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タイトル


 14th Love 「麦わらイリュージョン」


「ゆかりん、大丈夫か?」
 着替えや学校の用意を持って、再び出雲家へ向かうゆかりん。その横を心配そうな表情でミズタマが歩いている。その後ろに、もしものことがあるといけないということで、マジカルレシーバーで呼び出された透子が歩いていた。透子は元の姿のままである。
「1人だと心配だじょ」
「だって、ミズタマを巳弥ちゃんに紹介するのはさすがにまずくない?」
「それはそうだが・・・・」
「じゃあさ、ゆかりの持って来たヌイグルミってことにする? その代わり、動いちゃ駄目よ。息もしちゃ駄目よ」
「殺す気か!」
「ま、そんなわけだから、心配しないで」
「どんなわけだじょ・・・・透子にも泊まって貰うというのはどうだじょ?」
「私は遠慮するよ」
 すかさず透子がミズタマの意見を却下する。
「透子、冷たいじょ」
「違うよ、ミズタマ。巳弥ちゃんは人見知りするから、透子も泊まるって言ったら、ゆかりも断られちゃうかもしれないよ。透子はそれを知ってるんだよ」
「ゆかり、怖くないの?」
 透子の問いに立ち止まって振り返るゆかりん。
「怖い? 何が?」
「出雲巳弥の家に泊まること」
「そりゃあ、宝玉を狙う人が来たら怖いけど・・・・でも、巳弥ちゃんを守ってあげたいの。もう・・・・誰も傷付いて欲しくないの」
「・・・・そう」
(出雲巳弥が敵だという可能性があるという認識は、ゆかりにはないのね)
 再び歩き出す2人と1匹。
「でも巳弥ちゃん、ゆかりに宝玉を預けてくれたらいいのになぁ。信用されてないのかな、ゆかり」
「そりゃ、まだ知り合って間がないわけだから」
「ゆかりは巳弥ちゃんのこと、信じてるのになぁ」
「・・・・」
「実はね、ちょっと楽しみなんだ。お泊り」
 ゆかりは持ってきた荷物を大きく振りながら歩いていた。
 やがて出雲家が見えてきて、ゆかりは透子とミズタマに手を振って門を開けた。飛び石の上をポンポンと跳ね、玄関に向かうゆかりに透子が声をかけた。
「ゆかり」
「なに?」
「お願いがあるの。出雲さんの腕、脚、どこでもいい。機会があったら触ってみて欲しいの」
「どうして?」
「あの萌瑠っていう子の腕を掴んだ時の感触と同じかどうか、調べて」
「えっと、萌瑠って・・・・」
「一番小さい子」
「あ、リボンの子ね。ややこしい名前だから、あの姉妹。で、どうして?」
「違ったら、あたしが出雲さんを信用できる理由ができるから。いい? 絶対に気付かれないように、さりげなく調べるのよ」
「・・・・うん、分ったよ。でも、きっと違うからね」
 そう言って、ゆかりは出雲家の玄関を開け、入って行った。
「どうする? ミズタマ君」
「どうとは?」
「ゆかりだけに任せて大丈夫なの?」
「危険を感じたらレシーバーで連絡を入れるように言ってはいるが・・・・」
「それから駆けつけても、間に合わないかもしれないよ。もしくは、連絡を取る間もなく危険な目に遭う可能性だってあるわ。例えば、寝ている間に・・・・」
「それは、出雲巳弥が敵だってことか?」
「・・・・」
 出雲家の近くにある小さな公園で、透子はベンチに腰を下ろした。ミズタマもその隣に飛び上がって、並んで座った。
「そうだ、リチャードに報告しておくじょ」
 ミズタマはマジカルレシーバーを取り出し、チェック用の短縮ダイヤルを押した。
「もしもし、エリックだじょ」
(彼らの世界でも「もしもし」って言うのかしら?)
