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タイトル


 2nd Future 「蒼い瞳の転校生」


「やっぱり来てないって、大河原先生」
 休み時間、ゆかり、巳弥、タカシは校長室に情報収集に行っていたこなみの報告を受けた。
 タカシは本名・生田(いくた)崇。こなみは本名・芳井(よしい)こなみ。2人も昨日はゆかり達と共に戦って疲れが溜まっていた。
 マジカルアイテムを拾得して無断使用し、ゆかり達と戦った者で学校に来ていない者は二名。巨大ロボットを作り出して操った教育実習生の大河原光は、魔法の使い過ぎで精神的にダメージを受け、現在入院中。意識は戻っていないと言う。もう一人は一年の村木卓で、タカシにエロ攻撃を仕掛けたことでこなみの逆鱗に触れ、二人にボコボコにされてこちらは全身打撲で入院中。まさか魔法でやられたとも女の子にやられたとも言えず、通り掛かりの不良グループに暴行を受けたということにした。村木の事に関してはこなみも「ちょっとやり過ぎた」と心を痛めていた。タカシに言わせれば村木の怪我は「自業自得」なのだが。
 ゆかり達と敵対した後の二人は、先ほど謝りに来た。笠目要はヒーローになりたかっただけであり、倉崎命人は最後にゆかり達の側に立って大河原と戦ったので、マジカルアイテムさえ返って来れば、これ以上彼らと憎み合う理由はない。
 始業時間が近づくに連れ、教室に生徒が次々と入ってくる。その中に転校してきたばかりの二人の姿もあった。
 巳弥は転校生の一人である桜川咲紅(さくらがわ さく)の視線に気付き、会釈した。相手も少し驚いた表情を見せた後に会釈を返してきた。
(やっぱり私を見てる)
 巳弥は咲紅の自分を見る視線が気になっていた。彼女の目が青いこともあるが、転校してきた時に誰かを探すような目の動きをした後に自分を見たこと、教室に入るなり自分の姿を捉えたことに無意識ではない何かを感じる。
 咲紅の席は巳弥の後ろだ。咲紅は巳弥の横を伏せ目がちに通り過ぎ、椅子に腰掛けた。手提げ鞄を開き、一時間目の授業の用意を始める。この後十分間のホームルームの時間があるのだが、既に咲紅の机の上には教科書とノート、それに筆箱が並んだ。
(澤崎君は?)
 巳弥はもう一人の転校生、澤崎春也(さわざき はるや)に目を向けた。
「おっす、ゆかりん」
 ゆかりは後ろから肩を叩かれ、振り返った。
「え? えっと・・・・」
「澤崎春也だ、覚えてくれよ。ハルヤでも、ハルでもいい」
「そうじゃなくて、ゆかりんって」
「そう呼ばれてるだろ? だったら俺もそう呼ぶ」
「・・・・」
 「馴れ馴れしい」とゆかりは思ったが、ゆかりんと呼ばれるのは嫌ではないし、怒るほどのことではないと思った。
「今日、学校を案内してくれよ」
「何でゆかりが」
「お、いいねぇ、自分を名前で呼ぶ女の子ってチャーミングだぜ。答えはイエス? ノー?」
「・・・・ノー」
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサーで」
「むむ・・・・」
 春也の青い瞳がゆかりを見詰める。青い目に慣れていないからだろうか、ゆかりはその瞳が作り物の宝石ように見えた。
「残念! 答えはイエスだったんだなぁ。罰として俺に学校を案内すること」
「勝手に決めないでぇ」
「お、先生が来たぞ」
