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16th Love 「背中の痛み、心の痛み」
「スゥィートフェアリー・マジカルトゥインクルスター!」
「ぐあ!?」
迅雷は素早く飛びのいた。とこたんの目の前を無数の輝く星々が飛んでゆき、その眩しさに眼を閉じた。
「大丈夫、とこたん!」
「ゆかりん!」
「マジカルレシーバーの応答がないから授業を抜け出して戻ってみたんだけど・・・・誰、あなた!」
ゆかりんは孫の手を迅雷に向けた。
「ふん、馬鹿なゆかりんか。宝玉を放っておいて学校に行くんだからな、笑っちまったぜ」
「え? ど、どうして? 朝からゆかりを見張ってたの?」
「聞いて驚け、俺はなぁ・・・・」
「な、何なの、これぇ・・・・」
ゆかりんの後ろから、巳弥が姿を現した。
「巳弥ちゃん、どうして!?」
ゆかりんが驚いて尋ねる。
「ゆかりんが慌てて学校から飛び出して行ったから、何かあったんだと思ってついて来たの・・・・」
「ここは危ないから、外に!」
「私の家で、何をしてるの〜!」
もっともな感想だ。だがそれに答えている暇は無い。
「ミズタマ、巳弥ちゃんと一緒に外へ!」
「し、しかし、我輩の姿を見られたら・・・・」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
「わ、分かったじょ!」
ゆかりは孫の手で迅雷を牽制しつつ、ミズタマが部屋を出て行くのを確認した。廊下では「いや〜、何なのこのウサギ!」「早く逃げるじょ!」「喋ってる〜!」などという騒がしい声が聞こえた。
「とこたんっ」
「ゆかりん、来てくれたんだね」
「立てる?」
「うん、何とか。2人なら勝てるよ」
「そんな体じゃ無理だよ、とこたんは逃げて」
「でも」
「威勢はいいな、ゆかりん。だがお前のようなドジっ子に俺様が倒せるか?」
「だからどうしてゆかりのこと知ってるの! あっ」
ゆかりは部屋の隅に倒れている仔犬の姿を見つけた。迅雷が魂の器として使っていたその犬は、気を失ってはいるがまだ息はあった。
「ワンちゃんにも手を出したの!?」
「だからこいつはだな」
「酷いよ! そのワンちゃんは巳弥ちゃんが可愛がってた犬なんだよ!」
「だから、話を聞けよ」
「とこたんも酷い目に逢わせて、許せな〜い!」
「聞けって! 俺はなぁ」
「スゥィートフェアリー・スターライトスプラッシュ!」
「聞け〜!」
迅雷は魔法の孫の手から放たれた光のシャワーが迫り来るのを見た。光は1点から放射状に広がるため、この狭い部屋の中ではかわす場所がない。
(ちっ!)
