恐る恐る目を開けると、そこは洞窟の中だった。
窓から見えた風景はどこかの街の郊外といった風で、どうして洞窟の中にいるのか到底理解出来なかった。

「な、なんで………」

理由がわからずオロオロしていると足元に見慣れぬポケモンを見つけた。

それは、ヤドンだった。

「ヤッ、ヤドン……!」

驚いて後退りしたらそこにもヤドンがいた。よく目を凝らせば辺りはヤドンだらけだ。
そういえばパーラが私にヤドンは好きかと聞いてきたっけ。
もしかして、もしかしたらここにパーラがいるのかもしれない。

「よし!
ランス、ここを探索してみよっか」
「ぎゃあっ」

 

 

ボールからヨーギラスを出して一歩を踏み出した。 しばらく歩いてみるとある異変に気が付いた。それは周りのヤドンにあった。

「ぎぃ……?」
「うーん、何でヤドンの尻尾がないんだろうね」

ランスと共に首をひねっていたらコツコツと洞窟に足音が響いた。
誰かいる、思わず岩陰に隠れると人影が現れた。

「………、侵入者発見っと。
ってアンタ!」
「パーラさん!」

目の前に現れたのは探していた人物、パーラだった。
まさか本当に会えるとは思っていなかったから驚いてしまったが、パーラは私の何倍も驚いていた。

「なんでアンタがここにいるのよ!」
「わっ、わからないです…」
「はぁ?」

 

 

「―――事情は分かったわ。今アジトに戻るのは危険ね。
でもかと言ってここにいるのもねぇ……」

パーラは髪をぐしゃぐしゃに掻き、必死に考える。しかし名案は生まれず、私も考えてみたが何も思い付かなかった。
こうなればあの人に事情を話すしかないのでは、と提案してみたけれど、パーラは青い顔で「いやいやいや、それはダメ!」と首を振るばかりだった。

「うー、困ったわねぇ。
にしても、子供じゃあるまいし、ぬいぐるみ抱きしめるの止めたら?」

その言葉で、私は今の今までライチュウドールをこれでもかと強く抱きしめていることに気が付いた。恥ずかしくなって力を緩めたらそれは腕の中からするりと抜けてしまった。

「……ん?それ、変な音がしなかった?」
「変な、音……ですか?」
「ノーチェックだったけど、もしかしたらこいつには」

パーラがライチュウドールを拾い上げ、針のように鋭い視線で調べ始めた。いたって普通のライチュウドールですよ、と私が言ってもまるで聞こえていないようだった。
そして、

「この中に何か隠したのね、ランス様は」

僅かな糸のほつれを目敏く見つけたパーラがニヤニヤしながら糸を解いた。
綿の中に手を突っ込み、隠されたものを取り出さんと躍起になっていたパーラは気付いていなかった。彼女の背後にある人物が立っていることに。

「お前たち、ヤドンの尻尾を切るな!」
「うぉっ!何よアンタ」

現れたのはまだ顔に幼さの残る少年だった。
少年はライチュウドールに手を突っ込んだパーラをキッと睨み付け、ボールからヒノアラシを出した。

「ぎゃあっ!」
「えっ、」
「まずはお前だな!」
「ぎゃぎゃあ」

ヨーギラスがヒノアラシに襲い掛かる。私が何も指示していないのに、どうして勝手に動くのか。

「ダメ!」

攻撃が当たる前に素早くボールに戻し、パーラを引っ張って少年から逃げる。
少年は私達を当然のごとく追い掛けてくるから必死で走った。
そして、

「ランス、穴を掘る」
「ぎぃっ」

ボールから再びヨーギラスを出すと洞窟から脱出した。

「アンタ!アタシが逃げたらランス様に殺されるでしょ!」
「そんなことより捕まる方が大変ですよ」
「アンタにとったらアタシ達が捕まる方が良いでしょうが!」
「………あ、」
 

とあの

 

「……は優しいのね」