 チャイムが鳴り、担任の露里(つゆさと)が入ってきた。ゆかりは春也に何か言いたかったが、前を向いて座り直した。
「ゆかりん」
 春也の囁く声が背中から聞こえる。
「リボン、可愛いぜ」
「・・・・」
 ゆかりの髪をツインテールに束ねていた黄色いリボンがかすかに揺れた。


 一時間目の授業が終了した後の休み時間、校長室のドアをノックする音がした。
「どうぞ」
 巳弥の祖父である校長先生が椅子に座ったままノックをした主に声を掛けた。ほどなくドアが開き、丁寧におじぎをして入って来た生徒は、転校生の鷲路憂喜(わしろ ゆうき)だった。ゆかりたちのクラスとは違う、透子のクラスに入った転校生だ。その後に続いて春也と咲紅も入って来る。校長は緊張した面持ちで三人を迎えた。
「校長、お話が」
 憂喜が一歩前に進み出る。
「な、何かね」
「藤堂院透子が学校に来ていません」
「あ、ああ、透子君か。体調が悪いと連絡があってね」
「悪いのは体調ですか。そちらの都合ではなく」
「な、何の都合が悪いと言うのかね」
「彼女をかくまうつもりでしたら、我々にも考えがあります」
「そ、そんなつもりはない。透子君はよく学校を休むんだ」
「では、明日は出てくると?」
「それは私には分からんよ。体調が回復すれば・・・・」
 憂喜の視線が校長を貫く。
「藤堂院透子がいないのなら、僕がここにいる理由はありません。いやむしろ、彼女を監視するために彼女の家にいく必要があります。これは任務ですから」
「まぁ待てよユーキ」
 グイ、と春也が憂喜の腕を掴んだ。
「任務だなんて、真面目に考えすぎだ。俺たちはあいつらの行動を監視するためにこの学校に来た。だが言われたのはそこまでだ。あいつらの家にまで行って監視しろとは言われていない」
「・・・・」
「それより、異世界の学校ってのも面白そうじゃねぇか。観光気分で楽に行こうぜ」
「澤崎。僕は無駄な時間を過ごしたくないだけだ。こんな学校の授業を受けて何になる? 明らかに程度が低く実りがない。君もそう思うだろう、桜川」
「・・・・私にはまだ、分からないわ」
 咲紅は視線を床に落としたまま、そう言った。
「君たちは見張るべき目標がいるからいい」
「でも、このまま生徒として過ごすには、生徒に成り切ることも必要だわ」
「ここにいる期間も、そう長くはならないと思うが」
「長くならないとは言い切れないわ」
「・・・・いいだろう。今日のところはつまらない授業を受けよう。しかし明日、藤堂院透子が来なかったら即座に管理局に報告する」
「な、何だと」
 校長の表情が緊張したものになる。腰も椅子から少し浮いていた。
「それはやり過ぎだ、ユーキ」
「そうだわ、私だって二日、三日と体調が悪い日が続く時があるもの」
 春也と咲紅に両側から諌められ、憂喜は「ちょっと脅しただけだ」と肩をすくめた。
 その時、休み時間の終わりを告げるチャイムが響いた。
「では授業に戻ります。ご安心下さい、今日の所はきちんと受けますよ」
「あ、ああ・・・・」
 校長は額に流れる汗を拭い、出てゆく三人を見送った。


 卯佐美第3中学校では、今週末に体育祭がある。九月に体育祭、十一月に文化祭。二学期はクラス単位で力を合わせ絆を深める行事が続く。今日は体育祭の出場種目を決めるホームルームが四時間目に予定されていた。
 「好きな競技に出る」と言うよりもいかに「嫌な競技に出ない」かが多くの生徒の課題となる「種目決め」。当然のことながら、疲れる、辛い、つまらないの「3T」競技は人気がないどころか、嫌われ者だ。皆はその競技の選手にならないために、早々に他の競技の出場者となるべく立候補する。
