「パーラさん、お願いがあります」 仕事で慌ただしく動いているパーラを何とか捕まえ少々無理のある願いを頼み込んだ。
「ただし、ランス様を心配させないよう、遅くまでいちゃダメよ」 そして私はあの人に秘密でそれを始めることにした。
夕食後、ランスのボールを磨いている時だった。コンコンとドアをノックする音と供にあの人の声が聞こえた。 「ど、どうぞ」 やって来たのはあの人、ランス。手にはライチュウドールが握られている。 「落ちていましたよ、井戸の中に」 私の心が読めたのか、彼は澄ました顔でライチュウドールを私に手渡す。パーラが手を突っ込んだ当たりには不器用な縫い目がある。 「ありがとう、ございます」 元気なあの子を見せようとボールに手を掛け、けれどはっとしてボールを腰に戻した。ランスが不思議そうに私を見たけれど無理矢理話を逸らした。
「あっ、あの、ランスさんはコガネデパートによく行きますか」 彼はきっと不自然な話の切り替えに気付いていただろう。けれど、何も言わなかった。 「美味しかったですか?」 思い付きで始めた話題だったけれど、美味しいと評判のロールケーキを食べてみたいとは前々から思っていた。けれど食べたいからこんな話をしたのではない。本当にただ、ふと思い付いただ。 「そうですか」 ふっ、と漏れた笑みは私をドキドキさせる。なんて綺麗な笑みなんだろう、とろけてしまいそうになる。 「また明日」 ランスがドアを閉めた。 「ぐぎぃ」 ランスをボールに戻し、私もベッドに潜り込んだ。
次の日、私が疲れた体を休ませていると元気なパーラがやって来た。 「昼間から風呂入ってたの、アンタ?」 ぽん、とテーブルに置かれたのはケーキの箱らしきものだった。開けろ、と促されるまま開けてみると美味しそうなロールケーキが入っていた。 「これって……」 パーラが綺麗に2人分切り分けお茶も手際良く用意する。そしてぱくりと一口、頬張った。 「やっぱり評判なだけあって美味しいわー」 ほとんど食べ終わったパーラは私のケーキを見る、一口も食べてないそれを。 「あ、どうぞパーラさん」 2切れ目を食べながらパーラが私をじっと見つめる。その瞳は何故だが嫌な汗を呼び寄せた。何だろう、これは。 「アンタ、惚れた?」 パーラが深々とため息をついた。何が面倒なんだ、何がどうだと言うのだろう。 「ラジオ塔占拠まであと1週間だってのに…」 彼とあの子と私
「ラジオ塔、占拠……?」 |