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タイトル


 25th Love 「ミセス・ラビラビの画策」


「ムカつくなぁ、あの大神官サマとやら」
 ゲートをくぐり、再び元の世界へと帰って来た魔女っ娘3人とウサギ2匹の一行。ミセス・ラビラビの占いに出た場所は、ゆかりたちの世界のこれまたゆかりたちの住む街の一角だった。どうしてそんな所に?と疑問を持ちつつ、一行はとにかくそこに向かうことになった。
 ちなみにとこたんの傷付いたマジカルフェザーは修復できず、新しいものに付け替えられている。
「そう言うな、透子」
「でも・・・・」
「俺もあの言い方はないと思う」
 大神官を崇拝するチェックでさえ、あの態度にはムカムカしていた。ゆかりたちの苦労を知っているからだ。
 透子とミズタマとチェックは、誤解から一度は捕まったものの、宝玉を取り返す任務を受け、一時的な仮釈放という形になった。もし「陽の玉」を取り返せなかった場合はトゥラビアにおいて改めて裁判にかけられる。更に「ダークサイドと組んだ容疑」をかけられ、この3人と2匹はトゥラビアにおいて「犯罪者」となってしまった。それを挽回するには宝玉を取り返すしかない。
「ったく、何が犯罪者よ。無の玉を見つけてあげたのに、そっちはお礼もなし。あぁもう、あたし、明日からウサギを嫌いになりそう」
「透子・・・・」
「あっ、ごめん、チェックもウサギだっけ。傲慢なウサギを嫌いになりそう、に訂正するわ」
「嫌な思いをさせたじょ」
 ミズタマもゆかりや透子にすまないと言う気持ちがあった。元はと言えば、自分たちが2人に宝玉探しをお願いしたことから始まったのだ。こんなことに巻き込んでしまって、責任を感じていた。
「こうなったら、無の玉がトゥラビアにあることだけは救いね。無の玉の偽物はあの三姉妹が持って帰ってるだろうから、向こうは3つの宝玉が揃ったと思っているでしょうね」
「あの、そのこと、なんだけど・・・・」
「なに? ゆかりん。さっきも何か言いかけてたけど?」
「えと、その、『無の玉』、取られちゃった・・・・」
 下を向いて言い辛そうにゆかりんは口篭もった。
「え? 『無の玉』はあたしたちと一緒にトゥラビアに持って行かれて・・・・まさか、その玉も奪われちゃったってこと?」
「ううん、露里先生・・・・じゃなくて、先生に乗り移った人に取られたの、学校で」
「・・・・?」
「あのね、藤堂院さん」
 ゆかりんに代わって、巳弥が説明した。ゆかりんが「無の玉」の偽物を作ったこと、透子が持っていたのはその偽者であること、「無の玉」のペンダントを持った露里を見失ったこと・・・・。
「てことは、ダークサイドが3つの宝玉を持ってるってことじゃないの!」
「ど、どうしよう、透子・・・・」
「どうしようって・・・・」
「ゆかりのせい? ゆかりが悪いの? ねぇ透子、どうしたらいいの?」
「そんなこと聞かれても・・・・」
「大変だじょ!」
「ど、どうなるんだ、世界は!」
 うろたえるミズタマとチェック。伝説の中にも「三宝玉が揃うとどうなる」という具体的な内容は書かれていない。それだけに想像が膨らみ、余計に怖さが増す。文献や言い伝えには、おおむね「3つの宝玉が揃う時、3つの世界を統合し得る大いなる力が無の玉に出現する」とある。「3つの世界」とはこの地上界、トゥラビア、イニシエートのことだろう。では「大いなる力」とは何か。宝玉を揃えし者にその力が宿るのか、無の玉から大魔王とかが出てくるのか。「統合」とは3つの世界を手中に収め「支配」することなのか。
「い、い、急ぐじょ! まだ間に合うかもしれないじょ!」
 ミズタマとチェックは恐怖に駆られ、3人を引っ張るようにしてミセス・ラビラビの占いにでた場所へと急いだ。
 無の玉を奪われたことはトゥラビアにバレてなくて良かった、と透子は思った。あのウサギたちは姫宮家で押収した宝玉が本物の無の玉だと思っている。もし3つの宝玉がイニシエートに渡っていたと知ったら、自分たちはどんな目に合わされていたか分からない。トゥラビア側が気付く前に、何としても「無の玉」か「陽の玉」どちらか一方でも取り返さなければならない。

