Winding Road

不審な影

09切り替えて、ジム戦

ヒワダジムのリーダーは虫タイプを使う。だから私は楽勝だとたかをくくっていた。
けれど、虫は意外に強敵だった。

「ああっ、バルト!」
ツクシのストライクが倒れたデルビルのバルトを一瞥する。ストライクは余裕たっぷりの様子だ。相性は良かったはずだ。それなのにバルトは負けてしまった。あの素早さにバルトがついていけなかったからだ。
「素早さならアリスだって!」
ピカチュウのアリスがボールから飛び出す。
「猫騙し!」
相手を怯ませてその隙に攻撃の予定だった。しかし、
「うそ、」
思惑通りアリスのボルテッカーは当たったがストライクは倒れない。アリスも驚いたらしい。ストライクの反撃への反応が遅れた。
「とんぼ返り」
ボルテッカーの反動で体力を削っていたアリスには堪え切れなかった。
アリスが弾かれて吹っ飛んでくる。
とんぼ返りは相手に攻撃してボールに戻るという技。ストライクがボールに戻ると次にトランセルが現れた。相手は虫ポケモンだ。炎、それから飛行にも弱い。
「ラスカ頑張って!」
ヤミカラスのラスカはあまり乗り気ではないらしい。だがぴりぴりした空気に少しずつやる気を出す。
ラスカはトランセルの後ろに回り込むと反撃に気をつけながら思い切りつついた。
固いトランセルと言えども攻撃は効いている。それに体力にも限りはある。決して無敵ではないのだ。
しばらくして、トランセルが倒れた。ラスカは嬉しそうに飛び回る。私も嬉しくなった。
けれどまだバルトは終わっていない。
「まだまだ、虫ポケモンは簡単には負けないよ」
ツクシが出したのは先程のストライク。
だが先程とは違う。アリスの攻撃でかなり体力は減っている。更にボルテッカーを喰らった時にマヒしたようだった。勝てるかもしれない。
「ストライクが痺れているうちに攻撃よ!」
ラスカは先程と同じ様にストライクの死角に回り込むとつついた。
ストライクが鋭いカマを振り上げる。けれどラスカはひょいとたやすく避ける。
「くっ、ストライクとんぼ返りだ」
「ラスカ思いっ切り高く飛んで!」
羽を持つストライクでもラスカ程は飛べはしない。
とんぼ返りは当たることなく、ストライクは再びボールに戻る。
次に出たのはコクーンだ。ラスカはトランセルの時と同じ戦法でじわじわと体力を削っていった。
「最後の1匹になっても虫ポケモンはしぶといよ」
三度目のストライク。もはや体力はぎりぎりの状態だ。気を抜かなければ勝てる。
だがそれが油断だったらしい。ストライクの電光石火が決まった。私もラスカも何が起こったか分からなかった。気づいた時にはラスカが倒れていた。
「どうしたの? 次のポケモンは?」
残っているのはワニノコとリオル。どちらもやる気満々だけれど不安になる。ええい、やってやる。
「ダイン、思い切りやってしまえ」
ワニノコのダインはボールから飛び出すとそのままストライクに噛み付いた。そういえばハヤトさんとのバルトでも似たようなことやっていたっけ。
ストライクは最後の力を振り絞ってダインを振り落とそうとするが叶わない。他に興味を引くものがなければダインは離れない。そしてついに、
『いだっ』
ストライクが倒れ、ダインはお尻を地面にぶつける。
それで飽きたのか、ダインはストライクから離れるとバルトフィールドの中をぐるぐる走り出した。
「か、勝った……」
力が抜けてへなへなと座り込む。そんな私にツクシはにっこりと笑いかけた。
「君、ポケモンに詳しいんだね。このバッジを持って行ってよ!」
受け取ったのはインセクトバッジ。
私、ジムリーダーに勝てたんだ。
次は、コガネシティだ。

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