ヴェガに憧れて01 |
She gives me a lot of things to take...
「ねぇランス君、チョコが食べたいなぁ」 時計を見ると3時まであと30分程だ。ランスは自分の上司の要求に渋々応えることにした。
「コガネデパートにある、いつものお願いね」 届けに来た書類を机に置くと、ランスは直ぐさま部屋を出た。
午後3時、は机の書類の上にランスの買ってきたチョコレートを広げていた。それは彼女のお気に入りであり、ランスが買って来ることが日常となっていた。
「紅茶もどうぞ」
ランスから紅茶を受け取り、一口飲む。 「さすがランス君、素敵ね」 チョコレートを食べる上司は部下を褒め、褒美を与えることにした。
「今度の任務、ランス君にも行ってもらうわ」
ランスは見透かされた目論見に返す言葉がなかった。 「まぁ、当然よね。下心ないと親切なんてしないわよね」
私たち悪の組織なんだから。はにっこりと笑う。
「そうだ、これを届けて来てくれるかしら」
受け取った書類には赤のペンで何かが書かれている。見るつもりはなかったが目に入ってきたそれは、大きな字で『却下』と書かれていた。
「これだから贔屓上司は嫌なんだ!」 今ランスの前で怒りをあらわにしているのはクロウという男だった。ランスの先輩であり、しかしランスが相手する程の力を持っていない男でもあった。 「気に入った部下ばかり使いやがって・・・クソッ」
ビリビリと書類を破ったクロウはランスを睨み付ける。 「いいか、お前もいつか捨てられるからな!」
そんなことはない。ランスは確信を持って言い返すことが出来た。
「では失礼します」
苛立ちの混じる声に辟易しながらも立ち止まれば、鳩尾に拳を喰らう。 「お前も調子乗ってたらこんなんじゃ済まねぇぞ」
まさに悪役らしい台詞に、苦痛に呻きながらも笑う余裕があった。
「任務の報告書を持って参りました」 ドアを開けるとランスの上司は机で突っ伏していた。居眠りなんぞ珍しい、と近付いてみると様子がおかしいことに気が付いた。 「、さん・・・」
声を掛け、体を揺すった。しかし返事は何もない。
ランスは夢を振り払うように支度を急いだ。 |