迅雷は後ろ向きに電撃を放ち、襖をぶち破って隣の部屋に転がり込んだ。自分の開けた穴以外のスプラッシュは襖に遮られ、転がり込んだことによって迅雷の頭上を光の帯が通り過ぎていった。
「あ〜、巳弥ちゃんに怒られる!」
「てめぇが攻撃するからだ!」
「む〜、自分でやったのにゆかりのせいにするの!?」
ゆかりんはとこたんを巻き込まないように、迅雷の開けた穴から隣の部屋に移った。
「加勢、しなきゃ・・・・」
マジカルフェザーを開き、その浮力で立ち上がった透子は、魔法の肩叩きを構えてゆかりんの後を追おうとした。
「やっぱりね、姫宮ゆかりの後をつけてきて正解だったわ」
そこに現れた派手なコスチューム3人娘。水無池魅瑠、芽瑠、萌瑠だった。
「あなたたち・・・・」
「迅雷の奴、宝玉の在りかを突き止めていたのか」
魅瑠が仏壇に近寄り、金色の玉を見付けた。
「手柄を1人占めするつもりだったのかもな」
「・・・・」
とこたんは芽瑠の目を見た。芽瑠はとこたんを目を合わそうとしない。
「・・・・宝玉をどうするつもり?」
「何を言ってるんだい? 私たちの世界に持ち帰るに決っているじゃないか」
膝をついているとこたんを見下ろし、嘲るような言い方を魅瑠はした。
「芽瑠さん・・・・」
争いは止めようと言ったのに。手を組んで宝玉を探そうと言ったのに。その処分は話し合おうと決めたのに。
(あたし、出雲さんよりあなたを信じてたんだよ、水無池芽瑠さん。あなたとは考えが合う気がしたのに。あなたとなら・・・・)
芽瑠の口から漏れた言葉は、辛うじて聞き取れる大きさだった。
「・・・・ごめんなさい」
(私は姉さんを・・・・裏切れない。先生のために宝玉を持って帰るという、姉さんの気持ちを裏切れない)
「宝玉は私達が頂くわ」
そう言って芽瑠はとこたんに背を向けた。
「あ、じんらい、元の姿に戻ってる!」
萌瑠が隣部屋でゆかりんと対峙している迅雷に気付いて叫んだ。
「お〜、本当だ。あいつがあの姿になれば、こいつらなんか相手にならないな」
「犬も可愛かったのにね」
萌瑠は仔犬の迅雷を思い出してキャッキャと笑った。
「さて魔女っ娘たちは迅雷に任せて、私たちは宝玉を頂いて帰ろうかね」
仏壇に伸びた魅瑠の手が、目に見えない何かによって弾かれる。
「な、なんだ?」
「結界のようなものが張られているみたいですね」
芽瑠が仏壇に顔を近付けてそう分析した。
「なら、これごと破壊するまでだ」
「駄目よ! それは仏壇って言って、死んだ人を供養するための・・・・」
「くたばり損ないは黙ってな!」
魅瑠に蹴られ、再び畳の上に転がるとこたん。
(何とかしないと、この人たちの弱点は光、太陽・・・・太陽!)
とこたんは肩叩きを天上に向け、魔力を放出した。
爆発音と共に天上が崩れ、穴が開いた。夏の太陽がポッカリ開いた屋根の穴から部屋の中に差し込んでくる。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
「まぶしいよ〜!」
三姉妹はカメレオンスーツを着ていたが、急に差し込んできた光に目が眩んだ。
「きゃああっ!」
隣の部屋では電撃を受け、ゆかりんの体は電気のショックでマヒ状態になっていた。
(痛い・・・・よ・・・・)
(ゆかり、もう戦わないって決めたのに。なのに、巳弥ちゃん、透子、みんなを傷付ける人を許せない。怖いけど、この人たちを許せない!)
ゆかりんの視界に、隣の部屋で目を押さえている水無池三姉妹の姿が映った。
(あの人も、先生を傷付けた、許せない!)
