「ダイゴさん、気持ち悪い顔しないで下さい」 「そんな他人行儀で言わなくても良いじゃないか。それにこんな顔にさせているのは、君が原因さ」 にへらっ、とご機嫌の笑みでテキパキと仕事をこなす彼はひどく不気味だった。彼のココドラが小さくため息を漏らす。私のルリリもダイゴには近付かないでいる。 「、」 「はい?」 「今まで僕はのことが好きだったけど、ポケモンが好きになったを今は大好きなんだよ!」 「…熱い想いをどうもありがとうございます」 「それでなんだけど」 ダイゴが引き出しから何かを取り出す。また何処かへ行こうと言うのか。 「バトルしようよ!」 「……はぁ?」 引き出しから出したのは彼のポケモンの入ったボールで、私は拒否する権利もなくルリリ共々エレベーターまで引きずられた。 エレベーターに乗り込んだダイゴは私を離さないと強い力で抱きしめる。エレベーターは他の社員が乗り込むかもしれないのに、そもそも逃げやしないのに。 「、今ドキドキしてるだろう?」 「してません」 「もう可愛いなぁ」 足元でルリリとココドラが私を見上げていた。その純粋な瞳に照れてしまって、私はダイゴを突き放して頬を膨らませた。 「バトルは、見たことぐらいはあるよね」 「う、うん」 実を言えば、ダイゴがチャンピオンの時に挑戦者とバトルしている様子をこっそりと覗いたことがあった。真剣な眼差しで、不覚にも時めいてしまった。今でもあの眼差しが忘れられないなんて、恥ずかしくて言えないけれど、出来るならもう一度見てみたいと思う。 「まずはポケモンをボールから出す」 言われた通り、ルリリのボールを投げるとルリリがボールから飛び出した。もうこの子には慣れたから怯えることはない。 「じゃあまずはから攻撃してみよっか」 「えっと、こ、攻撃…?」 たたかうためには技が必要なことは私も知っている。でもルリリがどんな技を使えるかなんて、そんなの知らない。 「そうだな、たいあたりとあわが出来るのかな」 ダイゴの言葉にルリリが大きく頷く。 「じゃあ…。ルリリ、たいあたり!」 ルリリがダイゴのココドラに向かって勢いよく走る。そして文字通り体当たりした。 「そうそう、そんな感じ!じゃあもう一度、やってみて」 再びルリリに攻撃の指示を出した。 ところが、 「ココドラ、かわせ」 ルリリのたいあたりを見事にココドラが避けてしまった。 「こんな風に相手の攻撃を避けることも出来るんだ。さらに反撃もね」 避けられて動揺するルリリ目掛けてココドラが体をぶつけた。加減してると分かるものの、痛そうにするルリリに悲鳴が上がった。 「落ち着いて、ルリリは大丈夫だから。 いいかい、要はトレーナーの指示次第なんだ。が上手に指示すればルリリは傷付かない」 ダイゴの言葉に私は頷いた。確かにそう、その通り。 私はルリリにたいあたりを指示する。ココドラがそれを避け、反撃に出る。今度は私もルリリに避けるように指示出来た。 ほっ、としているとダイゴと目が合った。 「!」 「な、何…?」 「今のすごくいい、すごくいいよ!」 感激しているダイゴは「さすが僕の恋人だ」だの「のあの眼差し、ぞくっとしたよ」だのとはしゃいでいる。その様子に、ルリリとココドラがすっかりバトルを止めてしまった。そして私も、流されてバトルをしたことを後悔していた。ポケモン嫌いを克服したんだから、それでいいのよ。別にバトルなんて出来なくて構わない。 それなのに、だ。 「、僕とダブルバトルの頂点を極めよう!」 「はぁ?」 ダイゴはいつも勝手に物事を決めて実行してしまうのだ。
four*自分勝手な悪魔
(「すごくいいよ」) |