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タイトル


 24th Love 「大神殿それぞれの戦い」


「ここだね!」
 大神殿の正面に降り立ったゆかりんと巳弥。2人は良い子なので、誰かさんのように壁に穴を開けて入ろうとせずに、きちんと正面入り口から中に入った。
 途端、血だらけで倒れている鎧ウサギが2人の目にいやと言うほど飛び込んできた。
「うわっ」
「いやっ・・・・」
 思わず目を背けるゆかりんと巳弥。
「とこた〜ん!」
 ロビーにゆかりんの声が響き渡るが、応えは無い。
 代わりに、全身真っ黒でかなり筋肉質な男が視界に入った。水無池姉妹と最初に会った時のような、全身スーツだ。
「ダークサイド!」
「気を付けて、ゆかりん」
「うん、とこたんはどこ!?」
 ゆかりの問いには答えず、2人が何者かを観察するようにじっと立ったままのダークサイド。それが妙に不気味だった。
「このウサギさんたちは、あなたがやったの!?」
「・・・・」
「な、何とか言ってよ・・・・」
 頭まで覆うスーツにゴーグル姿なので、表情すら分からない。
「突破するしかないよ、ゆかりん」
「そ、そだね」
「正面から攻めるより、二手に分かれた方がかく乱できるかも」
「うん、じゃあそれ」
 これではどちらが先輩か分からない。巳弥は右、ゆかりんは左に向かってそれぞれ床を蹴った。それを合図に微動だにしなかったダークサイドが動いた。
 一瞬で巳弥の目前に迫るダークサイド。
「!!」
 その体躯に似合わず素早い動きをしたダークサイドは、これまた素早いパンチを繰り出してきた。
「巳弥ちゃん!」
 やられる、と思った瞬間、巳弥の帽子が広がり、パンチを受け止めた。
「この帽子は、魔法の帽子なんだって。私を守ってくれる、魔法の帽子なの」
 いつか聞いた、巳弥の言葉を思い出す。
(巳弥ちゃんのお母さん、ずっと巳弥ちゃんを守ってくれてたんだ)
 重く鋭いパンチを受け止めた帽子は、また元の大きさになって巳弥の頭の上に収まった。
 じっと睨み合う巳弥とダークサイド。先程のような素早い動きを見せられたら、うかつに動くことが出来ない。
 その背後に回り込もうとゆかりんがダッシュした。それに反応し、ゆかりん目掛けて走るダークサイド。
「早いっ!」
 ゆかりんはマジカルシールドを展開したが、それごと吹っ飛ばされた。
「きゃあっ!」
「ゆかりん!」
 壁に激突し、床に倒れ込むゆかりん。その拍子に肩を思い切り打ちつけた。
「むぅ〜」
(そうだ、こんな所で負けてなんかいられない。透子を助けて、元の世界に戻って、露里先生を助けないと!)
「ゆかりん、私が敵を引きつける。スプラッシュの用意をして!」
「分かった! お願い」
 巳弥が帽子を手に取って盾のように身構えると、マジカルハットが大きなシールドへと変化した。巳弥は自分が思った通りになる帽子に戸惑いつつ、ダークサイドを誘うように後方にジャンプした。それを追い、ダークサイドがダッシュする。あっという間に追いついて攻撃を繰り出すが、巳弥の帽子は直径150cmほどに広がって、体に攻撃が届かない。それほどの大きさながら、持っている巳弥は重さをほとんど感じなかった。
「くっ!」
 そのマジカルハット・シールドは衝撃をかなり和らげてはくれるが、さすがに繰り出される拳をまともに受ければ、後方に飛ばされてしまうほど強烈な攻撃だった。巳弥を心配しつつ、スプラッシュを撃つ構えを取ったゆかりんだったが・・・・。
(あれ?)