 そうなると気の弱い生徒やジャンケンに弱い生徒は当然のごとく出る競技が決まらないまま、出場できる楽な競技が次々に減ってゆく。今回の目玉は「マラソン」だ。中には得意な生徒もいるだろうが、好き好んで暑い中を走りたいと思う生徒はいまい。だいたい、九月にマラソンをさせようというのは誰の発想なのだろう。
「きっと体育の伊福部先生の陰謀だよ、マラソンなんて」
 ゆかりの隣の席に座っている女子が話し掛けてきた。何でも伊福部先生はマラソンが好きで、大学の頃は選手だったらしい。
「マラソンなんて冬に走るものだよねぇ」
 かく言うゆかりは、既に「障害物競走」の選手に決まっていた。もっと楽な競技が良かったのだが、ジャンケンで負けてしまったのだ。ちなみにクラス対抗リレーの選手だけは脚の早い者が推薦で選ばれた。
 こうして「仮装リレー」一名と「三キロマラソン」二名だけが空欄になっている黒板が出来上がった。マラソンは当然、疲れるという理由で人気がなく、仮装リレーは恥ずかしい恰好をみんなの前でしたくないというお年頃なのが理由だ。
「決まっていないのは誰だ?」
 露里の言葉に仕方なく手を上げた三名は、出雲巳弥、山城みここ、そして桜川咲紅だった。
 こうなることは露里にも安易に想像出来たが、かと言って「おとなしいから」と言う理由で楽な競技を割り当てることも出来ず、予想した結果を前に腕組みをした。こういう時、教師は辛いなと思う。
「三人の内、誰かが仮装リレーになるわけだが・・・・ちなみにこの中でマラソンが得意という奴はいるか?」
 遠慮がちに首を振る三名。これも予想範囲内だ。
「仮装ならコスプレが得意なみここちゃんが適任」だと思ったゆかりだが、山城みここのコスプレ好きは他の人には内緒なので発言を控えた。
(どうしてわざわざ疲れることをさせるんだろう)
 咲紅は運動が大の苦手である。少し前に体力測定を行った時には、身体能力が六、七歳と同等という結果が出た。だが、咲紅は気にしていない。それぞれ得意なものが違うのだから、自信のある分野で誇れたらそれでいいと思っていた。
「仕方ない、ジャンケンで決めるか」
 露里は最も平和的な最終手段を選択した。三人も他に方法がないために渋々承諾する。
「じゃんけん・・・・」
 弱々しい掛け声と共に三本の手が出される。一発で結果が出た。巳弥と咲紅がパー、みここがチョキ。仮装リレーは密かに適任のみここに決まった。
「そうか、出雲は・・・・」
 今になって露里は、巳弥は体が弱く夏休み前まで体育の授業を休んでいたことに気付いた。最近は巳弥も屋外に出て授業を受けていたのですっかり忘れていたのだった。
「出雲、大丈夫なのか? マラソンなんてハードな運動・・・・すまない、出雲の体調のことを考えていなかった。何なら誰かに代わって貰うか?」
「いえ・・・・出来ます」
 巳弥はキッパリと言った。体育の授業に出ていなかったのは肌が日光に弱かっただけで、体力がないわけではない。今はその弱点も補われているので太陽の光に関しては何の問題もなかった。代わって貰うとしたら相手の子に悪いという気持ちもあるが、それよりも巳弥自身が「挑戦してみたい」と思った。
「はぁ・・・・」
 巳弥ほど前向きではない咲紅は、ため息をついた。そんな咲紅に巳弥が声を掛けた。
「がんばろうね」
「・・・・」
(がんばる・・・・?)
