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14th Future 「そして探り合い」
(・・・・)
その会話を聞いていたゆかりは、思わず声を出してしまうところだった。
薬局に向かう為に出雲家を出たのはいいが、具体的に何をどれだけ買うか聞いていなかったし、よく考えれば魔法で治療すればいい話だということに気付いたので、再び戻って来たというわけである。昼間に春也がゆかりを治療したことを思い出したのだ。
だが戻ってみると透子と迅雷が何やら真剣な声で話をしているので、つい聞き耳を立ててしまった。
(助けに行かないと・・・・)
ゆかりは外で待たせてある莉夜とあずみの方へ足を向けた。足音が聞こえないように魔法で少しだけ身体を浮かせる。これで足音は聞こえないはずだ。
「買う物、分かった?」
玄関先で待っていた莉夜が尋ねる。彼女とあずみはどんな種類の薬を買うかを聞きに戻ったと思っている。
「う、うん、行こうか」
取り敢えずゆかりは莉夜とあずみを連れて薬局に向かった。何も聞いていない振りをして、適当に薬を買って戻ることにする。
(でも透子は、ゆかりに行かせたくないって思ってる・・・・だって怖いもんね、ゆかりだってそう。でもあんなに傷を負ってるワンちゃんもだし、捕まったっていう芽瑠ちゃんだって、魅瑠さんも萌瑠ちゃんも、みんな心配。やっぱりミズチって人を「殺さずに助けたい」って言ったのはゆかりだし、今のイニシエートの状況はゆかりに責任があるもん。透子は止めるだろうし、巳弥ちゃんはイニシエートのことだから一緒に行くって言うかも。う〜ん、でももう巳弥ちゃんにはあの姿にはなって欲しくないし、透子も戦うのが嫌なら・・・・ゆかりももちろん嫌だけど、無理に二人を連れて行くわけにはいかないよ)
ゆかりは一緒に歩いている莉夜とあずみの方をチラリと見た。
(この子たちはどうするんだろ? 帰りたいって言ってたけど、今は帰らない方がいいと思っているから、お兄さんが迎えに来ないわけだし・・・・勝手に連れて帰ったら怒られるかな、ゆかり)
つまり、ゆかりの結論は「一人でイニシエートに行く」だった。
その結論が出た時、ゆかりの携帯電話の着信メロディが流れた。
「わ、何それ?」
莉夜が珍しそうに携帯電話を覗き込む。
「ケータイ電話だよ」
「ほえ〜、それ、電話なの?」
「あ、出なきゃ。後で説明するね」
通話ボタンを押す。表示窓には「ユタカ」と出ていた。
「もしもしユタカ?」
「今、いいか?」
「う〜ん、まぁ短い話ならいいけど」
「何やってるんだ? 今日も巳弥ちゃんの家に行くって言ってたんじゃないのか?」
「そうだけど、ちょっとお遣いに出てるの」
「買い出しか・・・・じゃあ手短にするよ。明日、体育祭だろ? 父兄とか行かなくていいのか?」
「家族で出る運動会じゃなくて、校内での行事だから。そういうのはないよ」
「そうか・・・・」
ユタカは明らかに残念そうな声だ。
「ひょっとして、ゆかりの父兄として出たかったとか」
「だってさ、親父さんに出てもらうわけにはいかないだろ? 誰か父兄が出なきゃならないんだったら、俺が行ってやろうと思って。明日は土曜で休みだし」
「女子中学生の体操服姿が見たいだけじゃないの?」
「・・・・」
「お願いだから否定して・・・・」
「そ、そんなことはないぞ」
弱々しい否定だった。
「それは置いといて、日曜のことだけどな」
都合の悪いことを横に置き、ユタカは話を変えた。
「どこで待ち合わせるか言ってなかっただろ」
「日曜? はて」
「しらばっくれるな! デートだって言っただろ」
「覚えてるけど・・・・」
明日の体育祭。
明後日のユタカとの約束。