「いて、そっと運べ、魅瑠」
「うるさいね、山道なんだから仕方ないだろう!」
 魅瑠は背中で文句を言っている迅雷に向かって言い返した。起伏の激しい山道を、自分より体重のある迅雷を背負って歩いているのだ。文句を言われる筋合いは無い。おまけに迅雷が喋ると耳のすぐ後ろで聞こえるものだから、余計に魅瑠の気に障った。
「もる、脚が痛いよ」
「我慢して、萌瑠」
 芽瑠は妹の手を握った。芽瑠にとってもこの山道はかなり辛い。萌瑠がどれだけ疲れているか想像できた。
「でも迅雷君、どうしてその傷でゲートまで案内してくれる気になったの? 私達は怪我が治ってからでもいいって言ってるのに・・・・痛いんじゃない?」
「お前達、特に魅瑠が早く帰りたそうだったからな。先生に早く宝玉を渡して誉めて貰いたいんだろう?」
 からかうような言い方に魅瑠は顔を赤らめた。
「そりゃそうさ。あたし達はこの日の為にずっと宝玉を捜していたんだからね」
「お、そこを左だ」
 このように魅瑠に背負われた迅雷が道を指図して、4人は山奥に分け入って行った。陽は既に沈み、月明かりだけが山道を照らす。いや、道と言えるほどの道はなかった。だが4人は生まれた時から光が薄く暗い世界で暮らしていたので、暗闇での行動はお手の物だった。
「ねぇ迅雷君、本当はあなたも早く帰りたいんじゃないの?」
「俺がか」
「こっちにいるのが辛いとか・・・・」
「何言ってるんだ、芽瑠。俺が辛い? 何をだ」
「分からなければそれでもいいけど」
「何だよ、気になるな」
「会いたいけど、会うのが辛い人がいるとか」
「・・・・何だ、そりゃ。いててて・・・・」
 突然痛がりだす迅雷を見て、芽瑠は都合の悪い話になったので誤魔化したのだろうと思った。
「大丈夫か、迅雷」
「何だ、魅瑠に心配されると何だか変な感じだな」
「あたしが人の心配をしちゃ悪いのかい?」
「・・・・いや。お前はそういう奴だからな」
「あ?」
「ただ紅嵐先生のことになると他の事が見えなくなるっていうか・・・・昔からそういう奴だったよ」
「な、何言ってるんだ、振り落とすよ」
「おう、あそこだ」
 迅雷が指し示した方向へ向かう三姉妹。ここから先は道もなく、深く茂る草むらを分け入って行かなくてはならないようだ。確かにこの場所なら、誰かに見付かるということもないだろうと思える。
「おお」
 迅雷はゲートを見て思わず声を上げた。自分がこの世界に来る時に使用したゲートとは比べ物にならないほど広がっている。これなら迅雷でも「魂の縮小化」を施さずにくぐれそうだ。
「さすが先生だ。ゲートが大きくなっている」
「やはり先生がこっちに来る時に改良したんだよ」
 紅嵐がこの世界に来ていると主張している魅瑠だが、誰もその姿を見ていないので、他の面々は半信半疑の状態だった。
「先生がこっちに来ているにしろ来ていないにしろ、とにかく一度この『無の玉』を持って帰りましょう」
 無の玉(実は透子の作った偽物)は芽瑠がリュックに入れて持って来ている。
「でもこのゲート、なるべく早く撤去した方がいいわ。もし誰かこっちの人がくぐってしまったら大変だもの」
「芽瑠の言う通りだ。俺たちが通った後に外してしまうのがいいと思うが、魅瑠の言うようにカラスの中に入った先生がこっちに来ているならそうはいかないな。さすがの先生でも機械が無ければゲートは作れない」
 ゲート発生装置はイニシエート側に設置されているので、もし装置を切ってしまったら、この世界からはイニシエートに帰る手段はなくなってしまう。例えばもしイニシエート側の装置に子供が悪戯をしてスイッチを切ってしまった場合、再度発生装置を起動してこの世界に通じるゲートを作らない限り、魅瑠達は家に帰れないことになる。装置のスイッチなら誰でも入れることは出来るのだが、この世界と繋げる、という操作方法は紅嵐だけが知っていた。
「さぁ、帰るよ」
(長かった・・・・やっと、やっと帰れる)
 魅瑠はこの世界に来た日からの事を思い浮かべ、目頭を熱くした。
「あたしから行くよ」
「そっとな」
 魅瑠は迅雷を負ぶったまま、空間が歪むゲートに脚を踏み入れた。

