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12th Love 「出雲家潜入作戦」
ほどなく目標のデパートに着き、入り口の自動ドアの前に立ったゆかりが後ろを振り向くと、犬が離れずについて来ていた。
「こら、駄目でしょ」
ゆかりは振り向いて腰に手を当て、犬に向かって言った。
デパートの自動ドアが開き、ひんやりとした空気が流れ出す。犬はゆかりの言葉を無視して、そのまま店内へと入って行った。
「お客様、当店はペットを連れてのご入店はお断りしております」
近くにいたデパガが目ざとく近寄ってきて、ゆかりに注意した。そんなことを言われてもゆかりには迷惑である。
「いえ、私たちの犬じゃないんです」
「野良犬ですか? では放り出します」
ちょっと体格の良いデパガは犬を片手ですくうように持ち上げると、ドアを開けて外に放るような勢いでデパートの出入り口へと向かった。
「待って」
慌ててその後を巳弥が追いかけた。
「乱暴にしないで」
「でも、野良犬でしょう?」
「ここに」
巳弥は外に出てすぐの地面を指差した。デパガは何か言いたげな顔をしたが、犬を地面に置いた。巳弥がしゃがんで犬に話し掛ける。
「あのね、あなたはここには入れないの。私たちお買い物してくるから、ここで待ってて」
(何だこいつ、犬に言って分かるわけないだろ?)
迅雷は巳弥の顔を不思議そうに見つめた。
「ね」
(・・・・おう、分かった。早く頼むぞ)
迅雷は尻尾を振って答えた。
それを見たデパガは「やっぱりあんたの犬じゃないの?」という疑いの眼差しを巳弥に送って、持ち場に戻った。
「凄い、出雲さん」
「あの子が賢いのよ」
「う〜ん、何だか犬っぽくないよね、あの子」
「そうだね」
その後、ゆかりと巳弥はアクセサリーやCD、洋服を見て回った。
「ね、出雲さん、これはどう?」
ゆかりは赤いワンピースを巳弥の体に当ててみた。
「え? こ、こんなの着たことないよ」
「だから着てみるんじゃん」
「恥ずかしいよ・・・・」
「む〜、じゃあゆかりは恥ずかしい服ばっかり着てることになるぞ」
「あ、ごめん・・・・」
本気で謝る巳弥に、ゆかりはニッコリ笑ってワンピースを手渡した。
「さ、着てみよ」
「でも半袖・・・・」
「あ、そうか」
巳弥は肌が弱く、屋外では長袖しか着れないと言っていたことを忘れていたゆかりは自分の失敗を悟り、ワンピースをハンガーに戻した。
「でも出雲さん、家にいる時もそんな格好なの?」
「ううん、家では半袖とか着るよ」
「じゃ、家で・・・・」
(家で着る服じゃないか・・・・)
ゆかりは店の中を見渡したが、もうすぐ7月という季節に長袖を置いている店は少ないだろう。
「私ね、姫宮さんが羨ましいなって思った」
「え、何が?」
「私には似合わないから、そういうの」
「出雲さんだって、似合うよ。そうだ、今度うちにおいでよ。ファッションショーやろう」
「・・・・ええ」
ゆかりは言ってからしまった、と思った。
(出雲さんをどうやってお父さんに紹介すればいいの? 中学生のお友達って何か変だよね。あ、でもこなみちゃんは時々遊びに来るから、こなみちゃんのお友達ってことにすれば違和感ないじゃない?)