 自分と巳弥は結局、嫌な競技を押し付けられた形になった。クラスの中には持久走が得意な者もいるはずなのに、走らずに不得意そうな自分たちに走れと言う。そんなもの、頑張る必要はないと咲紅は思う。例えどれだけ頑張ろうが、マラソンが得意な者が手を抜いた走りにさえ勝てないだろう。元々不利な土俵で勝負をするわけだから、押し付けられた自分たちに期待する者もいないはずだ。
(出雲さん、あなたにはいざとなれば魔法があるじゃない)
 黒板にはチョークで書かれた「桜川」と「出雲」の名前が並んだ。


 一方、透子のいるクラス(今日はいないが)も体育祭の出場者を決めていた。こちらも同じように「みんなが出場したくない競技」が残され、楽な種目から決まってゆく。このクラスに至っては、クラス対抗リレーすら推薦で決めることはしなかった。
 クラス対抗リレーは他の種目とは違い、特別な競技という認識が強い。最後を飾る種目ということもあり、勝ち負けによる得点も多く、華やかな印象がある。例えば借り物競争やスプーンリレーで負けるより、リレーで負けた方がよほど悔しいのである。そうであるから、選手にかかる責任も重い。よほど脚に自身がなければ、出場したくないという生徒が大多数だ。
 そんなわけで、この1年5組も最後までリレーとマラソンの選手が決まっていなかった。こうなるとマラソンをしたくない、残った生徒は全員リレーに立候補する。背に腹は代えられない、というやつだ。
 その中に鷲路憂喜も入っていた。だが彼が最後まで決まっていないのは、巳弥や咲紅と同じ理由ではない。
「仕方ないな、ジャンケンだ」
 このクラスの担任も露里と同じ決定方法を選択した。
「先生」
 そこにスッと手が挙がった。鷲路憂喜の手だった。
「な、何かね」
「リレーの選手をジャンケンで決めるのはおかしいと思います。ジャンケンとは運で決まります。実力を見ないと脚の早さは分からないでしょう。特に僕は転校生ですから、先生もご存知ないはずです」
「それはそうだな」
「おい、ジャンケンで決めるって言ってるだろ」
 出場種目の決まっていない生徒の一人が立ち上がる。
「潔くジャンケンで決めようぜ、平等だから文句はないだろ」
「平等?」
 憂喜がその生徒を見返す。青く澄んだ瞳がその生徒を見据えた。
「平等ではありません。それぞれ脚の早さが違う」
「そんなこと言ってねぇよ! お前、マラソンしたくないからそんなこと言ってるんだろう?」
「僕はマラソンに出たくないからではなく、リレーに出たいから言っているのです」
「ふん、恰好いいからか? いいよな、転校生は注目されて」
「やめないか、伊藤」
 担任が仲裁に入る。伊藤という生徒は「ふん」と言って席に座った。
「先生、残った者で短距離走をやりましょう。それで選手を決めればいい」
 憂喜がそう提案すると、伊藤がまた立ち上がった。
「ゴチャゴチャ言わずにジャンケンしろよ!」
「やめろ伊藤。なぁ鷲路、ここはジャンケンで平和に決めたらどうだ?」
 先生も転校生を刺激しないように穏便な態度で説得する。何しろクラスに入って間がない鷲路なので、どんな性格なのかは分かっていない。いきなりキレられても困る。
 そんな態度の担任を見て、鷲路が口を開いた。
「先生、そんないい加減なことでは勝負に勝てませんよ。勝つ気がないのですか?」
「しょ、勝負?」
「今回の体育祭はクラス対抗だと聞きました。他のクラスに勝つことが目的ではないのですか?」
「・・・・」
 誰も何も言い返せなかった。鷲路の言ったことが正論だと思ったからではない。今時、学校の体育祭でそんなスポ根なことを言い出す者がいたということに驚いたのだ。
「・・・・ま、まぁ、伊藤。鷲路君の育った国は、何にでも一生懸命になるお国柄だったんだろう。そうだな、明日の体育の時間にでも短距離走をやって、早い方をリレーの選手にしよう。それでいいだろう、伊藤」
「え、ええ・・・・」
 伊藤は「あんな良い子ぶった野郎には負けない」と思ったので、この場は引き下がることにした。担任も気を取り直して壇上に戻る。
