「走る」


 それは、やがて小さくなって見えなくなるものです。


 神鳳がフト窓の外を見れば、グランドではジャージを着た学生達が集合しておりました。
 その中にちっこい子供の姿を見つけたならば、久方ぶりに出てみた授業など忘却の彼方。
 視線は、はしっこいトレジャーハンターに釘付けです。

 グランドのジャージ集団は軽いストレッチの後、グランドをグルグルと回り始めました。
 (そうそう、今の授業はマラソンでしたね)
 球技などに比べるとまだマラソンの方が好きな神鳳です。

 グランドをグルグル回る集団はやがて、バラバラと砕けていき、先頭グループ、中間グループ、最後尾グループと別れていきました。
 その先頭グループからピャッと飛び出して行っているのが九龍で、一人だけまるで短距離走のようなスピードで突っ走っています。
 対照的にだるそうに最後尾を走っている(歩いている?)のが皆守で、その対比が可笑しいなと思いました。
 (今の九龍くんのスピードだと2〜3回は皆守くんを抜かしそうですね)
 神鳳の思ったとおり、猛スピードの九龍は皆守に追いつき、追い越しました。
 追い越す瞬間、皆守が九龍に何か言ったようにも見えましたが、神鳳の所までは聞こえませんでした。
 (スピードが早すぎるとかそんな所でしょうかね)
 多分そんな所です。

 一人だけ早回しのように九龍がグルグルグルグルグランドを回ります。

 (でもグランドは丸いから)
 どんなに早く走っても、また後ろから。

 (皆守くんがサボって歩いていても、彼はまた)
 後ろから追い抜いて、前を駆け抜けて、また後ろから。

 (グルグルグルグル・・・・)

 グランドは丸いから、何度でも何度でも。

 これが、グランドで無いとしたら、

 早く早く、めまぐるしく、先に先に進んで、

 やがては見えなくなるその背中を、

 (好きになってしまいましたね)
 はぁーと溜息つく神鳳にいい加減豪を煮やした先生が聞きました。
 「神鳳くん。あなた授業も聞かず一体何をしているの?」
 そちらに一瞥くれて、無く子も黙る生徒会会計さんはにっこり笑って言いました。

 「グランドを走る彼に少々恋してました」

 面食らう教師とクラスメートを軽く無視して、元の場所へと視線を戻すと。
 グルグル周り終わった子供が、クラスメートと何か喋っています。
 ダラダラ走る皆守にまたも走り寄って行きます。

 そう遠くない先。
 あの背中はどこか遠くへ去るでしょう。
 世界はグランドでは無いから。
 走り去った背中はそのままです。


 それでも、そんな彼に少々恋しているのです。

 


 どうして九龍メンバーは放っておくと皆ポエムを吐くのか
 そんな感じで乙女神鳳。ちみっこ九龍
 神鳳はクラスで浮いてると嬉しいです。と言うか授業出てなさそうですよね、生徒会メンバーは
 
 グランドぐるぐるネタはミスフルでも書いたような気がしますが、学生はグルグル走ってるのが良いと思います

 ちなみに地球は丸いので、神鳳を放って遠くへ行ったちみっこも、やがてはまた背中から飛びついて来ます
 ウチの神鳳ならば、そのくらい長い間も待ってる事でしょう

 しかし、神鳳といい、壬生といい、ウチの攻めはどうしてこう「待ち」の姿勢なのか・・・・
 受けがアグレッシブすぎるのかもしれません

 そして、書いておいて何ですが、恋とか愛とか、書くととても恥ずかしい