 透子はどうでもいい素朴な疑問を感じた。
「こっちは宝玉らしき物が見付かったじょ。あぁ、見付けたのはゆかりんだじょ。だから宝玉かどうかまだ怪しいが・・・・そっちは何をしているんだ? そうか、大神官様に。順調か? そうか、そろそろ帰れるんだな? あぁ、じゃまたな」
 ミズタマは通信を切ったのを見て、透子は口を開いた。
「あたしとゆかりって、合わないのかもね」
「いきなり、何だじょ?」
「ゆかりは『どうすれば楽しいか』を考えて行動している。あたしは『どうすれば悲しくないか』をいつも考えてる。だからゆかりはいつも人を信じるし、あたしは信じない。正直、分らないんだ。どうして出雲巳弥を信じられるのか」
「多分、ゆかりんは何も考えてないじょ」
「うん・・・・」
 透子は頭の上の街灯に集まる蛾を気にしていた。
 ミズタマはしばらく無言で集まってくる蚊を耳で追い払っていたが、やがて透子に向かって言った。
「だから合うんじゃないか?」
「だから?」
「2人が『どうすれば楽しいか』『どうすれば悲しくないか』を考えていれば、楽しくなるしか道はないじょ」
「ん、そうか」
 再び無口になる1人と1匹。
「あたしねぇ」
 透子は視線を遠くして、自嘲するように呟いた。
「出雲さんが憎いのかな」
「憎い?」
「ゆかりを取られそうで、怖いの。たった数日でゆかりと仲良くなって、あんなに信用されて。あたし、ひょっとしたら出雲さんが敵だったらいいなって思ってるかもしれないよ」
 静かな公園に、遠くから犬の吠えている声が聞こえてくる。この辺りは閑静な住宅地なので、夜も更けたこの時間には人通りもあまりない。
「・・・・あ」
 透子は街灯の上にいる一羽のカラスに気付いた。夜更けに見るカラスの姿は無気味で、透子は今にもそのカラスが襲って来そうな気がして、腰を浮かした。
「どうしたじょ?」
「あのカラス、何だか怖くて。ねぇ、カラスも鳥目だよね? なのに、どこから飛んできたんだろう」
 さっさとベンチから立ち上がり、公園を後にする透子。「闇夜のカラス」という言葉が頭に浮かんだ。
「あ、そう言えばミズタマ君、ゆかり、学校に行く用意してたよね?」
「ああ、そのようだな」
「宝玉らしきものが見つかったのに、学校へ行く必要、あるのかな?」
「・・・・我輩に聞くな、ゆかりんの行動はまだ分らないことが多いじょ。そう言えば宝玉が本物だとしたら、もうその必要はないな。透子はどうするじょ?」
「あたしは・・・・」

 一方その頃、トゥラビアに帰っているチェックはと言うと・・・・。
(エリックにはああ言ったが、全然予定通りじゃないな)
「おいリチャード、いい加減諦めろよ」
 リチャード(チェック)は、大神殿の前に座り込みを決めてから一睡もせずにこの場を動いていなかった。大神殿とは、チェックやミズタマはもちろん、多くの国民が信頼を寄せている大神官の住む宮殿である。国の会議や行事でも使われている。
「大神官様に迷惑がかかるだろ? 何をしたいんだ、お前」
 チェックの肩に手を置き、ここを立ち退くように説得しているのは彼の友達のビリィだ。何も食べずに座り込みをしているチェックの噂を聞き、こうして食事を運んできてくれたのだった。
「ありがとう、ビリィ。だが俺は大神官様にお会いして、直接聞かなければならないことがあるんだ」
 大神官なら何かを知っているかも、という透子の話が気になり、もう一度きっちりと話を聞こうと思ったチェックは、ミズタマに内緒でトゥラビアに帰ったのだった。以前に運良く大神官に面会出来た時にもう少し詳しく話を聞いていれば、と反省したチェックは、単身乗り込んできたというわけだ。
 聞くことは山ほどある。
 大神官はダークサイドについてどこまで知っているのか。そもそもダークサイドとはどういう存在なのか。透子が言うように知っていて隠しているのか。だとすると、何故隠すのか。
 三宝玉を手に入れた後、どう使うのか・・・・。
(大神官様やトゥラビア王が悪いことに使うなんてことはあるわけないが)
 チェックはミズタマよりも愛国心というか、国に対する信頼が厚い。だから王や大神官の命である「宝玉を持ち帰ってくること」は、何としてもやり遂げなければならない任務だった。
 だが、それによりゆかりや透子が危険な目に遭うのは心苦しい。まだ浅い付き合いとはいえ、彼女たちが好きだし、大事な仲間だと思っている。もし大神官がチェックたちに話していないことがあるとすれば、出来る限り聞いておかなければならないと思う。どんな些細な情報でも、知っているか知らないかで有利にも不利にもなるからだ。
 例えば彼ら(彼女ら)が光に弱いと最初から分かっていれば、もっと良い対処法があったかも知れない。彼らがどこから、どのような方法で来たのかが分かれば、これ以上敵が地上界に来るのを防げるかもしれない。
(これ以上・・・・? そうか、地上に来ているダークサイドが三姉妹だけとは限らない・・・・ひょっとしたら、もうかなりの敵が来ている可能性もある?)