 いつもよりも、孫の手が放出する魔力が大きい気がした。あっという間に光の充填が完了し、射出可能になる。ゆかりんは相手の大きさを考え、いつもより強力なものを放たなければならないと思った。
「巳弥ちゃん、離れて〜っ!」
 ゆかりんの叫びがホール全体に響いた。
「スゥィートフェアリー・スターライトスプラーッシュ!!」
 発射と同時にゆかりんの体が反動で後方に飛んだ。
「うわぁっ!!」
 孫の手を支える腕がその威力で上にぶれる。維持しようとするが、今までにない反動にゆかりんの腕が持たなかった。
(な・・・・何て衝撃なの〜!?)
 スプラッシュはそんなぶれには関係ないほど広がり、広いホール全体を覆うような光を作り出す。巳弥はそれを見て、慌ててマジカルハット・シールドを広げてガードした。その瞬間、シールドにまぶしい光の波がぶつかってくる。その衝撃に巳弥の体も後退していった。
(な、何て凄い威力!)
 必死でシールドが飛ばされないように手に力を入れる巳弥だが、次第に腕が痺れてくる。このままではシールドを弾き飛ばされ、光の流れに押し流される、そう思った時、スプラッシュの光が薄くなっていった。
 光の残像が残る目を開いてみると、ゆかりんがボーゼンとへたり込んでいた。
「ゆかりん!」
 光の粒の残る空間を飛び、ゆかりんの側に着地した巳弥。
「大丈夫、ゆかりん」
「こんなに・・・・大きくなるなんて・・・・どうして?」
 巳弥はゆかりんを安心させようと肩に手を置き、敵がどうなったかを確認しようと辺りを見回した。
(あれは・・・・?)
 はるか向こうの壁際に、銀色の物体が横たわっていた。黒のカメレオンスーツは跡形も無く消し飛んでいる。
(あの色、まさか機械?)
 巳弥はいきなり近付くのは危険だと思い、少しずつ距離を詰めてゆく。やがてはっきりと目標を確認できる位置に来て、巳弥はそれが機械、ロボットであることを確認した。
(機能は停止しているみたい)
 そのロボットは巳弥が動いた時には巳弥を、ゆかりんが動いた時にはゆかりんをそれぞれ攻撃した。おそらく動くものが視界に入ればそれを攻撃するロボットだったのだろうと巳弥は推測した。
「ゆかりん、大丈夫。このロボット、もう動かないみたい」
 巳弥は声を掛けたが、ゆかりんは動かない。
「ゆかりん?」
「もしロボットじゃなくて人だったら、きっと死んでるよね・・・・」
「・・・・」
「それだけじゃない、もう少しで巳弥ちゃんも巻き込んで・・・・ゆかりが威力を調節できなかったから、ちょっと強くしようと思ったらあんな風に・・・・」
「ゆかりん、今は『もし』を考えなくてもいいよ、藤堂院さんを助けよう」
 巳弥はゆかりんの手を握り、立ち上がらせた。

「ラブリーエンジェル、ライトニングアロー!」
 光の矢を2本同時に番えるとこたん。
「ツイン・シュート!!」
 2筋の光が螺旋を描きながら目標に向かって飛んでゆく。今までのライトニングアローと比べるとはるかに大きくなっていることに戸惑ったとこたんだったが「ここはトゥラビアなのだから魔力供給の力が大きいのかも」と考え、納得した。
「フン」
 容易く軌道を見切ってかわそうとしたイニシエートだったが、直前で矢がその向きを変えた。
「!!」
 直撃にはならなかったが、片方の矢が腕をかすめ、カメレオンスーツの1部が破れた。肌が剥き出しになり、眩い光の世界に晒される。
「う、ぐぉぉっ!」
 焼けるような痛みを感じ、イニシエートは腕を押さえた。
(チャ〜ンス。あの格好じゃ素早い動きはできないかもねっ)
 勝機を逃すまいと、とこたんは更なる光の矢を作り出した。
「行っけ〜! ラブリーエンジェル・ライトニングアロー!」
 矢を放とうとした瞬間、とこたんは目標を見失った。今までそこにあった黒くて大きい目標が、一瞬の内に視界から消えたのだ。
(どこに!?)