「きゃああ、天上が!」
轟音に驚いてミズタマの静止を振り切って家の中に戻った巳弥が見たものは、眩しい太陽の日差しが降り注ぐ客間だった。
「な、なんてことするんですか〜!」
「うるさいね!」
魅瑠がサッと巳弥の首の後ろに手を回したかと思うと、巳弥の体から力が抜け、その場にペタンと座り込んでしまった。
「大人しくしな! 殺しはしないから」
眩しさに目が慣れた魅瑠は、改めて宝玉を手に入れるべく仏壇を破壊しようと近付いた。その時、マジカルフェザーによってとこたんの開けた穴から上空に飛び上がったゆかりんが、渾身のスプラッシュを解き放った。
「スゥィートフェアリー・スターライトスプラッシュ!」
上空から下方に向かって放たれた光の帯は、逃げる場所がないほどに広がりながら迅雷と三姉妹に向かって伸びてゆく。
「危ない、逃げろお前ら!」
素早い動きでスプラッシュの圏外に逃げた迅雷が、仏壇の前でまごついている三姉妹に向かって叫んだ。
「芽瑠、萌瑠を!」
「はいっ!」
魅瑠が左に飛び、芽瑠は萌瑠を抱えて右に飛んだ。とこたんも眩しいので慌ててマジカルフェザーで飛び退く。
スプラッシュの軌道上には、魅瑠によって力の抜けた巳弥が残された。
「あっ!!」
ゆかりんは巳弥に気付いたが、射出してしまったスプラッシュの軌道は変えられない。
「馬鹿野郎! 巳弥だって光に弱い体なんだぞ!」
そう叫んだのは迅雷だった。
光の飛沫が炸裂した。誰もがその眩しさに目を背ける。
「み・・・・」
ゆかりんは確かに光に飲まれる直前の巳弥の姿を見た。光に弱い巳弥の体に自分がスプラッシュを浴びせたことになる。
「巳弥ちゃん・・・・巳弥・・・・」
最初にその姿を確認したのは魅瑠だった。
「迅雷・・・・?」
芽瑠、萌瑠、とこたん、そして目を背けていたゆかりんもその光景を見た。
「くっ・・・・」
巳弥は無傷だった。
その前に光を遮るように立ちはだかっていたのは、迅雷だった。
「な、なにしてるんだ、俺・・・・」
迅雷の背中からは煙が出ていた。カメレオンスーツのあちこちが破れ、背中が焼け焦げていたのだ。
「気が付いたら・・・・体が動いていた。俺は何も考えてなかった。どうして、俺・・・・」
そんな迅雷を何が起こったか分からずに見つめる巳弥。
「痛ぇ・・・・」
ドサ、とその場に倒れ込む迅雷。
「迅雷! 芽瑠、そっちを持って!」
魅瑠は芽瑠に指示し、2人で迅雷の体を持ち上げた。
「宝玉は・・・・」
そう言いながら宝玉の姿を確かめようと仏壇を見た魅瑠だったが・・・・。
「!?」
宝玉はそこにはなかった。金色に光る玉は、仏壇から消え失せていたのだ。
(いつの間に隠したんだ?)
「萌瑠、そいつから宝玉を奪うんだよ!」
近くにいたのはとこたんだ。魅瑠はとこたんしか隠せるものはいないと思い、今の怪我をしたとこたんなら萌瑠でも奪えるだろうと判断して、迅雷の体を支えて跳躍した。誰も気付かなかったがその後姿には、それぞれ二本の尻尾が出ていた。
「ほうぎょく、ちょーだい」
萌瑠がとこたんに向かって手の平を差し出す。しかしとこたんの返事は「残念ね」だった。
「どこに隠したの〜!」
「さぁねぇ・・・・あたしは知らないわよ。何なら、身体検査してみる? 見付からないと思うけど」
「ええ〜! ど、どこに行ったの〜?」
萌瑠は辺りを見回し、部屋の中にないと分かると、慌てて外に飛び出して行った。
ゆかりんがゆっくりと降りてきたのを見て、とこたんがヨロヨロと近付く。
「出雲さんは無事よ」
とこたんがそう言うと、ゆかりんは彼女にぶつかるように抱き付いてきた。
「ううっ・・・・」
そんなゆかりんを抱きしめるとこたん。
「ぐすっ、うぅっ・・・・」
ゆかりんはとこたんの胸に顔を押し付けて、泣いた。
「ゆかり、憧れてた。魔法を使って、悪い人たちと戦うこと。アニメみたいに、カッコ良く美しく敵をやっつけること。でも現実はそんなに綺麗なものじゃない。戦うことって、本当は悲しくて、辛くて、嫌なことなんだね・・・・」
「ゆかり・・・・」
「透子を助けようと思って、巳弥ちゃんを助けようと思って、でもゆかりは巳弥ちゃんを危ない目に合わせて・・・・うわぁぁぁぁ〜ん・・・・ううっ、わぁぁぁん・・・・」
巳弥は訳が分からないまま、座り込んだ姿勢でそんな2人を眺めていた。
チェックは宝玉をスカーフに包んで、風呂敷のように担いで走っていた。
出雲家の騒動の中、トゥラビアから駆け付けたチェックがとこたんから宝玉を受け取っていたのだった。
(このままトゥラビアに持ち帰れば・・・・)
道を急ぐチェックの前に、1羽のカラスが飛んできた。かなりの低空飛行だなと思いながらも、まさか自分目掛けて飛んで来ているとは思ってもみないチェックは、宝玉を包んだスカーフに体当たりされ、ゴロゴロと道を転がった。
(くそ、何だあのカラスは・・・・宝玉!?)