 チェックは立ち上がり、神殿の出入り口を叩いた。
「大神官様! お願いです、話を聞いて下さい! 大神官様! お聞きしたいことがあります! どうか、開けて下さい!」
 ドンドン、という音が静かな夜の神殿に響く。
(のんびりしている内に、取り返しが付かなくなる可能性もある!)
 ドンドンドン、頑丈なドアを何度も叩いている内に、チェックの手は赤く腫れてきた。
「うるさいぞ!」
 座り込みだけならとチェックのことを放っておいた門番が、その音を聞きつけて飛んできた。
「大声を出すなら、放り出すぞ!」
「頼む、大神官様にお目通りを!」
「今、何時だと思っているんだ! 大神官様はお休みだ!」
「し、しかし、時間が空けば会って下さると聞いたからここでこうして待っていたんだ」
「睡眠も大神官様には大事な仕事だ。朝からはまた、お国のための激務が待っておられるのだぞ」
「それは分かるが、こっちの話も重要な話なんだ! 大神官様から命を受けて探していた宝玉が・・・・」
 その時、ギィという音がして、分厚いドアが開いた。
「リチャード・フォン・ヒューデリック・ラビリーヌ」
「ああっ、だ、大神官様!」
 ひざまずき頭を下げるチェック。門番たちも同じ格好をした。
「話を聞こう。入りなさい」
「は、はいっ!」
 トゥラビアの王に仕える神官の頂点に位置するのがこの大神官である。本名、年齢共に不詳だが、慈悲深く慈愛に満ちた人物と評判高く、彼を信仰する者は多い。人物と書いたが、彼もやはり容姿はウサギで、チェックたちより二回りは大きい。
 大神官は寝ていたとは思えないような正装で、煌びやかなエメラルド色の法衣を着て、同色のマントを引きずりながら神官の間にチェックを案内した。
「こちらへ」
 大神官はチェックを手招きして、自分の椅子の前まで呼び寄せた。
「お休みの所、失礼しました」
「良い。それよりも、先程そなた、宝玉がどうとか言っておったな」
「はい、実は・・・・」
「言わずとも良い」
 大神官の腕がチェックに向かって伸びたかと思うと、チェックの頭上に手の平が乗せられた。
「こ、これは?」
「いいから黙っておれ」
 大神官が目を閉じたかと思うと、チェックは頭の中から当てられた手の平に向かって、何かが流れ出すような感覚を覚えた。
(何だ、これは・・・・?)
「余計なことを考えるな。私に報告したい事を頭に思い浮かべればいい」
「は、はい」
「・・・・なるほどな・・・・やはり・・・・そういうことか・・・・よく分かった」
(やはり凄い、大神官様は・・・・)
 感心していたチェックの頭に、今度は大神官の手の平から何かが流れ込んできた。
(!?)
 頭の中に違和感を覚えて身を捩ろうとしたチェックだったが、体が硬直したように動かなかった。
(こ、これは何だ?)
