指導者のみなさんへ

 

「私の好きな木」の実践方法


自分が選んだ一本の木から、五感を用いて自然を学ぼう

私の好きな木は、木のあるところなら、どこでも実施できます。

できるだけ安全で、子どもたちが安心して自然と対話できるところなら、

学校でも、公園でも。

みなさんの地域でも、たくさんの「私の好きな木」を見つけてください。


校内や公園の樹木から「私の好きな木」を一本選び、四季を通じて継続観察してみよう!
観察した内容をもとに、気付いたこと・疑問・自分の考えを発表会を開いて発表しよう。

準備(1回の観察に必要なもの)/A5ケント紙(各自1枚)
バインダー(下敷き可)
色鉛筆、筆記用具
まとめに必要なもの/四つ切り画用紙(各自1枚)、原稿用紙
のり、はさみ、マジック等

ねらい

身近な自然である一本の木を、五感を通じて観察する力を養うことができる。
四季を通じて観察した内容を自分の力で分析し、今までの経験や知識を織り交ぜて
自分の考えを発表することができる。

本や教師や映像から学ぶのではなく、命ある一本の木から学ぶ楽しさ、自然から学ぶ楽しさを体験し、
総合的に学ぶ力を育てることができる。

方法と順序

A.春・夏・秋・冬の観察

1)中庭や公園で学習するときの決まりをみんなで考え確認する。
2)観察場所で、木の見方を指導する。

・木全体が観察できる場所と、近づいた場所とでは気付く情報が異なることを確認させる。

(異なる位置から観察することは大切である。
・木に近づき、触れ、細部を観察する。
(触れて初めて知ることが出来る情報がある。)
・木にもたれて静かに音を聞いてみよう。
(いくつの音があるだろうか、それはなんの音)
・木に集まる動物なども観察する。
・木のにおい、葉のにおいをかいでみよう。

3)観察した内容を鉛筆や色鉛筆を用いてカード(A5ケント紙)にスケッチし、記録する。

・カードに題名と日時、気温、天候、湿度などを記録する。
・気付いた内容や疑問に思った内容を木のスケッチの合間に記入する。
・木の気持ちを考えて記入する。
・私の感想を記入する。

4)木のスケッチが終わると、それをもとに感想文を書く。

木のことだけではなく、木と他の生き物との関わりについても考えが広がるように指導する。

B.4枚のカードをまとめる

1)四季の木を観察した4枚のカードを画用紙に並べ、「私の好きな木」をまとめる。

・題名と名前をしっかりと書く。気付いた事柄・疑 問・疑問に対する自分の考えを空所に書き入れる。1枚のカードではわからなかったことが、2枚のカードを比較してわかってくることもある。そんな内容も画 用紙の余白にまとめていく。自分が目・耳・手などの五感を使って観察した内容には自信を持って、自分の考えをしっかり書くことを強調して指導する。

・欠席など出カードが4枚ない生徒には、友達のカードや自分のカードを参考にして、想像でその季節のカードを書かせている。画用紙に1枚だけのカードを貼り、作品を完成させた生徒もいる。

2)完成した作品を見て、自分の木について原稿用紙に文章でまとめる。

3)クラスの中で発表会を行う。最初は班単位で、続いて班の代表が出てクラス全体で発表する。

・司会を生徒にしてもらい、自由な雰囲気で発表会を行うと楽しい。質疑応答の時間をとって意見交換を行うと、友達の考えの深さにびっくりすることがある。

C.「私の好きな木」展示会

クラスの発表では全員の発表が聞けないし、他のクラスの友達の作品も見られないので、
全生徒の作品展示会を行う。

大きな教室に作品を発表原稿とセットで展示し、多くの人の考えを知る時間にしている。

保護者にも案内を出して見てもらう。

D.指導の留意点

・指導者は、生徒達に木から学ぶテクニックを指導したり、楽しさがわかるように個々の生徒と木についての会話をするが、知識的な内容はいっさい伝えない。

・生徒が明らかに間違った事柄を考えていたとしても即座に否定せずに、自分の感性でじっくりと考える時間をとって、あくまでも木から学ぶ姿勢を大切にしていく。

・自分の思いを文章に表し、さらに声に出して表現することによって、その内容が生徒一人一人の小さな知識の一つになっていく。その過程として発表会を大切にしたい。

・この学習は毎年繰り返して続けていくことで生徒の考えが深まっていく。理科・選択理科・総合的な学習の時間・社会教育などに利用することが可能と思われる。