ハイパーボールを空高く投げる。
それをキャッチするとまた放り投げた。
何回もそれを繰り返し、最後に腰へ戻した。そして屋根に腰を下ろした。
此処からだとエンジュの街がよく見える。エネコがニコニコしての膝の上に座る。
小さな時から一緒にいるエネコは今でもの大切なパートナーだ。
「危ないよ、」
顔を上げるとマツバが立っていた。
彼のゲンガーが挨拶するように舌を出した。エネコも尻尾を振って挨拶する。
「そのボール、新しい仲間かい?」
「うん」
腰のハイパーボールをマツバに渡す。
彼はそれを投げる。赤い光と共に新しい仲間が現れた。その姿にマツバの目が大きく見開かれる。
「君は、とんでもないトレーナーだね」
深海の神は空高く飛び上がる。その姿をじっと見つめていたマツバは、膝の上のエネコを優しく撫でるを見た。
始めこそ、どうしてホウオウが彼女を選んだか分からなかったが、今ならよく分かる。
「、」
隣に座り、その体を抱きしめる。頬を赤く染める様子が可愛いらしく、頬に唇を落とす。
驚いたがマツバを見る。
「うずまき島にはいつ行ったんだい?」
「先週。あ、ミナキさんに会ったの」
「そう」
「やっぱりスイクンを探してたわ」
「スイクンは、捕まえないのかい?」
「そんなの……、ミナキさんに申し訳ないよ」
そう言っては立ち上がる。いつの間にか戻って来ていたルギアを撫でる。ルギアは嬉しそうに目を細め、再び空へ舞う。エネコがその背中に飛び乗り、ゲンガーも後を追う。
楽しそうだな、マツバはその光景を眺めながら微笑んだ。
「、ホウオウを捕まえられた時の僕の気持ちを知ってるかい?」
「えっ、」
「すごく悔しかった。憎いとすら思ったよ」
がはっとして視線を床へ落とす。
「でもね、」
優雅に空を飛ぶルギアに視線を向けたまま、マツバは続ける。
「だからホウオウは君の仲間になったんだ、って今なら分かる」
「えっ?」
マツバは彼女の腰にあるもう一つのハイパーボールを投げる。
中から金色の羽を持つホウオウが羽を広げ飛び出した。
が慌ててボールを取り返そうとする。けれどマツバはボールを自身のゲンガーへ投げ渡した。
ルギアから離れていたゲンガーはそれを受け取るとニヤリと笑ってホウオウを追った。
「2匹とも飛んでいたら街の人が驚いちゃうよ」
「いいじゃないか、別に」
「そんな」
「ねぇ、」
「な、なに?」
「愛してるよ」
そう言って、返答に困る彼女を抱きしめた。
トワイライトの恋心
黄昏の空をホウオウが舞う。宵の中をルギアが泳ぐ。
マツバは2匹から愛しの彼女に目を向けた。
いつか彼女は自分の傍を離れるだろう。
その時に笑って送り出せるように、この風景を焼き付けた。 |