イニシエートに行ったとすれば、いつ戻って来れるのだろう。イニシエートの内紛は、すぐに決着の着くものではないだろうということは予測出来る。とすれば、イニシエートに行くということは、明日の体育祭はもちろん、日曜のユタカとの約束を破ることになる。
(ユタカとはいつでも会えるよ。でも、イニシエートではみんなが危ないんだし、一刻を争うかもしれないし・・・・)
「ね、ねぇユタカ、もし、もしもだけど、万が一、日曜日、ゆかりの都合が悪くなったらごめんね」
「ん? 何かあるのか?」
「な、ないけど、万が一だってば」
ユタカにイニシエートに行くことを言うわけにはいかない。心配をかけるということもあるが、ユタカなら一緒に行くと言いかねないからだ。
「まぁ急に都合が悪くなったら仕方ないけど・・・・俺とデートしたくないんじゃないよな?」
何故かいきなり声のトーンが思い切り下がるユタカだった。
「ち、違うよ、多分」
「多分って言うな!」
そんなこんなで電話を切ったゆかりは、ケータイを珍しがる莉夜に簡単に携帯電話の説明をして、薬局に向かった。
(・・・・)
透子と迅雷の会話を盗み聞きしていた者は、もう一人いた。いや、もう一匹か。
(アイツハ・・・・)
巳弥の祖父と共に行方不明になっていた鷲路憂喜の鷲「蒼爪」。彼の気が付いた場所は、川に落ちた所からかなり川下の川原だった。
そこに巳弥の祖父の姿はなかった。溺れ死んだかとも思ったが、自分のように助かっていることも考えられると思い、重症の身体を引きずって出雲家にやって来た。だがそこには探していた者の姿はなく、代わりに見知らぬ青年と藤堂院透子がいた、という訳だ。
(イニシエートナノカ・・・・)
蒼爪は身に付けた読唇術で、迅雷がイニシエートであることを理解した。
(アノジジイガイニシエートデ、ソノ仲間ト言ウ訳カ。イニシエートノ危機ニ、藤堂院透子等ニ助ケヲ求メテ来タ・・・・彼女達モ、イニシエートト親シイトイウノカ・・・・ダトシタラ、由々シキ事ダ。マスターニ知ラセナケレバ)
傷付いた翼に鞭を打ち、蒼爪は出雲家の庭から飛び去った。あいにくここには、巳弥の祖父のように蒼爪の気配に気付くような者はいなかった。
傷付いていたとはいえ、蒼爪の飛行能力にかかれば出雲家から憂喜らの住むマンションまでは、ほんの一分足らずの距離だった。
「ん?」
「くだらない」と言いつつもニュース番組を見ていた憂喜が、ふいに窓の方へ目をやった。
「どうした、ユーキ」
春也の声が聞こえてるのか否か、憂喜は窓に駆け寄りカーテンを開けた。
「蒼爪!?」
鍵を外して窓を開けると、ベランダには満身創痍の蒼爪が翼を拡げたまま倒れていた。憂喜は慌てて蒼爪を助け起こす。
「蒼爪!」
「・・・・マスター・・・・」
「今までどこに行ってたんだ!? この傷、誰かと戦ったのか? あの校長か?」
「憂喜君、まず治療してあげたら?」
続いて咲紅がベランダに出た。
「・・・・そうだな、頼む」
「はいはい」
咲紅は蒼爪の上で両手を拡げると、目を閉じて何かを念じた。光が集まり、蒼爪の体を包む。昼間に春也がゆかりに対して使用した治癒魔法と同じだった。
「魔法の成績は凄いのに、治癒だけ苦手だもんね、あなたのマスターは」
「苦手なだけだ。君の方が得意だから頼んだだけで、使えないわけじゃない」
「はいはい、負け惜しみはいいから。さ、治ったよ」
自分の体を包んでいた光が収まると、蒼爪は自分の脚で立ち上がった。
「恩ニキル、サク」
「どういたしまして」
礼を言う蒼爪に対し、咲紅が大袈裟に頭を下げた。
「落ち着いた所で、今までのいきさつを話せ、蒼爪」
「まぁそう急かすなよ、憂喜。こっちへ来て座ったらどうだ?」
と椅子を引く春也だが、またまた無視される。
「マスターニ急イデ伝エル事ガアリマス」
「何だ?」
