何度も懲りずに挑んでくるトレーナーがいた。
名前は
初めて僕の前に挑戦者として現れた彼女は既にへとへとで、僕と戦う気力なんて全くないようだった。
それが今、僕のポケモンは全てちゃんに倒されてしまった。
僕はこの現実を受け入れるのに少し時間が必要だった。いつも彼女は僕に負けていたから。それが当たり前になっていたから。

まさか。そんなはずは。

思わずそんな声が漏れていた。いつかこんな日が来ると分かっていた割りに、自分はそれを受け入れることを拒んでいた。それでも、

「……おめでとう、ちゃん」

無理矢理言葉にして理解させるしかなかった。
ちゃんは呆然とバトルフィールドに視線を落としている。まだ信じられないのだろう。そうだろう、彼女は勝つつもりなどなかったのだから。
いつからだろうか、ちゃんは無意識に全力を出さずに戦っていた。その理由は分からない。しかし、このままを続けることは出来ない。
いつか気づくだろう、そう思って今まで戦っていたけれど、君は未だに気づいていないんだね。
今日、僕は全力で戦わなかった。そして君は勝った。

ちゃんおめでとう」

本当は、全力で戦わなくてもちゃんに勝てると思ってた。でも君は本当に強くなったね。

「あはは……、やっと私勝てたんだ」

ちゃんは笑っていた、無理をして。
何故だろう、僕まで辛くなる。チャンピオンなのに負けたことが辛いのか。それとももう君が。

「これから君はどうするんだい」

嫌な汗を感じた。
他の事を考えた。
そしてちゃんに尋ねたのだ。
ああ、けれどこの質問も僕を追い詰めてゆく。
ちゃんが口を開ける。何か言おうとしてる。それなのに

「違う地方に行ってみたらどうかな」

彼女の言葉を遮るように言葉を被せた。
今まで床に臥せていた瞳が僕を見つめた。

「そうしよっかな」

(始まる焉)

何も始まってなどいないのに、
終わりを感じるのは何故。
 

引き止める言葉がないから、受け止めるしかない。