 かすかに空気を切る音がして、とこたんはとっさに自分を取り囲むように球体のバリアを張る。
「いっ・・・・!」
 右肩に痛みが走った。その衝撃で番えていたライトニングアローが光の粒となって弾け飛んだ。
 慌てて後ろを振り返ろうとしたとこたんだったが、空中でバランスを崩してそのまま着地を余儀なくされてしまった。床に降り立ったとこたんが肩を押さえていた手の平を見ると、血でベッタリと濡れていた。今だかつて大怪我をしたことのないとこたんは、自分の血を見て気が遠くなりかけた。
 バランスを崩した原因はすぐに分かった。マジカルフェザーの右翼が半分、切り取られてしまっていた。敵の鎌がバリアを断ち切り、マジカルフェザーを切り裂いて、肩にまで達したのだ。
 そしてとこたんは敵の姿を確認できた。迅雷と同じような獣の姿で、両手が鎌状の刃になっている。
(あれが、覚醒した姿・・・・「半覚醒」よりも当然「覚醒」の方が厄介なはず)
 攻撃をしようにも右肩を痛めてはもうライトニングアローを放つことは出来ない。放ったとしても、今の敵に当てることは出来るのだろうか、あのスピードを持つ敵に。
(逃げなきゃ・・・・)
 肩が痛む。段々ととこたんのコスチュームが血で染まっていった。
(やだな・・・・もっと楽に死にたかったよ)
 その敵(とこたんは知る由もなかったが、それは「カマイタチ」であった)がとこたんに向かって歯を剥き出しにして床を蹴った。
(やっぱりあたし、最後も1人なのかな・・・・)
「藤堂院さん!」
「!」
 ガキィィィン、と鉄と鉄がぶつかり合うような音が響いた。とこたんは突然目の前に現れた黒い壁に助けられたのだった。
 膝をついたとこたんが見上げると、巳弥がマジカルハット・シールドを構えて立っていた。
「あなた・・・・出雲さん!? その格好は一体・・・・?」
「話は後で!」
 帽子が縮んで巳弥の頭に納まると、巳弥は両手に作り出した光の球をダークサイド目掛けて放った。敵目掛けて飛んでゆくボールだったが、それは難なくかわされてしまう。 「とこた〜ん!」
 巳弥に少し遅れて、ゆかりんが到着する。
「ゆかりん!」
「遅くなってごめんね、とこたん!」
 息を切らして走ってきたゆかりんに、巳弥が叫んだ。
「ゆかりん、相手はとても素早いわ! スプラッシュ、この部屋全体に広がるように撃っちゃって!」
「うん、下がってて!」
 巳弥はとこたんを連れ、ゆかりんの後ろに下がった。ゆかりんは孫の手を両手で持ち、部屋の中央に向けた。
「スゥィートフェアリー・スターライトスプラーッシュ!」
 部屋全体に拡散する光で、3人の視界は真っ白になった。

 床には、人間の姿をしたダークサイドが倒れていた。手の鎌もないことから、半覚醒でもないことが分かる。黒いカメレオンスーツはボロボロになり、見えている肌は真っ赤になっていた。ゆかりんはとこたんの怪我を治し「大丈夫だよ、手加減したから」とダークサイドに駆け寄ろうとした。そんなゆかりんを呼び止めるとこたん。
「あいつの怪我も治すつもりだったら、無理だよ。そいつは敵だもん。孫の手が動くはずない」
「だって、あのままだと・・・・」
 手加減はしたものの、相手はかなりの怪我を負っている。迅雷の怪我の比ではない。あのまま放っておくと命に関わるだろう。
「だって、さっきはロボットだったけど、あの人は人間だもん、殺しちゃ駄目だよ!」
「・・・・あたしは殺されかけたけどね」
 とこたんは不服そうに言った。だが、ゆかりんの気持ちも分かる。自分が殺したとなると、後味も悪いだろう。