 やがてチェックの体から力が抜け、彼は何が起こったか分からないままその場に崩れ落ちた。
「ミセス」
 倒れたチェックを横目に、大神官は幕の後ろに待機していたミセス・ラビラビを呼んだ。幕を押しのけて現れたのは、派手な衣装と装飾品に彩られた体格の良いウサギだった。彼女がこの国で一番と噂の高い占い師ミセス・ラビラビだ。
「お呼び? 大神官」
「今すぐ出雲巳弥という娘の家を占ってくれ」
「いずもみや?」
「今、そこに宝玉がある。例の中学校の近くのはずだ」
「しかし、その一帯には宝玉の反応はなかったよ」
「ミセスの占いでも分からない、何か小癪な仕掛けがあるのだろう」
「王には、このことは?」
「まだ宝玉と分かったわけではない。報告は手に入れてからでも遅くあるまい」

 夜の11時。いつもなら既に巳弥は寝ている時間だった。
「ごめんね、巳弥ちゃん。こんな遅い時間に」
「ううん」
 巳弥はゆかりの為に長らく使っていなかった敷布団を出してきて、布団乾燥機で乾燥させていた。ゆかりは畳に座布団でもいいと言ったが、巳弥が「お客さんだから」と言って布団を出したのだ。
(迷惑だと思ってるなら、帰れよ)
 ゆかりを邪魔だと思っている迅雷は、そんなやりとりをしている2人を眺めていた。
「ゆかりん、お風呂入る? まだ暖かいと思う」
「うん、ありがとう」
「ねぇ、ゆかりん。さっきの話だけど・・・・本当なの? あの玉がその・・・・」
「宝玉、だと思う」
「それ、一体何なの?」
「ゆかりもよく知らなくて、どう説明していいか分らないけど・・・・とにかく、宝玉っていうのが3つあって、揃えると凄い力があるんだって」
「凄い力って?」
「さぁ・・・・」
「・・・・」
「とにかく、悪い人たちの手に渡ったら駄目なの」
「悪い人たちって? ゆかりんは、どうしてその宝玉を悪い人たちから守ろうとしているの?」
「ん〜と・・・・」
 まさか「魔法少女なんだよ!」と名乗るわけにはいかない。かと言って、一介の中学生が「悪者から宝玉を守る」使命を帯びている理由を説明することが出来ない。ゆかりは何と答えていいか分らず、口を開くことが出来ないでいた。そんなゆかりの答えを求めてじっと待っていた巳弥だったが、ゆかりの表情を見て「お風呂、冷めちゃうから」と促した。
(うう、こんなんじゃ巳弥ちゃん、信じてくれないよねぇ・・・・でもでも、本当のことを言うわけにはいかないじゃない? だって)
 だって?
 だって何なのだろう、とゆかりは思った。
 自分が魔法少女だと巳弥に打ち明けたところで、どうなると言うのだろう? ミズタマたちにも正体を誰かに話さないようにとは言われていないし、バレたところでどうなるものでもない。巳弥が面白がってみんなに言いふらすようなことがない限りは、巳弥がゆかりたちのことを知っていた方が宝玉を守るには何かと都合がいいのではないか。
(話してもいいのかな? でも一応、ミズタマや透子に相談した方がいいかな)
 ゆかりはお風呂に入りながら、正体を言うべきかどうかをずっと考えていた。

 ゆかり用の布団を敷いても、巳弥の部屋にはまだ余裕があった。部屋自体が広いこともあるが、巳弥の部屋は日頃からよく片付けが行われており、整然としていた。それ以前に装飾品や玩具といった余計な物がなかったのだが。
 巳弥が「ワンちゃんの様子を見てくる」と言って出て行ったので、ゆかりは1人で巳弥の部屋を見回していた。女の子らしいファンシーなグッズやポスターなどは見当たらない。巳弥のイメージに合っていると言えば合っているのだが、年頃の女の子の部屋としてはやはり淋しかった。
 ゆかりは壁のフックに掛けられている、巳弥のトレードマークである麦藁帽子を手に取ってみた。
(巳弥ちゃんのお母さんの形見・・・・)
 巳弥が言っていた、彼女を守ってくれているという魔法の帽子。ゆかりは何気なくその麦藁帽子を被ってみた。
「!」
(あれ・・・・? 真っ暗だ。どうして? 停電? それとも・・・・夢? ゆかり、そんなに眠くなかったはずなのに)
 月の無い夜。
 空中。マジカルフェザーを出しているわけでもないのに、ゆかりの体は浮いていた。
 そしてその眼下で蠢いているもの・・・・。
(な、なに、あれ!?)