(くっ・・・・)
 露里、いや紅嵐は頭に手をやり、顔をしかめた。
(まさか、これほどまでてこずるとは・・・・よほどあの光の矢が効いていたと見えますね・・・・)
 「魂化」している間は、魂への直接攻撃には無防備である。紅嵐はカラスの体を借りている時にライトニングアローでカラスごと貫かれ、魂に激しいショックを受けた。それが原因なのか、露里の体を完全には制御できずにいる紅嵐だった。
(ですがそれも今の内だけ。近い内に私の力は元に戻ります。そうなればこの体は用済み。こんな美しくない体に入っている必要はなくなります)
 露里の体を借りた紅嵐はポケットにゆかりから奪った「無の玉」のネックレスを入れ、水無池三姉妹の住んでいるアパートに来たのだが誰もいなかった。黙ってイニシエートに帰っても良かったのだが、頭痛がするのでとりあえずこの部屋で休んでゆくことにした。
(しかし、分からない。この男とゆかりんとか言う娘・・・・)
 紅嵐にとって宝玉は世界を変えるほどの力を持つ物、何物にも代えられない存在である。1人の人間の命と引き換えに出来るなど、彼には信じられなかった。
(それにこの男は、自分がどうなってもあの娘を救おうという意志があった)
 自分を犠牲にしてまで他人を救おうという考えも、紅嵐にとっては愚かなことでしかない。
(己のいない世界など、どうなっても構わない。己を犠牲にして他人を生かすなどという考えは理解できません。だが理解できない故に、興味はありますね。もう少しこの男を観察するのも悪くないかもしれません。ですが「無の玉」が手に入った以上、この世界に長居は無用。早々に帰るとしますか)
 紅嵐は頭を押さえつつ立ち上がった。
(安心しなさい。この体は私がイニシエートに帰る時には開放してあげます。もっとも、私が三つの宝玉を手に入れた後、この世界がどうなるかは分かりませんがね。上手くトゥラビアへのゲートの開通が成功していれば、私の生徒達が「陽の玉」を奪いに行っている頃でしょう)
 紅嵐はこの世界に来る前、トゥラビアへのゲートを完成させた。その装置がゲートを作り終えた時、彼の教え子たちがトゥラビアへ侵入し「陽の玉」を手に入れてくる計画だった。紅嵐は知る由がなかったが、それは見事に成功して、トゥラビアに祭られていた「陽の玉」はイニシエートに奪われ、彼らの国へと持ち去られていた。
(しかしあの姉妹と迅雷は、どこへ行ったのでしょう?)