チェックが宝玉の姿を探すと、先ほどのカラスが宝玉の上に乗り、掴み上げようとしているように見えた。
「な、何をしている!」
だがその球体はカラスの足には大きすぎ、ツルツルと滑るだけだった。
「それは食べるものではない!」
カラスを追い払おうとするチェックだが、威嚇の声を上げて嘴で突付き返して来る。
(こいつ、ただのカラスではない・・・・?)
そう感じたチェックは、手に杖を出現させた。先に付いている緑色の玉が発光する。その杖を構え、ジリジリと宝玉に乗っているカラスに近付いた。カラスも攻撃に備えて身構える。
「そりゃあ!」
「カアッ!」
チェックの放った杖の一撃をすんででかわしたカラスは、嘴をウサギの頭に叩き込もうとしたが、素早く反応したチェックの杖が翻り、カラスの脇腹を直撃した。その衝撃で打ち落とされたカラスだったが、急な反転を余儀なくされたチェックの体はそのままバランスを崩して宝玉の上に倒れ込み、思い切り頭を打ちつけた。
両者ノックダウン。
ようやく泣き終えたゆかりんととこたんは、ボーゼンとなっている巳弥に事情を説明した。分かって貰えるかどうか不安だったが、分かって貰うしかなかった。こちらもようやく魅瑠の力が切れて動けるようになった巳弥は、とこたんの治療の為に救急箱を持って来てくれた。
「ごめんね、家を壊しちゃって・・・・」
出雲家に最も壊滅的なダメージを与えたのは、天上をブチ抜いたとこたんだった。
「後で魔法で修理するから・・・・あ、でも宝玉を守ることにならないから、肩叩きが承認してくれるかなぁ・・・・駄目だったら、大工さん呼ぶよ」
透子の家はお金持ちなので、お父様にねだれば修理費は出してくれるだろう。修理が終わるまでの間、巳弥を穴が開いて無用心なこの家で寝かせるわけにはいかない。だが透子はまだ巳弥への疑惑を解いていない。むしろ迅雷が巳弥を庇ったことで、一層巳弥はイニシエートの仲間なのではないかと疑いを深めていた。ゆかりなら自分の家に泊めてあげると言うだろうが、透子はゆかりの家に巳弥が泊まることは歓迎できなかった。
(こうなったらいい機会かな)
「ねぇ出雲さん、あなたとあいつら、どんな関係なの?」
「どんなって・・・・全然知らないわ」
「でもあの男の人、あなたのことを庇ったじゃない。あなたが光に弱いって事も知ってるし」
「そんなこと言われても・・・・」
「そう言えばあいつ、ここにいる仔犬から出てきたのよね」
「え!?」
巳弥と、それまで一言も発しなかったゆかりの口から驚きの声が上がる。
「どういうこと、藤堂院さん」
「こっちが聞きたいわ。仔犬から霧が出てきて、イタチになって、男の人になって」
「・・・・ワンちゃんが・・・・」
巳弥は項垂れ、独り言のように小さな声で呟いた。
「ワンちゃん・・・・宝玉が目当てで私に近付いたの・・・・?」
「巳弥ちゃん・・・・」
「でも、どうして? だったら何故私を庇ったの? あんな大怪我をしてまで。私より光に弱いはずなのに・・・・」
「全治5日」
迅雷の治療を終えた芽瑠は彼の怪我の具合をそう診断した。
「5日!?」
背中を治療しているため、ずっとうつ伏せでベッドに寝ている迅雷。蒸し暑い夜に、ずっとうつ伏せでいることは苦痛だった。
