「エス」
「僕ははっちゃんにはいつも笑っていて欲しいんだ」
取手がそう言って笑うのを見ながら俺だったら
泣かせてみたい
と、そう思った。
九ちゃんのあの呑気そうな顔を、
小さな社会の絶対権力に睨まれて、
訳の解らない命のやり取りをしながら、
暗く冷たい地下の墓地で、
人より多くの<死ぬかもしれない可能性>を手繰りながら、
それでも毎日楽しそうに笑うあの顔を、
泣かせてみたい
と、そう思った。
本当の死の淵に立った時、
あいつはどんな顔をするだろう
安物の金メッキが剥がれ落ちるように、あの笑顔の下から別の顔が表れるのか
それとも、その中心の欠片まで変わらず光り続けるそんな生き物なのか
どこもかしこも輝き続けるそんな生き物なら、
このアロマの香りも、あの暗い墓も、
全部ぶち壊してすべてを解放してくれるんだろうか
俺も解放されるんだろうか
そこまで考えて、くわえたままのアロマが消えている事に気付いた。
火を点けるべきかどうか迷って、結局点けずにポケットに仕舞った。
そしてやっぱり
あの顔を
泣かせてみたい
と、そう思った
あいつはどんな顔して泣くだろう
子供のように泣くのか
大人のように泣くのか
昔聞いたおとぎ話のように
落ちた涙から何か産まれるのか
そのままあの場所の床に吸い込まれるのか
落とす涙も光るんだろうか
「あ、甲ちゃん発見!」
声のした方を見れば、いつもの間抜け面で九ちゃんが立ってた。
何がそんなに楽しいのか。
「・・・・・九ちゃん」
「んー?」
「お前と居ると俺はどんどん嫌な人間になる」
「・・・・何?何の話??」
「自分の胸に聞いてみろ」
言ってゴロリと上を向く。
そのまま空を見ながらフッと
泣かすのもいいが・・・・
粉々になるまで壊すのも、そんなのも良いかもしれないと
そう思った。
我ながら何という危険思想。
エルはLOVEのエル
エスはSのエス?
人の心の奥にある物
(映画「es」は途中まで観て、嫌な気分になったので断念・・・・)
ウチの皆守さんは独占力と嫉妬心が強い感じ
あと好きな子程いじめる派
そして結構病んでる人
九龍は今のうちに逃げた方が吉
まだ皆守とは戦ってないんですけどね
でも何となく戦う前に書いておきたい気がする
戦った後とやっぱり感覚は変わるんだろうか・・・・
と言うわけで上の皆守は(裏)皆守
あと、皆守の九龍の呼び方は「九ちゃん」で固定
なんて緊張感の無い・・・・
そう言えば皆主って王道ですよね
我ながら珍しい、王道に転ぶなんて
![]()