「クレイマークレイマー」

 麗らかな昼休み。
 天香学園屋上。
 葉佩九龍と皆守甲太郎、それと少し離れて夕薙大和が各自昼ご飯を食べておりました。

 
 「甲ちゃんと夕薙くんてさー」
 九龍が牛乳パックをもてあそびながら言いました。

 「完璧にできてるよね」

 「ブフーーー!!!!」
 九龍の言葉に皆守が飲んでたジュースを噴きました。
 向こうの方で夕薙の持ってたパンが地面に落ちました。
 聞こえていたようです。
 「・・・い、いきなり何言い出すんだ・・・」
 皆守と夕薙の動揺を無視して九龍は地面を見ながら淡々と続けました。
 「いやね、初めから怪しいと思ってたんだよ。何と言いますか・・・・君ら二人の会話ってむっちゃ馴れ合いやん?ホレ、アレっすよ、長つき合いのカップルみたいな会話と言うか、モロにそんな会話。しかもお互い名前で呼び合うし。コレはもう付き合ってるよね?体の関係もアリアリ?あ!もしかして今も邪魔?ごめんねー気が付かなくて。ここは若い二人にまかせて僕はこの辺で・・・・」
 立ち去ろうとする九龍を皆守が止めました。
 「待て。九ちゃん・・・・遺跡に潜りすぎて疲れてるんだよな?な?」
 「はははは、何を言ってるのかね甲ちゃん。この遺跡大好きの僕が3日4日・・・一週間、遺跡にノンストップGO!位で疲れるものかね」
 「・・・・・付き合わされる方は疲れるんだよ」
 ちなみに無茶な潜り方をする時は男限定なので、女の子からの好感度は下がりません。
 この辺が九龍はフェミニンです。
 「またまた、そんな風に話をすり替えて。もう甲ちゃんたら照れ屋さん♪別に甲ちゃんが夕薙くんとヤってても僕達は友達だぞ。外国暮らしが長かったからその手の趣味の人に偏見ないし」
 「待て待て待て!!!その手の趣味って何だ!!俺はノーマルだ」
 「・・・・・・甲ちゃん」
 ポンと皆守の肩に手を置いて九龍が言いました。
 「でもな、校内アンケート取ったら過半数の人が【あの二人は出来てると思う】と言う結果になったぞ?」
 「アンケートって何だ!!!!!!」
 「アンケートはアンケート。コレ結果のフリップ」
 ガサゴソとアサルトベルトから何やらクイズ番組の回答表みたいな物を取り出しました。

 
 【第1回・皆守甲太郎と夕薙大和はできてるか?アンケート結果発表】
 1位・できてると思う     68%
 2位・どうでもいい      20%
 3位・前からそうだと思ってた 10%
 4位・それより石はどうだい?  1% 
    不潔です         1%

 ((・・・・4位の一人は黒塚だな))
 皆守と夕薙の意見が一致しました。
 「・・・・そうじゃなくて、九ちゃん・・・いつの間にこんな物を・・・・」
 「いつの間にって第7話終わったくらいにかな。あの会話にはジェラシーですから」
 九龍の言葉を聞いて、
 ((第7話って何だ??))
 と思いましたが怖いので聞きませんでした。
 「・・・とにかくな、葉佩。俺と甲太郎は・・・・」
 「ストップ!!」
 夕薙の言葉を遮って、九龍が何かを拾い上げました。

 
 アイテムヲ入手シマシタ
 T鳥のはねU
 T週刊誌U
 Tゴム風船U

 「・・・・・・この屋上で拾えるアイテムな」
 ゴム風船以外をポケットに入れながら言いました。
 「何で屋上にゴム風船なんてあるんだろう?ってずっと思ってたんだ。どこのメルヘンが風船などを膨らまして遊んでるのかと・・・・」
 少し黙りました。
 「その後、男子寮でも見つけて思いました。・・・・コレってゴム風船でなく・・・・コンドー・・・・・」
 「「・・・・・・・」」
 「甲ちゃんの不潔!!!!夕薙と腰が疲れるまでヤってればいいのさ!!!!」
 「何でだーーーー!!!!!」