 その時、部屋の奥にある扉が開き、もう1人のダークサイドが現れた。とっさに身構えた3人だったが、その男は怪我をして倒れている仲間を抱き上げ、3人娘をチラっと見て、また奥の部屋に戻っていった。
「な・・・・何なの」
「追う・・・・?」
 3人は警戒しつつ、奥の扉に近付いた。あと数メートル、という所で大きな爆音が聞こえた。
「きゃっ!」
 思わず耳を押さえ尻込みするゆかりん、慌ててドアを開けて部屋の中に入るとこたんと巳弥。
「うわっ・・・・」
 奥の部屋には巨大な穴が開いていて、外の景色が見えていた。あの男がこの巨大な穴を開けたのだろう、そしてそこから外へ出た。それしか考えられなかった。
「ひょっとして、この部屋は・・・・」
 とこたんは部屋の中を見渡した。色とりどりの幾何学模様が描かれた壁、彫り物が施された立派な柱、煌びやかな宝石のように輝く祭壇と、その中央にどっしりと置かれた台座。ここが「祭壇の間」であると容易に推測できる、他の部屋とは明らかに違う豪華さであった。
 そしてもう1つ推測できる事柄、台座の上にあったであろう「陽の玉」の姿は、そこにはなかった。
「さっきの敵が持って逃げた・・・・」
「追わなきゃ!」
 とこたんの怪我は孫の手で治療できたが、マジカルフェザーは修復できなかった。マジカルアイテムはマジカルアイテムでは修理できないのだろうか。ここは飛べるゆかりんと巳弥が敵の後を追うために外へ出たが、既にどこにも敵の姿はなかった。仲間を運びながらとは思えないほどの素早さだった。
「逃げられちゃった・・・・」
 ゆかりんと巳弥はとこたんの所に戻ってきた。
「仕方ないわ、相手が悪すぎるもの」
 欠けたマジカルフェザーが鬱陶しいとこたんは、羽根を小さく収納した。
「ところで・・・・」
 とこたんに視線を向けられた巳弥は、自分でもよく分からないのだが、とにかく自分が変身した経過を話した。
「とこたん、これで巳弥ちゃんがダークサイドだっていう疑いは晴れたよね」
 というゆかりんに、とこたんは冷ややかに返した。
「ダークサイドだからって、魔女っ娘になれないとは限らないわ。マジカルアイテムさえあれば変身出来るんじゃない?」
「そんなぁ」
「・・・・でも、出雲さん」
「えっ」
「助けてくれて、ありがとう」
 ピョコっと頭を下げるとこたんに、巳弥は照れたように「うん」と言った。
「さて、と」
 とこたんもお礼を言った照れを隠すように、話題を変えた。
「これでダークサイドの手に『陰の玉』『陽の玉』が渡ってしまったことになるわね」
「あ・・・・」
「こうなったら、もう『無の玉』を壊しちゃうしかないわ。出雲さんも、分かってくれるわよね?」
「その、あの・・・・」
「あいつらの強さを見たでしょ? 戦っても勝てっこないし、ダークサイドに帰られちゃったらこっちには乗り込む手段もない。無の玉を壊して三宝玉を揃わせないようにするのがベストだと思うのよね」
「あのね、実は・・・・」
 ゆかりんがか細い声で口篭もっていると「おい、お前たち!」という、聞き慣れない声がどこからか聞こえてきた。
「陽の玉を奪われたのはお前たちの責任だ。即刻、取り返してこい!」
 偉そうな物言いのウサギが立っていた。マントを羽織り、王冠を被り、紫色の玉の付いた杖を携えている。そしてその後ろには、これまた悪趣味なほど宝石などの装飾品で飾り付けられたドレスを纏った、少し太りぎみのウサギがいた。
「だ、誰?」
「我が名は・・・・」
 そこにミズタマとチェックが駆けつけた。
「みんな、無事か!」
「チェック、ミズタマ君!」
「ああっ!」
 2匹は派手で偉そうなウサギを見て、大声をあげた。
「だ、大神官様! それにミセス・ラビラビ!」
「この人が?」