「ねぇ『姫宮さん』ってよそよそしくないかな」
「え?」
「ゆかりん、って呼んでよ」
「・・・・うん、それじゃ私も・・・・」
恥ずかしそうに下を向く巳弥。
「巳弥ちゃん、でいい?」
「・・・・うん」
俯いたまま、巳弥は答えた。だがその顔には嬉しそうな表情が浮かんでいた。
結局ゆかりは巳弥に赤のワンピースを無理矢理に近い形で購入させ、自分はシックに黒を基調にして白のフリルが沢山ついた上下を購入した。そんなこんなでデパートでのショッピングを満喫した2人がデパートを出ると、犬が尻尾を振りながら巳弥の足元に寄ってきた。
「わ、本当に待ってた!」
ゆかりがそれを見て驚く。まさか本当に犬が巳弥の言い付けを守って待っているとは思ってもみなかった。
「頭いいんだね」
巳弥はしゃがんで犬の頭を撫でてあげた。犬は顔を上げ、その手を舐めた。
(うん、地肌だな。俺たちのようなスーツは着ていない)
ちなみに犬の姿をしている迅雷だが、この格好でもカメレオンスーツを着ている。
「でもさぁ、待ってるのは賢いと思うけど、このままずっと付いてこられたら迷惑だよねぇ」
トコトコと後を付いてくる犬を振り返りながら、ゆかりが巳弥に言った。
「そうね、家では飼えないし」
「撒いちゃう?」
(何、そいつは困る)
それを聞いた迅雷は、ますますピッタリと巳弥の脚に寄り添った。
(何としても正体を突き止めてやる)
「お腹すいてるのかもね」
というゆかりのセリフを聞いた途端、迅雷の腹が鳴った。
(おう、腹、減ってるぞ! 何かくれるのか?)
「駄目よ、ゆかりん」
強い口調の言葉が巳弥の口から発せられたので、勢い良く振られていた犬の尻尾が止まった。
「餌をあげちゃ駄目」
(そんな、何故だ?)
迅雷は、優しいと思っていた巳弥がそんなことを言うなんて、信じられなかった。
「どうして? 巳弥ちゃん」
「責任を負うから」
「責任?」
「一度餌を貰ったワンちゃんは、いつも貰えるものだと思ってしまうの。賢い子ならなおさら。そうなったら、あげた人は責任を持って飼わないと、その子はずっと餌を貰えるまで待っているわ。そして・・・・」
「・・・・巳弥ちゃん?」
「ごめんなさい。嫌なこと、言っちゃったよね」
「ううん、そんなこと・・・・」
2人のやりとりを見上げながら、迅雷は頭を掻いた。
(参ったな、子供だから可愛い犬がいれば家に連れて帰ると思っていたんだが・・・・これでは食い物にありつけそうもない。こうなったら無理矢理ついて行くか?)
「そうだ巳弥ちゃん、巳弥ちゃんの家ってどこ? 近いの?」
「うん、ここから歩いて行けるけど」
「だったら、さっき言ってたCD、借りに行っていい? 巳弥ちゃんの家も見に行きたいし。ね、いいでしょ?」
「でも、お掃除してないし・・・・」
「大丈夫! きっとゆかりの部屋より綺麗だから! ね?」
「う、うん・・・・いいけど」
「嫌なら、無理には行かないよ?」
「ううん、いいよ」
迅雷は「しめた」と思い、その後をついて行くことにした。
(家にいけば、こいつの正体が分かる何かがあるかもしれないからな)
「ここ」
巳弥の家は、昔ながらの瓦屋根の平屋建て木造住宅だった。かなり建ててから年月が経っているようにゆかりには見受けられた。
「古くて、恥ずかしい」
「そんなことないよ」
木で出来た扉を開けると、玄関まで飛び石が敷かれていた。左右を見渡すと狭いながらも庭があり、庭木が植えられていた。
(巳弥ちゃん、1人暮らしって言ってたけど、庭の手入れとか自分でしてるんだ)
「入って」
キョロキョロしているゆかりに声を掛け、巳弥は靴を脱いだ。
「座ってて、お茶入れるから」
客間に通されたゆかりは、出された座布団に座った。何となく落ち着かなく、正座をしてしまう。
(こんな広い家で1人暮らしなのか・・・・淋しいかも)
ゆかりは珍しそうに部屋を見回した。襖の鶴の絵、すかしの入った障子の模様、複雑な彫り物の欄間、滝が描かれた掛け軸、熊の彫り物、高そうな装飾の付いた仏壇、その中央に置かれている金色の玉・・・・。
(何だかとっても日本の家、って感じだよねぇ)
(・・・・って、金色の玉!?)