「アノ校長ハ、イニシエートデシタ」
「何だと」
「イニシエート!?」
憂喜だけでなく、咲紅と春也も同時に驚きの声を上げた。
「只者ではないと思ってはいたが・・・・」
「ソレニ・・・・」
蒼爪は校長が憂喜らのことを巳弥に話そうとしたので戦ったこと、揉み合った末に川に落ちたこと、校長の行方は不明だということ、先程出雲家で聞いたことを憂喜に話した。
「藤堂院透子とイニシエートが・・・・? 混乱を沈めるために藤堂院さん達がイニシエートに行くと言うのか?」
思わず立ち上がる憂喜。
「あの子達がイニシエートと繋がっていたなんて・・・・憂喜君?」
「行くぞ、出雲家へ」
そう言いながら、憂喜は玄関へと向かう。
「ちょっと待って、どうする気?」
「イニシエートの仲間だとすれば、魔法の悪用どころの騒ぎではない。その時点で僕達の敵だ。そうだろう?」
「待てよ、ユーキ。そう決め付けるのは早いぜ」
春也はシュークリームを持ったまま憂喜の後を追って玄関まで走ってきた。
「落ち着けよ」
「僕は落ち着いている。君の方こそシュークリームを持ったままじゃないか」
「どうしようって言うんだ? まず本当にあいつらがイニシエートの仲間かどうか確認するべきじゃないか」
「蒼爪は嘘をつかない」
「嘘だなんて言っていない。自分の目で確かめろって言うんだ!」
聞く耳を持たない、と言う風に憂喜は靴を履き、玄関ドアを開ける。
「・・・・イニシエートは僕達の敵だ。その仲間も敵だ」
「待てって!」
春也が憂喜の腕を掴む。
「離せ、澤崎」
「俺たちの目的は何だ? この世界の人間が魔法を正しく使えるかどうか、それを確認するために来たんだろう? 世界の秩序を監視するオブザーバーになるためのテストを受けに来たんだろ?」
「イニシエートはこの世の悪だ。それを排除するのは正義だ。僕達エミネントがイニシエートのせいでどのような仕打ちを受けたか忘れたのか」
「忘れたとか覚えてるとかいう問題じゃないだろ、ずっと昔の話だ。そういう歴史があったと教えられたに過ぎない! 今の俺たちがイニシエートを憎むのは何かおかしい、そうは思わないか?」
「・・・・澤崎、君はやはりもう一度最初から教育を受けた方がいい。蒼爪」
憂喜の言葉で、蒼爪が春也の頭目掛けて襲い掛かる。
「うわっ、や、やめろ!」
蒼爪は本気で攻撃しているわけではないが、それでも鋭い爪が頭をかすめるのは恐ろしい。春也が掴んでいた腕を離すと、憂喜は両手を合わせて呪文を唱え始めた。
「空間転移・・・・お、おい、やめろ蒼爪!」
蒼爪は春也の邪魔をやめない。その一瞬後、春也の目の前から憂喜の姿が消えた。
「くそ、俺が転移魔法を使えないからって・・・・おい咲紅、ユーキを止めてくれ!」
「どうして?」
「どうしてって・・・・お前もユーキと同じかよ」
咲紅は名残惜しそうに机の上のシュークリームを見詰めてから靴を履いた。その肩に触角付きハムスターの「モコ」が飛び乗る。
「少なくとも、イニシエートを敵と認識している点では同じよ」
「今のユーキは何をするか分からない、早くあいつを追わないと! 咲紅、連れてってくれ!」
「無理よ、自分だけなら転移できるけど、ハル君を連れたら質量が倍以上になるじゃない」
そう言いつつ、咲紅も空間転移魔法を唱える。
「俺を放って行くのかよ! おい咲紅、まさかお前もゆかりん達を・・・・」
「憂喜君を止めるかどうかは私が決めるわ。春也君はどうするの?」
春也の答えを聞く前に、咲紅の姿も消えた。
「どうするって・・・・走るんだよ、畜生!」
エレベーターを待つのももどかしく、春也はマンションの階段を駆け下りた。
(何で俺、こんなに必死になってるんだ? 分からねぇ、分からねぇけど、今はユーキを止める、止めろと俺の心が言っている!)