「全く、馬鹿だね迅雷」
「何だと魅瑠! いてててっ」
「あんたねぇ、この前の私の全身火傷なんかの比じゃないほど怪我してるんだ。はっきり言って、背中が燃えてるんだ。安静にしてな。全く、宝玉を見付けておいて私たちに報告しなかった報いさ」
「言おうと思ってたんだ、俺の力が戻ったらな。その前にあのとこたん、だっけ? あいつが現れて・・・・」
萌瑠は宝玉を持ち帰れなくて、シュンとなっていた。そんな萌瑠に芽瑠が優しく声を掛ける。
「いいのよ、萌瑠。宝玉はあの子達が持っているのは確実だから。後で奪い返せばいいわ。ね、姉さん」
「あぁ、だがグズグズしているとトゥラビアに持って行かれるかもしれない。そうなったらやっかいだよ」
トゥラビアからこの世界に通じる道は、イニシエートである彼女たちは知らない。ノウハウもないため、イニシエートはトゥラビアに行く手段がないのだ。
「いざとなったらあのウサギを締め上げて道を聞き出すさ」
魅瑠は「腹が減った」と言って、迅雷の治療に忙しい芽瑠に気を使って、カップ麺を作るための湯を沸かしに台所へ向かった。
「なぁ、芽瑠」
「なに?」
「俺、どうしてあんな馬鹿なことをしたんだと思う? あれかな、犬の時に一度、あいつに助けられたことがあったから、借りを返したかったのかな」
「・・・・分からないの?」
「馬鹿だからな」
「本当に分からないの?」
「あぁ。優等生の芽瑠なら分かるだろうと思ってな」
嫌味っぽくなく、純粋に質問をしている迅雷を見て、芽瑠はクスッと笑った。
「笑うなよ」
「ごめん、迅雷君。あのね、迅雷君はあの巳弥って子を好きなのよ」
「・・・・・・・・?」
迅雷は頭に巳弥の姿を思い浮かべた。
巳弥の笑顔。巳弥の泣き顔。巳弥の困った顔。巳弥の寝顔・・・・。
「あぁ、そうなのか」
「そうなのよ」
「そんなわけあるか! 馬鹿言うな」
「馬鹿なことじゃないわ。迅雷君が本当に気付いてないのか、気付かない振りをしているのかは分からないけど・・・・過程はどうあれ、答えは合っているはずよ」
透子と交わした数学の話を思い出す芽瑠。
「芽瑠〜、このカップ麺のかやくは先に入れるのか〜?」
台所から魅瑠の声が聞こえ、芽瑠は「ちょっと待っててね」と席を立った。芽瑠が出て行ったのを確認すると、萌瑠は迅雷の寝ているベッドに近付いて話し掛けた。
「もる、失敗しちゃった」
「・・・・」
「芽瑠お姉ちゃん、怒ってるかな」
「芽瑠が言ったろ。怒ってなんかないぞ」
「・・・・うん」
普段は頭に付けている大きなリボンを手で伸ばしたり縮めたりしている萌瑠。
「萌瑠は芽瑠が好きか」
「うん!」
「どんな風に好きだ?」
「どんな? う〜ん、難しいよ、じんらい」
「そうだな」
(難しいことは俺には分からない。馬鹿だからな)
会って確かめるか?
いや、もう会えない。
あの子は俺が犬だったから優しかったんだ。
俺の正体が分かれば、あんな笑顔は見せてはくれないだろう。
俺はあの子を騙していたんだ。
「泣いてるの? じんらい」
「・・・・背中が痛いんだ」
17th Love へ続く
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