ラジオ塔占拠、それが行われるのが丁度1週間後だった。
きっとそれが彼の言った『ロケット団総員がかりの任務』なんだろう。
つまり、1週間後には。

「ランス、どうしよう…」
「ぐぎゃ?」
「間に合わないよ、このままだと」
「ぐぅ……」

ランスをボールに戻しベッドに倒れ込む。
こんなことならもっとしっかりと話を聞いておくべきだった。関係ない、なんて聞き流すんじゃなかった。
疲れた体でベッドに倒れ込んだからか、目を閉じると吸い込まれるように夢へと落ちていった。

 

 

 

夢の中で、私はあの人に会っていた。
懐かしいな、と思っていたらその人は闇に消えてしまった。ぞっとしてその場から逃げるけれど闇が私を追い掛ける。
もうダメ、諦めた時、彼が私の手を引っ張った。
闇が消え、辺りは花畑に変わっていた。
そこで私と彼は笑っていた。なんだかとっても幸せな気分だった。
すっ、と目を覚ますとすっかり暗くなっていた。
もうすぐ夕食の時間だ、まだぼんやりとする頭で明かりを付けるとソファに人影を見つけた。

「ランス、さん…?」

頭を垂れて、どう見ても寝ているようだった。どうしてここにいるの、一体いつからいたのかしら。疑問は浮かぶが彼は起きそうにない。

「ランスさん、ランスさん」

名前を呼ぶと微かに返事が聞こえた。でも起きた訳ではないらしい。
もう一度、今度は少し大きな声で呼ぶと体が動いた。けれどやっぱり起きない。

「疲れてるみたい」

こんなに呼んでも起きないのだ、ならこのまま寝かせてて良いのでは。
私は毛布を用意してそっと彼に掛けた。それから、座ったままだと疲れると思い、起こさないよう優しく体を押した。

「何だか……可愛い」

男の人に可愛いなんて変なのかもしれない。けれど、可愛いらしく見えて仕方がない。

「綺麗な顔……」

よく見ようと顔を近づけてみると、睫毛の長さや唇の形がよく分かった。
どれぐらい経ったのか、じっと見つめていると、ぱちりと目が合った。

「ひやぁっ」

驚いて慌てて離れると何かに躓いてこけてしまった。
たまらなく恥ずかしい、と顔を真っ赤にさせていると彼が手を差し延べてくれた。

「どうやら私は眠ってしまったようですね」
「は、はい…」

ランスの手を借りて立ち上がると再び目が合った。さっきまで眺めていたからか、いつも以上に胸が高鳴った。
気づいたら手を握ったままだった。私は慌てて手を離す。

「どうしましたか、
「なっ、何もない、です…」
「そうですか。 この数日、貴女は何をしているのですか」

彼が私に探るような視線を送る。気づかれないように、と思っていたけれど気づかれてしまった。

「それは、その…」

最後まで秘密にしなければならない。ここでバレてしまっては、ダメだった。
でも、上手な嘘も思い浮かばない。さぁ、どうしよう。

「……危険な事ではないなら何をしようともの自由ですよ」
「あ、危なくないです!」
「そうですか。なら、安心しました」

ランスが僅かに微笑む。
そうだ、どうしてこの人は私の部屋にいたのかしら。

「あの、どうして」
「用もなく、来てはいけませんか」
「い、いえ……」

一緒にいると心がほっこりと暖かくなる。それと同時に緊張して体が強張ってしまう。でも、出て行ってしまうと胸が痛くなるほど辛くなるから、ずっとずっと居てほしい。

「もうこんな時間ですか。 私は失礼します」

ズキン、胸が苦しくなる。
もう少しここにいて、お喋りしましょうよ。言葉が喉まで込み上げて、けれど声にならなかった。
私はぎこちなく笑い、しかし俯いてしまった。

「私達の悪事を目撃した貴女は、もっと勇敢な瞳だったというのに」

ぎゅっ、と熱が私を包み込んだ。
それはほんの一瞬のことで、私が顔を上げた時にはもう彼の姿はなかった。
 

とあの

 

あと1週間だから、自覚したくないのに。