「、アンタは頑張ったと思うわよ」 ガーディを従える彼女が、私の肩に手を置いた。
ロケット団ラジオ塔占拠1時間前、私は彼と向き合っていた。 「この作戦が成功すれば、いや、どうであろうと貴女に自由を与えましょう」 私は前にも聞いたその言葉に小さく頷いた。ロケット団の幹部である彼は小さく笑い、しかし直ぐさま普段の表情へと戻した。 「後のことはパーラに任せてあります」 後ろに控えていたパーラがランスの言葉に頷く。その顔はいつになく真面目で、いよいよ作戦が始まるのだと告げている。 「行くわよ、」 拳を固め、私は歩き出した。
パーラが私を連れて行った場所はラジオ塔にすぐ近い路地だった。私は腰に付けた2つのボールを何度も確認し、深呼吸を繰り返した。 「アンタにあげれる時間は少ないから、ちゃっちゃと済ませなさいよ。逃げるのが遅れたらアンタも捕まるから」
帽子を目深に被っているからパーラの表情は伺えない。それでも、彼女も緊張しているのは声の調子で分かった。 「幸運を祈ってる」 私たちはそれぞれに決意してラジオ塔へ向かった。
ラジオ塔に入ると、そこは既にロケット団に占拠されていた。ロケット団で溢れているそこは、私のような部外者が紛れ込んでいても咎められることはなかった。 「………何の、用ですか」 ランスが驚いた顔で私を見つめた。私はその瞳を見つめ、否、睨み返した。 「あなたを、倒します」 あの子のボールを掴み、彼も同様にボールを握るのを待った。 「私、勝ちます」 震える手でボールを投げた。光とともにランスが現れ、砂嵐が起こった。 「な、に……!」 ゴルバットの前に立ち塞がるのは小さなヨーギラスではなかった。そこにいるのは大きな体のバンギラス。 「……私は、」 バンギラスのランスをボールへと戻す。そして出したポケモンはユンゲラーだった。貰ったケーシィも短い時間の中で何とか育てていたのだ。 「私は、」 マタドガスも倒れ、ランスは壁に寄り掛かるように崩れ落ちた。 「知っていましたよ」 貴女の下らない企みなんて、全て。瞳に光を宿したまま、ランスが呟いた。
「でも、私ではなくアポロを倒すためだとばかり思っていました。 深呼吸を一つ、そして私は口を開いた。 「ランスさんに、抜けて欲しいんです。 ふとパーラの言葉を思い出した。
「あぁ、貴女はそんな事を考えていたのですか。奇遇ですね、私も似たようなことを考えていましたよ。 ただ。
「、アンタは頑張ったと思うわよ」 ガーディを従える彼女が、私の肩に手を置いた。 「あれから幹部の行方は分からないからねぇ、まぁ、気晴らしに散歩でもしたらどうかしら」 パーラのガーディがワンと尻尾を振って鳴いた。 「コイツも連れて行ってやってよ」
アタシはもうしばらく此処にお邪魔してるから。クッキーを頬張りながらパーラがもごもごと喋る。私はキラキラと目を輝かせるガーディの期待を裏切ることは出来ず、散歩に出掛けることにした。 彼とあの子と私
原っぱの人気の少ない場所に腰を下ろした。 「ガゥッ」 突然だった。 「ま、待って!」 妙に騒ぐ鼓動をおさえ、ガーディを追った。 「すみません」 慌ててガーディを捕まえて引きはがす。けれどガーディは渾身の力でその人にしがみついている。 「ガーディ、おすわり」 ようやく離れたガーディを優しく撫で、改めてその人に向き合った。 「あ、なたは」 行方知らずの、彼だった。
ただ。 |