思わずゆかりは腰を上げ、仏壇に駆け寄った。
(宝玉!? まさか、ねぇ、こんな所にあるわけが・・・・)
ゆかりは更に顔を近づけて観察した。その球面は綺麗な金色に輝き、ゆかりの顔を映し出している。
(綺麗・・・・何だか、それっぽい)
「どうしたの?」
巳弥がティーカップをお盆に入れて帰って来たので、ゆかりは慌てて仏壇から顔を離した。
「き、綺麗だなぁと思って」
「あ、その玉?」
「何なの、これ・・・・」
(まさか「宝玉よ」なんて答えが返ってくるなんてことなはいよね)
「それはね、お父さんの形見」
「お父さんの?」
大きな一枚木のテーブルにカップを置き、ティーバッグを取り出す巳弥。
「紅茶でいいよね、ミルクは?」
「お願い」
ポットでお湯を注ぎ、ゆっくりとティーバッグを揺らすと、カップの中のお湯が濃い赤に変わってゆく。
「き、金なのかな、これ」
ゆかりは仏壇に置かれた玉を指差した。
「違うと思うわ。もし純金なら物凄く高いものじゃない? どうぞ、ゆかりん」
「うん、ありがとう・・・・」
(巳弥ちゃんのお父さんの形見? じゃああれも宝玉じゃないのかな? 勿論本物を知ってるわけじゃないけど、でも、本物っぽい貫禄っていうか、雰囲気っていうか・・・・何となくだけど「無の玉」のような気がする)
「そんなに気に入ったの?」
金色の玉をじっと見つめるゆかりに、巳弥が聞いた。
「え、うん、綺麗だなって・・・・」
(だいたい、宝玉が巳弥ちゃんのお父さんの形見なわけないじゃない)
「あの玉は、私を守ってくれるんだって、お母さんが言ってた」
巳弥が紅茶にミルクを落とすと、紅茶の赤がサっと薄茶色に変わった。
「えっと、巳弥ちゃんのお父さんは、お母さんより前に・・・・?」
「父は私が小さい頃に死んだの。だから私、顔は覚えてなくて」
「そう・・・・」
「お父さんの形見のその玉はこの家を、お母さんの形見の麦藁帽子は私を守ってくれてるんだ」
(やっぱり、宝玉じゃないのかな。今までみたいに、きっと勘違いなんだよ、きっと。それにもし宝玉だとしても、お父さんの形見の玉なんて貰えるはずないじゃない)
ゆかりは玉の事が気になりつつも、約束していたCDを借りて巳弥の家を後にした。帰ってから透子やミズタマに報告しようと思った。もしあれが本物の「無の玉」だとすれば、巳弥の身に危険が及ぶこともあるのだ。
(ミズタマなら本物の玉を知ってるかも。今度、見せた方がいいよね。それも早いうちに。う〜ん、でもまた間違いだったら格好悪いなぁ)
考え事をしながら玄関の扉を開けて外に出たゆかりは、門の陰に潜んでいた迅雷には全く気付かなかった。
(さてと・・・・)
迅雷はゆかりの姿が見えなくなったのを確認して、ひょっこりと姿を現した。
(あいつは意外とやっかいだからな。さて、これで家の中には出雲巳弥1人のはず。入ってみるか)
だが、敷地に一歩踏み入れた瞬間、迅雷は何もないはずの空間に弱いながらも抵抗を感じた。
(何だ、この感じは?)
思い切って踏み込んでみるとスンナリ入れたので、彼はそのまま進んだ。
(何だか怪しいな。まるで結界でも張っているような感じだ)
迅雷は庭から縁側に回って、ガラス戸の外から部屋の中を覗いた。そこでは巳弥がティーカップと残ったお菓子を片付けていた。
(いたいた。お、あいつら俺に黙ってティータイムしてやがったな。俺にも何か・・・・)
迅雷の目に、仏壇の中で光り輝いている金の玉が入った。
(何だと!? あれは「無の玉」ではないのか!?)