 ゆかりんたちは改めて2匹の成金趣味なウサギを見た。このウサギがミズタマとチェックに「無の玉」を探すように命じた「大神官様」である。チェックが尊敬する大神官、ミズタマが崇拝するミセス・ラビラビ。2匹はこのトゥラビアの中でも、かなりの地位と名誉を持っているウサギであった。
「ははあっ」
 床にひれ伏すミズタマとチェック。
「突っ立ってないで、頭を下げるじょ!」
 ミズタマに言われ、とっさに膝を折るゆかりんと巳弥。
「透子っ」
 チェックに促されたとこたんだったが「何で?」と思いながら、とりあえず座った。だが平伏はしなかった。
「かしこまらずとも良い、面を上げよ」
「ははっ」
「さてお主ら」
 大神官は魔女っ娘三人に杖を向けた。1人1人、順番に。
「無の玉を手に入れたのはいいとしよう。だが代わりに陽の玉を奪われるとは、本末転倒だ。責任を持って我らの宝玉・陽の玉を取り返してこい」
「ちょ・・・・ちょっと待ちなさいよっ!」
 大神官の偉そうな物言いに頭に来たとこたんが言い返す。
「あたしたちだってね、一生懸命やったのよ! 切られて、痛かったんだからね!」
「頑張った、努力したというのは過程に過ぎない。結果だけを見れば、お前達はみすみす目の前で宝玉を奪われた。これは事実だ」
「そんなこと・・・・」
「それにそこのお前」
 ビシ!と杖を突き付けられ、ゆかりんはビクッと体を震わせた。
「お前は敵を倒せたにも関わらず、手加減をしたな」
「えと、あの・・・・」
「まさか、ダークサイドと裏で密約をしていたのではあるまいな? お前達は戦う振りをして、奴らが宝玉を持ち出す計画だったとも考えられる。表向きは我らに手を貸すように見せかけ、ダークサイドに宝玉の力を分けて貰う約束か」
「いい加減にしなさいよっ!」
「待て、透子!」
 立ち上がろうとするとこたんのスカートをチェックが必死で掴んだ。
「憤るところを見ると、図星か?」
「んなわけないでしょっ! それよりあなたたち、今までどこにいたのよ? さっきから聞いてると、どこかで見てたみたいな言い方じゃない」
「あぁ、見ていた」
 平然と言い放つ大神官。
「あんた、黙って見ていて偉そうなこと言わないでよ! 見てたんなら、あたしたちが一生懸命戦ってたのも知ってるでしょ! どうして加勢しようとか思わないわけ!? 自分たちの宝物が盗られようとしてたんだよ!?」
「我らは戦いに向いていない。勝てる可能性のない戦など、愚か者のすることだ。それに我は政(まつりごと)を司る存在。トゥラビア王の意思を王に代わって国民に伝える存在。我の命は我のものだけではない、この国の民全てのものなのだ。勝ち目のない戦いに身を投じ、命を落とすなど愚の骨頂、我の任務、責務を放棄する行為だ」
「・・・・!」
 とこたんは怒りで言葉が出てこない。巳弥も何か言い返したいが、言う勇気がない。ゆかりんは自分のせいで「無の玉」が奪われたことで落ち込んでしまっている。とこたんは取り合えずミズタマとチェックの顔を立て、この場は引き下がることにした。
「お前達の手助けをしてやろう」
 大神官が恩着せがましく言った。
「宝玉の情報を、今からこのミセスが占う。それを手掛かりにして『陽の玉』を捜して来い」
 ミセス・ラビラビが手に持っていた水晶を掲げると、それは手から離れて空中でピタリと静止した。ミセスの口から聞き慣れない言葉が流れ出す。水晶が光を放ち、クルクルと回り出した。他の一同はその光景を黙って見つめる。
「出ました・・・・」
 ミセスは微笑んだ。というより、唇を歪ませた。

 25th Love へ続く



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