何もなかった空間に、突然人の形が形成された。
「・・・・しまった、つい」
憂喜は慌てて辺りを見回し、誰も目撃者がいないことを確認して安堵した。ここは出雲家の前の一般道である。幸い辺りは暗くなってきており、歩行者もいなかったので憂喜の空間転移の瞬間を目撃した者はいなかった。誰かに見られていれば面倒なことになっていたが、憂喜の生まれた世界では誰もがすることなので、ついいつもの調子でやってしまったのだ。彼は浅慮な自分に反省した。
(ここにイニシエートが・・・・)
やはりこんな遅い時間では、薬局は閉まっていた。
「閉まってますね」
薬局の入り口には「本日は閉店しました」という札がかかっていた。
「叩けば開けてくれるかなぁ」
莉夜がシャッター目掛けて拳を構えたので、ゆかりは慌てて止めた。
「り、莉夜ちゃん! いいよ、そこまでしなくたって!」
「だって、お薬を買って帰るんでしょ?」
「だけど・・・・」
辺りの店ももう閉まっていて、シャッターを叩くとかなり迷惑な雰囲気だった。その閑静な商店街に、タタタと誰かの走ってくる音が響いた。そして・・・・。
「ゆかりん!?」
その音の主は、ゆかりの姿を見て立ち止まった。
「さ、澤崎君じゃない。こんな時間にジョギング?」
「何でこんな所にいるんだ!?」
「何でって・・・・」
「出雲巳弥の家に、イニシエートの男が来てただろ!」
「な、何で知ってるのよ!」
「イニシエートに行くのか? 助けを求めて来たんだろう? やめとけよ、行くなよ、絶対に行くな!」
「ちょ、ちょっと、いきなり言われても何のことだか分かんないよぅ」
両肩を掴まれ、早口にまくし立てられてゆかりは慌ててしまった。
「俺はユーキを止めにいかなきゃならねぇ、案内してくれ!」
「ど、どこに?」
「出雲巳弥の家だよ!」
「止めるって、何のこと!?」
「説明してる暇はないんだ! あいつらは空間転移したんだぞ! 俺は走ってるんだ! こうしてる内にも、あいつらは・・・・ええい、取りあえず早く案内しろ!」
「だから何で!?」
「悪かったな、いきなり来て」
迅雷は出雲家の風呂場にある異次元ゲートの前に立った。
「こっちこそ、お役に立てなくて」
その迅雷を見送るため、透子も風呂場に来ていた。
「いや、怪我を治してくれて助かった」
「元気でね」
「もう会えないかもしれないけどな」
「ちょっと、縁起でもないこと」
「・・・・じゃあな」
イニシエートの王の座を奪い返そうとするミズチに力を貸す者が予想外に多く、迅雷らの抵抗勢力は若い紅嵐が筆頭という、心もとない顔ぶれだ。おまけに水無池芽瑠がミズチ派に捕まり、人質になっている。ミズチは芽瑠と引き換えにマジカルアイテムを欲しているという。かつて自分が敗れたその武器を手に入れることで、脅威をなくそうというのだろう。マジカルアイテムを渡さなければ、芽瑠はどうなるのだろうか。そして紅嵐達はミズチ派に勝つことが出来るのだろうか。
透子としても、彼らのことを「関係ない人」とは言えない。ゆかりが思っているほどではないが、友達であり、仲間でもあると思っている。だが・・・・。
「勘違いしないで、迅雷君。あたしたちは確かにミズチを倒した。でもそれはマジカルアイテムを犠牲にしてまで戦った結果、たまたま勝ったに過ぎないの。しかも今度は相手の懐に入っていくわけでしょう? かなりの数の敵がいるだろうし、人質もいる。あたしもゆかりも巳弥ちゃんも、ヒーローアニメみたいに修行してるわけじゃないから、それこそ今度は捨て身でも勝てる気がしない」
