「ダーイゴさんっ」

ノックして返事も待たずに入ってきたのは僕の大好きな
彼女は毎日僕に何かを作ってくれる。
もちろん、僕がやらせてる訳じゃない。僕は何度も断っているからね。
それでもは女神のような笑顔で「あたしが勝手に作りたいんです」とケーキやらクッキーを持って来る。

「ダイゴさん、また石探しに出て行っちゃうんですか!」

は僕がテーブルに広げた荷物を見つけて顔をしかめた。

「もう、石を探すのも構わないけどバトルもすれば良いのに…」

美味しそうなクッキーが僕に渡される。有り難うと礼を言って一枚食べるとにんまりと顔がほころんだ。
は、僕がデボン社長の息子だってことも、ホウエンチャンピオンだってことも知らない。僕が意図的に隠しているからだけど、全く気付いていない。
だから、僕のことは石集めの暇人と認識しているに違いない。

「今回は石探しの前に少し用事があるから、帰るのはいつもより遅くなると思うよ」

は僕の彼女ではない。もちろん、僕としては彼女にしたいけど、告白のタイミングがまだ来ない。
そんな訳で、ただのお隣りさんであるに僕の予定を伝えることは無意味だった。だって彼女が僕を待っているとは限らないから。
それでも、いつからか、僕はに予定を言うようになった。も、僕に教えてくれるようになった。
まるで恋人同士だ、僕は思ったけれど呑気なを前にその台詞は音になりそうになかった。これも、また今度にしよう。

「あたしも、出掛けようと思うんです」
「へぇ、何処に?」
「なんと!ホウエンリーグに挑戦するんです!」

の言葉に正直ドキリとした。僕の用事は正に挑戦者とのバトルだからだ。
いや、今回の挑戦者は男だと聞いてるからじゃない。でも、いつかも挑戦者として僕の前に現れるかもしれない。

「あたし、実はとっても強いんですよ」

自慢げに話すは、今やトレーナーの顔に変わっていた。
そうだ。

「じゃあ、もしが四天王に勝てたら、僕の秘密を教えてあげるよ」
「ダイゴさんの秘密?何だろう、すごく気になる!」
「なら、四天王に勝ってみてよ」
「うん、あたし頑張ろーっ」

が挑戦者としてチャンピオンの僕の前に現れたら、僕は言おう。
だから、早く彼らを倒して僕の前に現れておくれ。