直線上に配置
聞
高 知 ニ キ
 タクシーの後部座席での会話をリークするについては、このホームページ「たね」の仲間の一人に言われた事がある。
 「君に話し掛けられた事ならまだしも、後部で客同士が話していたり、電話している事などを勝手に公開の場であるインターネットに載せてもいいのかい?職業上の倫理に反しないのかね?」大変まじめな正義漢としての発言であり、また旧友として、私の進退を案じてくれているからこその発言であった。「かまやしないさ。もしそんな自己規制をするくらいなら始めからホームページなんかに参加しないよ。個人の中傷や誹謗は絶対しないルールであり、それは守るが、書きたい事は書くさ。」と、強気に言ったものの、一回目のあの文章『聞』を読んでの彼の発言であり、「あの程度のことでも言われるのか。」というのが私の本音ではあったが、二回目に用意していた話が一回目よりもう少し過激であったからでもある。彼に影響されて結局それは書かなかった。弱気だからでなく、もう少し考えてみようと思ったからだ。そして、真実(それは私にとってという意味しかないのかもしれないが)に迫る記述は、事実のみの集積ばかりかフィクションであってさえも許されるという結論に達した。暇な運転手の夢想(妄想)も、時にはリークという甘い囁きにもなる事があり得るという事だ。ただし、虚虚実実の中に真実があると信じてのことでもある。
 さて、今乗り込んできたお客は、どこかの病院長らしい。行き先を告げたらすぐに携帯電話だ。「亡くなったんかぁ!急やったな。君もがんばってたからなぁ。残念やな。へぇ?。ところで処方は間違えてないやろな。どっかのあほが、Par a week.を Par a day.と、読み違えて患者殺しとったからな.かなんぞあんなん。うちは大丈夫やろなぁ。頼むぞ、ホンマに。」しばらく続くこの電話、これは作り話でしょうか、事実でしょうか?
 閑話休題。車を止めた時、サイドブレーキ(手動制動)をそのまま引くとガリガリギギギーと、いやな音がする。乗客に不快感を与えないために、私はそのまま引く事をせず、必ず先端のボタンを押しながら引いて、音をさせないようにしている。ところがどうしようもなく不愉快になったとき、乗客の降りた後で音をさせるときがある。ささやかながら、ストレス解消になるのだ。ガリガリギギギギギー…。弱い鼠の歯ぎしりみたいに。