 ゆかりたち御一行はミセス・ラビラビの占いに出た地点へとやってきた。それは水無池姉妹が住んでいたアパートなのだが、ゆかり達はその事を知らない。
「この辺りだよね」
 ゆかりは辺りを見回した。夜の暗がりの中、アパート前の街灯がチカチカと点滅していた。
「この近くに宝玉があるのかな」
「ねぇ、ゆかりん」
 巳弥がゆかりの肩を持った。
「今夜でしょ、お父さんが帰って来るの。家に帰ってゆかりんがいなかったら、心配しない?」
「あ・・・・そうだね、連絡入れなきゃ」
 近くの電話ボックスに入ったゆかりは、父・岩之介に電話を入れたが、まだ帰っていなかったので留守電に「少し遅くなる」と吹き込んでおいた。
「おまたせ」
 ゆかりが戻って来たので、一同は手分けして「この辺り」という曖昧な範囲を捜索することにした。
「ゆかり、巳弥ちゃんと一緒に行くね」
 そう言って、ゆかりはさっさと巳弥の手を引いて歩いて行ってしまった。
「それじゃ俺達も行くぞ、透子」
 チェックが声を掛けたが、透子はボ〜っと立ったままだった。
「透子?」
「え?」
「捜索に行くぞ」
「あ、うん」
 ゆかりは巳弥と何か話ながら、アパートの裏の方へと曲がって行った。
(やだな、あたし。ゆかりと出雲さんが仲良くしているのが、面白くない)
 今まで巳弥がイニシエートではないかと疑ってきた透子だったが、自分たちと同じ魔女っ娘だった。今までは自分とゆかりの二人だけが「魔女っ娘仲間」であり、第三者が割って入れない関係だと思っていた。誰よりも絆が深い仲だと思っていた。
 だが今の透子は、唯一の友達であるゆかりを巳弥に取られそうな気になっていた。
(友達、か。ゆかりはきっと出雲さんも、こなみちゃんも、他のクラスメイトも、みんな友達だと思っているんだろうな。あたしは・・・・)
「透子、どう思う?」
「え、な、何が?」
 話を聞いていなかった透子は、慌ててチェックに聞き返した。
「宝玉だよ。ゆかりんの話では学校の先生の体を借りたダークサイドが奪って行ったんだよな。ということは、この近くにそのダークサイドがいるってことだろう?」
「そうね」
「まだそいつが先生の体に入っているとすれば、透子なら見れば分かるよな」
「ええ、露里先生なら見れば分かるわ」
「しっかり見ていてくれよ。見つけたらすぐ教えてくれ」
「分かったわ」
(とにかく今は宝玉を取り返さないと)

「でも、意外だったよねぇ」
 一方、巳弥と一緒に見回りをするゆかり。
「何が?」
「巳弥ちゃんのコスチュームだよ。西洋の魔女のイメージなの? それにしてはスカートが短かったよね。巳弥ちゃん、いつもはミニスカートなんて履かないから、意外だったよ。本当はあんな格好、したかったんだね」
「え? ち、違うよ」
 巳弥は慌てて手を横に振った。
「だって、自分のイメージした格好になるんだよ?」
「違うのよ、勝手にあんな格好になったの!」
「え? そうなの? あ、そっか」
 1人で勝手に納得するゆかりに首を傾げる巳弥。ゆかりは巳弥の麦藁帽子を被った時に見たヴィジョンを思い出していた。
(あれは巳弥ちゃんだったんだ。でもどうしてあの帽子を被ったら、あんな映像が浮かんできたんだろう? ひょっとしたら、普段の巳弥ちゃんの願望が帽子に記憶されてるとか? う〜ん、でもあの大きな蛇は願望とは思えないなぁ)
「でもホント、びっくりだよね。巳弥ちゃんのお母さんの形見がマジカルアイテムってことは、魔法少女だったってことかな?」
「え、さ、さぁ・・・・」
 巳弥は色々なことが有り過ぎて、頭の中の整理が付いていない。父親の形見が宝玉だったり、母親の形見がマジカルアイテムだったり、いきなり変身したり、いきなり異世界に飛んだり、整理しろと言う方が無理な話だ。
 だが、巳弥は自分でも不思議だったが、この状況を嫌だとは思わなかった。
「あっ」
 巳弥はゆかりの腕を掴み、壁際に引き寄せた。
「ど、どうしたの?」
「しっ」
 目配せでアパートの2階を見るように促され、ゆかりは壁にピッタリ張り付いたまま覗き見た。
(あ、先生)
 部屋から出た露里(紅嵐)はドアを閉め、階段を降りて行った。
「どこへ行くんだろう?」
「まだ・・・・先生の中にあいつが入ってるのかな」
 元の先生に戻っていて欲しい、とゆかりは淡い期待を持っていた。
「後をつける?」
「ひゃっ、透子、いきなり後ろから話し掛けないで」
 ゆかりは突然現れた透子に、胸を押さえながら抗議した。
「で、どうなの? 先生の中に入ってる人は」
「どうって?」
「強いの?」
「うんと・・・・」
「それほどでもなかったかな」
 ゆかりに代わって巳弥が言った。
「自由に体を操れないって感じだった。時々先生の意志が出て来たり」
「ふぅん・・・・じゃ、今なら勝てるかな?」
「え、透子、先生と戦うって言うの?」
 透子に向き直ったゆかりは、真剣な目つきだった。
「今なら宝玉を取り返せるかもしれないわ」
 負けじと透子もにらみ返す。
「宝玉を取られたのはゆかりだよ? このまま3つの宝玉が揃っちゃったら、世界がどうなるか分からないんだよ?」
「う・・・・でも・・・・」
「ほら、早く! 見失っちゃうわ」
 だが所詮、素人の尾行だ。これだけの人数がゾロゾロとついて行けば、目立って仕方がないだろう。一行は見失わない程度に距離を取り、露里先生の後を追った。

