アテナさんの下で働くようになって3日過ぎた。
パーラは何とかすると言っていたくせに、ちっとも姿を見せない。もう、早く来てくれないかな。

「ぎゃあ」
「わっ、勝手に出ちゃダメ」

アテナさんに見つかる前に慌ててヨーギラスをボールに戻す。
手持ちポケモンはここで支給されるポケモンしか許されていない。だからヨーギラスが見つかると没収されてしまう。

「………あのケーシィ、どうなったのかな」

ふと、ライチュウドールの中に隠れていたケーシィを思い出す。今もパーラが持っているのだろうか。それとも、あの人に返してしまったかしら。折角だから仲良くなりたかったな、なんてぼんやりしているとアテナさんが帰ってきた。

、書類の整理ありがとう」
「いえ、それよりもとってもお疲れみたいですが」
「今、実験の最中なのよ」
「実験、ですか」

アテナさんは私の前では優しい笑顔を見せてくれる。
でも私は知っている。アテナさんもぞっとするような冷たい顔になることを。
今も一瞬、それが見えた。きっと、実験とはポケモンに害のある実験なんだろう。ぶるり、体が震えた。

にも手伝ってもらうわよ」
「えっ、」
「あなたも団員なんだから、当たり前でしょう」
「は、はい……」

早く早く早く!パーラは一体何をしているの!私は悪い事なんてしたくないのに!
アテナさんのポケモンを手入れしている時だった。ドアをノックする音が響く。そして返事も待たずにドアが開いた。

「元気にしてた?」
「パーラさん!」

やって来たのは待ちに待ったパーラだった。
私はずかずかと部屋に入ってくる彼女に掛ける言葉が見つからなかった。

「アンタをこっちの隊に異動させる準備が出来たのよ」

にやり、パーラはずる賢い笑みを浮かべた。

「ランスさまが最近すっごく不機嫌でねぇ」
「はぁ、」
「まぁ、アンタがこっちに来れば……」
「何してんの、パーラ」

振り返るとアテナさんがしかめっつらで私たちを睨んでいた。

「この子をうちの隊に異動しますねー」
「あら、どうして」
「うちの隊の女の子、使える子が少ないんで」
「ふぅん。でもチョウジの実験が終わるまでは無理よ」
「ま、まさかアテナさま!」
にも仕事してもらうのよ」

私は勿論、パーラも目を点にしていた。
しかしすぐさま立ち直り、 「その任務、アタシも手伝わせて下さい」 アテナさんに懇願した。

「あのねぇ、隊が違うのよ」
「ランスさまから許可取ってきますから!」
「………ま、パーラは頼りになるから丁度良いわね」

こうして、私とパーラはチョウジのアジトで仕事をすることになった。

私とパーラの持ち場はアジトの奥、つまりよっぽどのことがなければ侵入者なんぞと出くわすことはない。だから私もパーラも取り立てて緊張することも警戒することもなかった。

「あのケーシィってどうしましたか」
「あぁ、あれね」

はい、とパーラがモンスターボールを手渡す。
それはあのケーシィのボールで、私はそれをヨーギラスのボールの隣にセットした。

「アンタが持ってるように、ってランスさまが言ってたわ」
「そうなんですか」
「困った時にそれ使って逃げろ、だって」
「へぇ…」

あの人、私のことを心配してるのかしら。それとも面倒なことにならないよう気配りしてるのかしら。
パーラは暇そうに自分のボールを投げている。
ふと、パーラのポケモンは何だろうと気になった。やっぱりズバットだとかドガースなのだろうか。

「アタシのポケモン?気になるならバトルでもする?」
「えっ、それは」
「じゃあ教えないわ」

その時だった。
けたたましいサイレンの音がフロアに鳴り響く。隣のパーラが険しい顔で階段を睨む。
まさか。

「ここのサイレンが鳴るってことは、ここまで侵入者が来たってことか」

いつもの口調、でもその声はいつもより恐ろしい。
そして、

「覚悟しろ!」

ヤドンの井戸で出会った少年が再び私たちに襲い掛かってきた。

「にっ、逃げましょう!」
「時間稼ぎがアタシらの仕事なのよ!」
「いいから!」

こんなところでバトルするつもりなんてない。
私はパーラからもらったケーシィのボールを高々と投げ、場所も決めずにテレポートした。
 

とあの

 

「アンタ!」「いいから!」