縁側の廊下に飛び上がり、迅雷はガラス戸にピッタリくっついた。
(あの輝き、まさに「無の玉」! 出雲巳弥が持っていたのか! 俺の目に狂いはなかったというわけだな!)
(さて、どうやって頂くか)
「あっ」
巳弥はガラス越しに犬の姿を確認して、運びかけていたティーカップをテーブルの上に戻し、ガラス窓に駆け寄った。
「ここまでついて来たの!?」
巳弥がガラス戸を開けた途端、迅雷は猛スピードで部屋に駆け入り、仏壇目掛けて飛び上がった。
(くっ)
だが仔犬のジャンプ力では叶わず、四肢で空を掻いて畳に着地した。
「何してるの!?」
巳弥の叫びに耳を貸さず、迅雷は助走を付けて再度飛び上がった。今度は少し遠いがテーブルを踏み台にして、ツーステップで仏壇目掛けて飛びつく。
「やめて!」
(貰った!)
仏壇の中に見事着地した迅雷は、宝玉に手をかけようとした。
(ぐっ!?)
前脚に電流が走ったような痛みを感じ、迅雷はバランスを崩した。目の前で光がスパークしたような感覚を覚え、そのまま迅雷は畳の上に落下した。そのショックで燭台と花瓶が迅雷の体の上に落ちる。
「ワンちゃん!」
落下する花瓶の直撃を頭に受け、迅雷は気を失った。
迅雷、あなただけが頼りです。
やはりあの子達には荷が重すぎたのでしょう。
あの子たちには期待しすぎたのかもしれませんね。
心配しないで、私もすぐに行きますから。ただやはり、私が向こうに行く前にあなたが無の玉を手に入れてくれたら嬉しいですね。私の手間が省けますから。
期待していますよ、迅雷。
(先生・・・・紅嵐先生、俺、見つけました。無の玉・・・・)
(これで俺、先生の弟子になれますか。立派な学者になれますか)
(おっかぁに楽な暮らしをさせてあげられますか)
(先生・・・・)
鼻に当たる冷たい感触に迅雷が目を開けると、彼の視界は白に覆われていた。
「あ、気が付いた。良かった・・・・」
(出雲巳弥?)
迅雷は自分の頭に置かれたタオルを振り払った。仔犬の頭の大きさに丁度いいタオルがなかったのだろう、顔全体にタオルがかけられていたのだ。辛うじて鼻先は外に出ていたため、息をすることは出来ていたらしい。
「もう平気? 痛かった?」
巳弥が迅雷の顔を覗き込みながら聞いた。
(だから犬に聞いても答えるわけないだろ、おかしな奴だな。ぐあっ!)
迅雷は頭を起こそうとしたが、激しい痛みが走った。
「駄目よ、じっとしてないと」
「・・・・」
(くそ、不覚だ。本来の姿に戻りさえすれば、こんな失態は・・・・そうだ、宝玉は?)
迅雷は頭をゆっくり動かし、仏壇を見た。金色の玉が輝いている。
(良かった、無事だ)
「あなたもあの玉が気になるの? 綺麗だもんね。お父さんの形見なんだ」
(親父の形見? 宝玉がか?)
「お腹すいたでしょ? ご飯にする?」
(・・・・おう、丁度腹が減っていたところだ)
目の前に出された皿には、ご飯と牛肉を炒めたもの、卵焼き、ウインナーが置かれていた。
(何だか、人の晩御飯みたいだな)
迅雷がゆっくり起き上がってテーブルの上を見ると、自分の前に置かれた皿と同じ物が乗っていた。
(魅瑠の俺に対する扱いとは段違いだな。ありがたく頂くぜ)
ガツガツとご飯を食べ始めた迅雷を見て、巳弥も自分のご飯を食べ始めた。
(そういえばこいつ、俺に餌をやったら駄目だとか言ってなかったか? それに俺は宝玉を取ろうとしたんだぞ)
「美味しい?」
巳弥が迅雷に話し掛ける。
(あぁ、美味いな。そうか、こいつはあの玉がどんな物か知らないんだな。それならここは大人しくしておいて、こいつが寝てしまってからゆっくりと宝玉を持ち出せばいいか)
そう考えてから、迅雷はゆっくりと肉を噛み始めた。ふと巳弥を見ると、そんな迅雷を見ながら食事を取っている。
(何だ、ジロジロ見るなよ)
「君って不思議だね。何だか犬って気がしない」
ドキっとした迅雷は、危うくご飯を喉に詰まらせるところだった。
(い、犬の振りを完璧にしているつもりだったが、どこか不自然だったか?)