 ダーッと走り去っていく九龍を皆守が追いかけて行き、夕薙一人が屋上に残されました。
 「・・・・・・ふー」
 ガランとした屋上を見ながら大きく深呼吸すると、先程落としたパンを食べるべきか考えました。


 さて、校舎の中では九龍と皆守の追いかけっこが続いておりました。
 「きゃー!甲ちゃんの不潔ーーー」
 「待て!このバカ!!」
 きゃーきゃー奇声を上げる九龍を追いかけてた皆守でしたが、ついに見失いました。
 「・・・まったく、どこに行った?」
 とりあえず手近なドアを開けてみました。

 図書室。
 ガラ
 「きゃっ、皆守さんですか・・・」
 中に居たのは七瀬でした。
 「悪い、九ちゃん見なかったか?」
 「・・・・・・」
 そう聞きましたが、七瀬は皆守を凝視するだけで答えませんでした。
 「おい、聞いてるのか?」
 「・・・・皆守さん」
 「何だよ?」
 「故人曰くT恋愛はただ性欲の詩的表現をうけたものであるUとありますが・・・・・ずっと九龍さんと一緒に居るのに本当は夕薙さんと……なんて・・・不潔です!」
 言うだけ言って七瀬は司書室の方へと行ってしまいました。
 (4位のもう一人はお前か・・・・)
 皆守はガックリと肩を落としました。

 保健室。
 ガラ
 「何だ、皆守か。どうした?また寝に来たのか?」
 「・・・九ちゃんを捜してんだ。来なかったか?」
 「来てないぞ」
 保険医の瑞麗はそう言って優雅に煙管を吹かせました。
 「ふふふ、新米パパは忙しそうだな」
 瑞麗の言葉に皆守の眉毛が上がりました。
 「何で俺がアイツの父親なんだよ」
 「違ったか?少なくとも葉佩は構って欲しいと君の手を引いてるように見えるが?」
 「・・・・・・」
 皆守はそれには答えず保健室を後にしました。
 「構って欲しいと泣く子には甘いお菓子か愛を与えると良い。そうすればアイツも少しは大人しくなる」
 背中にぶつけられた言葉は聞かなかった事にしました。

 
 「ちっ・・・まったくどこに行ったんだ」
 「故人曰く・・・」
 キョロキョロ探す皆守の頭の上から声が降ってきました。
 言葉は七瀬の口癖でも言ってる声は探している九龍の物でした。
 上を見上げれば、階段の吹き抜けから九龍が顔を覗かせておりました。
 「故人曰くT恋愛と戦争ではあらゆる戦略が許されるUとさ」
 「・・・何だ九ちゃんは俺に恋してるのか?」
 下から皆守が笑いながら言えば、九龍も笑いながら否定しました。
 「ははは、真逆、まさか。愛は万人にが僕のポリシーですから。
  しかしながら、信頼はごく少数に。byシェイクスピア」
 見上げてる所為で普段は前髪と暗視スコープで隠れてる九龍の目が見えました。
 口程には笑っていない目がピカピカと皆守を見据えておりました。
 「信頼をあげたお子さまにはぜひとも構って頂きたいのよ。寂しがり屋さんだからね」
 「ルイ先生には俺はお前のパパだと言われたぞ」
 「はっはっは、なら尚のこと。愛して貰わないと」
 「甘い菓子で我慢しろ」
 言ってポケットからキャラメルを取り出すと九龍に向かって放りました。
 それを受け取って口に入れるとやっと下に下りて来ました。
 「キャラメルは歯にくっつくからあんま好きくない」
 「贅沢言うな」
 「パパー、マミーズでういろうパフェが食べたいよ」
 「奢ってやるから皆の誤解を解け」
 「了解」
 「・・・・まったく」

 言って去っていく二人を見る影ひとつ
 その口から文句もひとつ。

 「結局、一番損してるのは俺じゃないのか?」

 振り回されて放置プレイの夕薙大和。
 本日一番の被害者です。




 7話途中の会話にジェラシーったのは私だけでは無いはず
 この二人馴れ合いすぎ!
 九龍も仲間に入れてあげて!

 皆守とカップルっぽいですが、EDにまだ到達してないので変動の可能性アリ
 皆守とはつかず離れずな関係希望