「え〜、では女子の方を決めようかな。こちらも同じく残っているのはマラソンとリレーか・・・・まだ決まっていないのは誰だ?」
 弱々しく二本の腕が上がる。女子の方はマラソンが得意な生徒がいたので既に一人決まっており、決まっていない枠は三つ。リレーが二つとマラソンが一つだ。
「一人足りないな?」
「先生、藤堂院さんがお休みです」
 一番前の席に座っている女子に言われ、担任はやっと一人足りない理由に気付いた。
「そうか、そう言えば今日は休みだったな」
 この教師は、自分のクラスの生徒が休んでいるのにあまり興味がないらしい。
「じゃあさ、藤堂院さんがマラソンで決まりじゃん」
 まだ決まっていない女子の一人が言った。学校ではよく見られる、欠席裁判である。クラスで何かを決める時にうかつに休んだりすると、学校に行ってビックリ、重要な役に決まっていたりすることがある。まるで休むのが悪いとでも言うように。
「そうだな、藤堂院には悪いが」
 担任はチョークを持ってマラソンの枠に名前を書こうとした。
「ちょっと待って下さい」
 鷲路が席を立つ。
「この場にいない人の種目を、勝手に決めていいのですか?」
「しかし、いないんだから意見の聞きようがないだろう」
「先程から見ていると、どうもマラソンという種目は嫌われているように見受けられます。この場にいない人に、嫌な役を押し付けているだけではないですか」
「いい加減にしろよ、お前!」
 伊藤がたまりかねて大声を上げた。
「恰好付けてるんじゃねぇよ! さっきは自分がマラソンしたくないからだと思ってたが、女子の方にまで口を出しやがって。転校生だからって、女子にいいとこ見せようってんだな?」
「いい恰好なんてしていない。フェアじゃないと言っているんです」
「あぁ、むかつくなぁ、その言い方!」
「やめろ、伊藤。育った環境が違うんだ、意見が食い違うのも無理はない」
「・・・・」
 伊藤という生徒も担任も同じ人種らしいということが分かって、鷲路はため息をついた。
 結局、男子の方も明日の短距離走を見て決めるので、女子も同じようにすることになった。担任は鷲路の青い目が怖かった。彼にはガイジンはキレたら何をするか分からない、という先入観があったのだ。それでなくとも、日本の学生が普通にナイフ等を持っている時代である。青い目の学生ならマシンガンを持っていてもおかしくないという偏見を持っていた。
 昼休み時間になった途端、ある女子が鷲路に声を掛けて来た。
「正義の味方のつもりらしいけど、今どき流行らないわよ、ああいうの」
「・・・・」
(この世界の住人はこんな奴らばかりなのか・・・・? くだらない。あんな奴らが魔法の力を正しく使えるはずがない)


 昼休みになったので、ゆかりはお弁当箱を持ち、巳弥に声を掛けた。
「みっやちゃ〜ん、お昼にしよ」
「あ、ゆかりん、えっと、みここちゃんも一緒にいいかな?」
 巳弥の後ろに山城みここがお弁当箱を持って立っていた。
「うん、もちろん! どこに行く? 屋上? 中庭?」
「今日の屋上は風が強そうだから、中庭にする?」
 などとランチタイムの打ち合わせをしていると、澤崎春也がいつの間にかゆかりの隣に立っていた。
「ゆかりん、校内を案内してくれるんだろ?」
「ふぇ?」
 春也の顔を見上げる。身長差は十五センチほどあった。
「あの話って、お昼休みなの? ていうかゆかり、引き受けてないんだけど」
「罰ゲームは強制なんだぞ。二問しか答えてないのに椅子を回さないでって言うのと一緒だ」
「よく分かんないけど、ゆかりたち、今からお昼ご飯だから」
 巳弥とみここに声を掛けてゆかりが教室から出て行こうとすると、春也が「どこに行くんだ?」と尋ねた。
 ゆかりは「中庭」とだけ答えるとさっさと廊下を歩いて行ってしまった。
「中庭か・・・・おい、咲紅」
 春也は咲紅がいるはずの席に向かって声を掛けたが、既に誰も座っていなかった。
「どこ行ったんだ、あいつ? 普段はトロいくせに」
 春也は咲紅を捜し求め、教室を出た。



3rd Future に続く



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