 世界は変わって、陽の玉を奪われて騒然となっているトゥラビア。陽の玉が置かれていた台座の前では、大神官が各部隊から被害報告を受けていた。
「近衛騎士団ブルーラビット、ホワイトラビット全滅。グリーンラビット、パープルラビットそれぞれほぼ壊滅。イエローラビットは罪人を法神官様の元へ連行していたため、1人も被害は出ていません。他、一般国民の被害は現在調査中です」
「侵入したダークサイドは3人だったな。全て引き上げたのか」
「捜索致しましたが、見付かりません。おそらく空間を捻じ曲げるゲートから侵入し、そこから戻ったのだと思われます。そのゲートがどこに出現していたのかも不明です」
「目撃証言もなしか」
「はっ、残念ながら。それと、他の建物の被害も報告されております。特に魔法具の開発を行う研究所がかなりの被害を受けており、復旧に時間がかかるようです」
「こちらの戦力が主に魔力であると判断してのことか・・・・だが、この大神殿に侵入していたダークサイドは3名。報告によるとわがトゥラビアに侵入した者は3人と聞いておる。では研究所を襲ったのは誰なのだ?」
「はっ、研究所は幸い死人は出ていませんので証言を聞きますと、何でも若い女だったということです」
「ということは、侵入したダークサイドは4人だったということか」
「しかし、生体反応レーダーには3人しか映っていなかったと報告があります。どちらが正しいのか、現在混乱しておりまして、申し訳ありません」
「うむ、引き続き調査をせよ」
 大神官は重々しく頷き、報告係を下がらせた。
「ミセス」
「はい」
 透子らが持ち込んだ「無の玉」を見ていたミセス・ラビラビは大神官に呼ばれ、傍に歩み寄った。
「その無の玉は本物か?」
「おそらく。材質は平凡ながら、魔力を感じます」
「そうか。ではそれがこちらの手にある間は三宝玉は揃うことはないのだな」
「今の所は」
「だが、また今回と同じように突然現れて『無の玉』を奪いに来る可能性があるな。全く、やっかいなゲートよの。地上人が『陽の玉』を無事に取り返してくれば良いのだが」
「やっかいなもの、ではないと思いますが」
「あのゲートがか?」
「ええ」
 ミセス・ラビラビの声が低くなった。
「これまで我らには『陰の玉』を手に入れる手段がなかった」
「・・・・」
「今度ダークサイドがこちらにゲートを通した時、それはトゥラビアが『陰の玉』を手に入れる機会でもあるのでは」
「だが、我らがダークサイドに攻め込んだところで『陰の玉』を奪えるかどうか・・・・」
「大神官様らしくもない」
 ミセスは口を歪ませた。
「意外と使えそうではありませんか、あの小娘ども」

 26th Love へ続く



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