「言葉を理解してるみたい」
(まずいな、ここで正体がバレてはまずい。何とか夜中までここに居座って、宝玉を持ってトンズラしなければ)
食べ終えた迅雷は、そのまま横になって眠るフリをした。
(早く寝てしまえ、出雲巳弥)
迅雷は満腹の腹をかかえ、そのまま眠りに落ちていった・・・・。
「おう、お帰りゆかりん」
部屋に帰ったゆかりをミズタマがぎこちない笑顔で迎えた。彼は「魔法少女を辞める」と言ったゆかりに、どう接していいか分らないでいた。
「ただいま」
お互い、そのまま次の言葉が出ない。
(そうだ、ミズタマにあの巳弥ちゃん家にあった金の玉のことを話さなきゃ)
ゆかりがそう思った時、ミズタマが口を開いた。
「昨日、透子とも話したんだが・・・・」
「透子と?」
「あぁ、本来『無の玉』を探すのは我輩たちの役目、ゆかりんに無理に探してくれと頼むのは筋違いだじょ」
「・・・・」
「関係のない人間にマジカルアイテムを使わせるわけにはいかないから、まぁ魔女っ子は諦めて貰うしかないが。今までご苦労様だったじょ」
「・・・・うん」
金色の玉のことをミズタマに話すタイミングを逃したゆかりだった。
(あの玉が本物の宝玉だったとして、どうして巳弥ちゃんの家にあったんだろう? 巳弥ちゃんはお父さんの形見だって言ってたけど、宝玉の力を知らないのかな? それとも、やっぱりあれも本物じゃないのかも・・・・でももし本物だとしたら、ダークサイドの人に見付かったら、巳弥ちゃんが危険かもしれないよね)
(露里先生みたいに・・・・先生と同じように、危険な目に会うかもしれないんだ)
(もう・・・・いやだよ。誰も傷ついて欲しくないよ)
「ミズタマ!」
「うわっ、いきなり大声出すからビックリしたじょ!」
「聞いて。今日、巳弥ちゃんのお家に行ったの」
「巳弥ちゃん?」
そういえば巳弥のことはミズタマに話していなかったことに気付き、ゆかりはまず巳弥という子がクラスメイトにいて・・・・という所から話し始めた。
「でね・・・・」
ゆかりんは今日の巳弥との行動をミズタマに説明した。巳弥の家で見た玉が、宝玉っぽい光を放っていたことも。
「出雲巳弥という子は信用できるのか? まさか水無池三姉妹のようにダークサイドということは無いよな? もしその子がダークサイドだとしたら、もう『無の玉』は既に奴等の手に渡ってしまったということになるが」
「・・・・あ」
巳弥=ダークサイドだという可能性をすっかり忘れていたゆかりだった。巳弥のいかにもダークサイドっぽい「太陽に弱い」という体質は、ゆかりにも「ひょっとしたら」と思わせる。だが、巳弥がそうだとして、ゆかりを家に招くだろうか。
(もし巳弥ちゃんがダークサイドだとしたら、ゆかりはどうすればいいの? 巳弥ちゃんと戦うなんて、絶対に考えられない。何より、彼女が悪い子だとは思えない)
(でももし、巳弥ちゃんが仲間のためにと宝玉を探し出したのだとしたら? もしくは、何も知らずに家に置いてあるのだとしたら?)
(分かんない、分かんない、いくら考えても分かんないよ!)
ゆかりは意を決して立ち上がった。
13th Love へ続く
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