「・・・・悪かったよ。俺たちの問題だもんな」
「あたしだって、余裕で勝つ自信があったら助けに行ったよ」
「お前らしいよ。ゆっくりしていられない、帰るぜ。巳弥によろしくな」
巳弥はお湯を沸かした後、「何か食べる物を」と台所に篭っていた。迅雷はその料理が思い切り名残惜しく後ろ髪引かれる思いだったが、透子に急かされてしぶしぶゲート前まで来た。
「ゆかりには『巳弥ちゃんの顔を見に来ただけ』って言っておくから」
「傷だらけでか?」
「巳弥ちゃんに会ったら癒されるでしょ」
「む・・・・」
迅雷は赤くなった顔を隠すように風呂場の空間にモヤモヤと存在するゲートに足を踏み入れ、透子に対して後ろ向きのまま手を振った。
「ゲートは後でちゃんと閉じてね」
「・・・・あぁ」
一度作ったゲートは、ゲート発生装置を操作しないと消すことが出来ない。よってこの場合、迅雷がイニシエート側に帰ってから発生装置を止める必要がある。
迅雷の姿がゲートの中へ消えると同時に、出雲家のチャイムが鳴った。
おじいちゃんかな、と思った巳弥だが、それならわざわざチャイムは鳴らさない。御遣いに出ているゆかりたちだってそうだろう。
「はぁ〜い」
パタパタとスリッパの音を立てて、巳弥が玄関に向かう。最近は物騒なので警戒しながら戸を開けると、見覚えのある顔がそこにあった。
「夜分遅く、失礼」
鷲路憂喜が軽く頭を下げる。
「はぁ・・・・」
何をしに来たんだろうと巳弥が図りかねていると、廊下の奥から透子が顔を出した。
「あ・・・・えっと」
「鷲路憂喜だ」
「あ、そうそう、鷲路君・・・・こんな時間に何?」
「客人が来ているはずだが、お会いしたい」
「客? あたしのこと?」
「違う。男が来ていたはずだ」
「男の人?」
(どうして迅雷君が来てた事、知ってるの?)
迅雷は一度も外には出ていない。にも関わらず、鷲路憂喜は男がこの家にいたことを知っている。覗いたのか、それとも迅雷の持つイニシエート特有の「妖気」を感じたのか。どちらにしても憂喜は友好的な態度ではない。迅雷を知っているのか、どんな関係なのかは知らないが、とにかく迅雷に早く帰って貰って正解だったと透子は思った。
「男の人なんていないわよ」
「何食わぬ顔で嘘をつくのはやめて欲しい」
「じゃあ、家捜しでもしてみる?」
「・・・・その顔と言い方から察するに、もうここにはいないということか・・・・」
「あの・・・・何か用ですか?」
巳弥が蚊の鳴くような声で問いかける。
「・・・・」
(出雲巳弥・・・・確か蒼爪によると、あの校長がイニシエートだと言うことだが、とすれば孫であるこの出雲巳弥もイニシエートの血を引いているということなのか?)
自分を見る憂喜の目が鋭くなり、巳弥は思わず後ろに一歩下がった。
「用がないなら、帰って」
毅然とした態度で透子が言うと、鋭い視線は透子に向いた。
「ここにイニシエートがいたのは分かっているんだ。君達とはどういう関係だ?」
「!」
(どうして鷲路君が、イニシエートを知ってるの?)
15th Future に続く
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