 蛇。しかもかなりの大きさの蛇、大蛇だった。それが何匹も固まって蠢いている。
(やだぁ、気持ち悪いよ〜!)
 ゆかりはその場から逃げようとしたが、体が動かない。そんなゆかりを、1匹の蛇の眼が捕えた。
(やだ〜、食べられるぅ〜!)
 その時、光の粒が背後から飛んできたかと思うと、ゆかりの体を通り抜け、鎌首を持ち上げていた蛇に次々にぶつかっていった。その粒はコントロールされたかのように、1つ残らず蛇の体に当たり、更に細かい粒となってはじけた。光の粒を受けた蛇は苦しそうに首を振り、地面に倒れ込んだ。
(一体・・・・)
 ゆかりは光が飛んできた方向を見るために振り向いた。
 そこには、1人の少女が浮かんでいた。魔女のような帽子を被り、マントを靡かせて。光が眩しく、ゆかりはその女の子の顔を確かめることが出来なかった。
(魔法・・・・少女?)
 その瞬間、少女も、大蛇も、全てが消えた。
 幸せそうに微笑むカップルがいた。
 小さな赤ん坊を抱きかかえてあやす母親がいた。
 床に伏せ、娘の手を握り締める父親がいた。
(何なの、これ、一体何なの!?)
 別れ。
 死。
 金色の玉。
(宝玉!?)
 蛇。
(また蛇〜?)
 少女。
(え? 巳弥ちゃん?)
 ブラックアウト。
「!」
 気が付くと、ゆかりは麦藁帽子を脱いで胸に抱きしめていた。
(何・・・・だったの、今の・・・・)
 鼓動が激しい。一瞬の夢にしては、妙にリアルで、それでいて抽象的な映像だった。
(この帽子を被ったから? でもこれは、巳弥ちゃんがいつも被っているものなのに。それともゆかりだから見えたの? あの魔法少女は誰? そして最後に見た女の子は巳弥ちゃん?)
(怖くて、暖かくて、悲しくて、優しくて・・・・)
 ゆかりは形が変わるほど抱きしめていた麦藁帽子の形を直し、改めて眺めてみた。
(メッセージ・・・・かな。でもゆかり、あんまり頭良くないから、分かんないよ)
 もう一度その帽子を被ってみる勇気は、ゆかりにはなかった。壁のフックに麦藁帽子を戻した時、巳弥が帰ってきた。
「あれ、ワンちゃん連れて来たの?」
「うん、一緒に寝たいみたい・・・・」
「駄目だよ、オシッコとかするかもしれないよ」
(あれ、ワンちゃん、今ゆかりを睨んだ気がする・・・・気のせいだよね)
「大丈夫よ、ワンちゃん、頭いいから」
「でも、スケベだよ、そいつ」
(あれ、やっぱり睨んでる。変な犬)
「もう遅いから、早く寝よう」
 巳弥はそう言って、目覚まし時計をセットしてベッドに乗った。ゆかりは先ほどの夢か何なのか分からない出来事を巳弥に話すべきか迷った。
「ねぇ巳弥ちゃん、あの帽子だけど・・・・」
「うん?」
「被った時、何か見えない?」
「え?」
「頭の中にこう、もふぁ〜っと何かが流れ込んでくるっていうか・・・・」
「・・・・何なの、それ」
「・・・・いいや、ごめん、寝よう、おやすみなさい!」
(巳弥ちゃんには見えない。やっぱりゆかりが魔法少女だから? でも、どうして?)
 電気が消えると、あまり考え事をする間もなくゆかりは眠りに落ちた。難しいことを考えると、すぐに寝てしまうのだった。

 15th Love へ続く



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