「桜の木の下には死体が埋まっているんだよ」
「あぁ、それは」
「だからあんなに綺麗なの」

花びらが風に舞う中、は小さく呟く。隣に立つランスに話すでもなく、ただ、漏れた言葉だった。
桜を映した春の瞳に、ランスは問いかける。

「まさか誰か埋めたのですか」

一段と強い風が満開の桜から花びらを奪う。

「遠い昔、ね」

私は私をころして埋めたのよ、桜の木の下に。
目を細め、何かを懐かしむ仲間にランスは足元に拡がる櫻の根を見つめた。
 

 

 


「くだらない」
「確かに、くだらないことだね。
でも、桜の木の下に私が眠っているのは確かなことなの」

はは髪についた花びらを取ると風に流す。それは多くの花びらに交じり、そして流れの中に消えた。

「さぁ、桜が散ってしまう前に仕事を終わらせましょ」
「そうですね」


二人が去った後、ひらひらと舞い落ちた桜がその根を隠した。