壊れた水道の蛇口みたいに朝、あんなに降った雨もウソのように
昼からは、雲ひとつ無いドピーカン(快晴)になったある日のこと。
午後3時少し前、営業車で千代原口から物集女街道を北上中、
松尾大社前で4人の乗客を発見。
行き先は、「河原町五条まで」。
この日は売上成績がかなりよく、この段階で目標額に達成していたから
夕方7時の交代の時間までを考えると、望外の好成績になるはずだ。
思わず「ニンマリ」になるのも仕方が無い。
許されてもいいだろう。
男女2名づつの熟年4人様「毎度ありがとうございます。」
あいにく信号が赤でスタート出来ないけれど。
その時でした。
信号を無視して、南下してくる5台のゲンチャ(原動機付き自転車)
が私の方にゆっくりとだが近付いて来ました。
それぞれのバイクにはノーヘルメットのアホボン7人と
ケバイ少女3人が、2人づつに分かれて乗っている。
17才から18才と言った所だろうか。
私の営業車の屋根の上の社名入りの行灯(あんどん)を見てみなでニタニタしている。
いわゆる暴走族風のチンピラたちだ。
あれ!、乗客に道順を確認している私のすぐ横に一番近付いて来た
バイクの後部に乗った少年の手に
金属バットが握られている。
事もあろうか、そのバットで行灯を叩き割り、走り去って行った。
一瞬の出来事でした。
こういった騒動に慣れていないヤワな私は、
頭の中が思考停止に、つまり空白になる。
しかし、何も無かった事にして、目的地に向かおうと思う運転手に
助手席の熟年の男性が
「そこにポリボックスあるで、行こ、わしら全然急がへんから」
と、おっしゃる。
「よし、捕まえて貰おう。」
交番がすぐ横にあったのだ。
3秒で着いた。
ところが、こちらの「捕まえて貰おう」という思惑とは別で
3人いる警官はすぐに出動しようとしない。
手配もしない。
どんどんと、遠くに逃げていくのに。
これなら、「知らん顔で営業した方がよかった」と言う考えが
頭をかすめる。
私は、すぐに、お客に別の車を手配。
結局、役に立たない『被害届』作成に1時間かかって営業所に帰った。
会社では、行灯の損害費用は、「当て逃げ」扱いで
運転手持ちと言われた。
あの行灯、25000円である。
痛い。
またもや、「何も無かった」ふりで
「時間まで営業して稼いだ方がよかった」という考えが頭を埋める。
と、同時に
ものすごく腹が立ってくる。
誰に?
アホボンたちと、日本の警察に。
「電信柱にぶち当たれ!!!」とまで思う。
だが、これはすぐに否定する。
この考えはよくない。
こう言う考えでは、電信柱にぶち当たるのは当方になる。
さすれば、フェルナンデスは、この件を契機に
さらに大きな哲学者にならざるをえない。
誰も憎まず、天が与えし試練として受け止めて
狭い了見は捨て、広い心で
全てを許すのだ。
アハアハハハッハ、アハハハハハ。
笑って許そう。
がん細胞だって、ひとつ笑えば、ひとつ消えると言う。
こうむった不幸の種に思い煩うより
笑う事によって「福」を呼ぼう。
ひょっとしたら、幸福の美しい女神が
我が家の「門」に来ているかも知れない。
ピンポーン。

笑門来福〔笑う門には福来る〕
02/10/04