな物は」」

 「袋プレイは後でするとして」
 「・・・するんすか」
 「皆守くん、お仕事は済みましたか?」
 神鳳の問に皆守は空の袋を見せて言いました。
 「終わった」
 「そいやー甲ちゃんもサンタだーねー」
 皆守もサンタです。
 「今日は生徒会役員は皆サンタなんですよ」
 「夷澤はトナカイだがな」
 「わー軽いイジメ」
 いつだって夷澤はいじめられてます。
 「そいで、何でこんなにサンタ大放出?」
 「この学校の生贄・・・じゃなくて生徒達に少しでも学園生活を楽しんでもらおうと言う生徒会からのクリスマスプレゼントですよ」 
 神鳳がとても嘘くさい笑顔で言いました。
 それに九龍も嘘くさい笑顔で答えます。
 「グダグダ五月蠅い家畜の口には餌をぶちこんどけ?」
 「まー、簡単に言うとそうですね」
 ぶっちゃけました。
 「で、女子寮の餌やり・・・プレゼント配布は双樹さんが担当で、男子寮は皆守くんなんですよ」
 「夷澤は?」
 「トナカイですから外につないでますよ」
 「嫌がって暴れたから鎖でグルグル巻きだ」
 「へー・・・・」
 ふと見てみれば、窓の外は吹雪いてきたようで窓が激しく揺れています。
 (ビヨォォォォォォーーーーー)
 (ガタガタガタ・・・ガタガタ)
 「・・・・・・・」
 「・・・・・・・」
 「・・・・・・・」
 「・・・・・凍拳つかいだから大丈夫ですよね」
 「・・・・・・大丈夫だろ」
 「・・・・・・・風呂もぬるめが好きやしね」
 とりあえず3人は夷澤の事は忘れました。
 誰だって吹雪の中は出て行きたくないものです。

 廊下での立ち話も何なので、とりあえず九龍の部屋へでも移動しようかとした時、神鳳の携帯が鳴りました。
 「もしもし?・・・はいはい、ご苦労様でした。おやすみなさい」
 携帯を切ると二人の方を向き言いました。
 「双樹さんもアロマキャンドルを配り終えたそうですよ。今年も無事終わりましたね」
 「終わったな」
 皆守が伸びをしました。
 「女子寮がアロマキャンドルで、男子寮は何だったのですかい?」
 「そう言えば僕もそれは知りませんね」
 神鳳サンタは何の為に居るのでしょう。
 「僕は九龍くん専用ですから」
 「プレゼント無しの専用サンタは要りませぬ」
 「マーブルあげたでしょう?」
 安物のサンタです。

 「男にキャンドルもないからな。俺が配ったのはコレだ」
 そう言って皆守が袋から取り出したのは、
 楕円形の皿の上で、白米の白さとルウの茶色が見事なツートンカラーを醸し出している、
 「「・・・・・カレー」」
 ご存じカレーライスでした。
 
 「皆守さんはこの物を枕元にお置きになったのかしら?」
 動揺のあまり九龍の口調がおかしいです。 
 「当たり前だ。クリスマスのプレゼントと言ったら枕元に決まってるだろう」
 皆守は普通に返しました。
 「ちゃんと、目覚めてすぐに食べれるようにスプーンも付けてな。だが、やはり
着目すべきはルウだな。今回のルウは枕元に置いてから食べるまでの時間経過を考慮に入れ、俺が長年かかって完成させた「冷めても美味いカレールウ」を使用した。本当はカレーの味もわからない奴らに食わせる物じゃないんだが、クリスマスという事もあって特別にな。それで、このルウの作り方だが、まず冷たい料理に合うスパイスの調合から始まり・・・」
 「「・・・・・・・・」」
 二人は皆守の長いカレー講釈を聞きながら、(ああ、この男ウゼェ)と思いました。

 そのまま、皆守のカレー講釈は朝まで続き、
 神鳳は袋プレイを断念し。
 九龍は安堵と疲労を抱え登校し。
 皆守は満足して二度寝しました。

 その頃、女子生徒達は、枕元に置かれたキャンドルに喜び、
 男子生徒達は、朝一から枕元に置かれていたカレーに、
 ある者は困惑し。
 ある者は誤って手を突っ込み。(目覚ましの横にあった為)
 ある者はゴミ箱に捨て某生徒会役員の恨みを買いました。

 そして、哀れなトナカイは氷漬けで発見されました。

 2006年。クリスマスのお話しです。





 書き始めたのが去年なので2006年のクリスマスです
 元ネタは、写メールで送って頂いた「九龍カレンダー 遺跡編」の11月12月のイラストです
 神鳳のサンタが大変可愛かったです

 袋プレイ→ディスコミュニケーション(漫画)で主人公が言ってた
 「裸でビニール袋にくるまり、お互いの体をまさぐる」プレイ(漫画中では「ビニールごっこ」)
 ・・・・・楽しいのか?