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タイトル


 7th Love 「屋上の小さな和解」


(仲直り、しなきゃ)
 透子がバッグから出したランチボックスを片手に教室を出ようとしたその時、水無池芽瑠が前に立ちふさがった。
「約束」
「約束?」
「お昼休み、話を聞くって約束したでしょ」
「・・・・」
 透子は芽瑠の意図が掴めず、返答に迷った。
 ひょっとして宣戦布告? それとも脅迫? まさか和解?
「ここじゃ何だから、場所を変えましょうか」
 芽瑠は両手で大事そうに抱えていた自分のランチボックスを透子に見せた。
(場所を変える? どこへ連れて行く気? まさか暗殺?)
(だとしたら、ゆかり達を巻き込むわけにはいかないわ)
「いいわよ。どこへ行く?」
「屋上なんてどう? 気持ちいいかもしれないわ」
(屋上・・・・なら他の生徒もいるはず。まさか、事故に見せかけ、突き落とされるなんてことは・・・・)
 だが透子の予想に反して、屋上に着いた芽瑠は空いているベンチを探し、さっさとお弁当を開け、透子にも食べるように促した。
「お腹空いちゃった」
 ニコニコと嬉しそうに弁当箱を開ける芽瑠を見て、思わず吹き出してしまった。
「うふふっ」
「え〜、今の笑うところ?」
「だって、普段の水無池さんからは想像できないから」
「私だってお腹は空きます」
 と、眼鏡のズレを直す芽瑠。
「さっきはごめんなさい。姉が酷い事を」
「えっ?」
 またもや芽瑠は透子の予想を覆し、頭を下げてきた。
「もう知っていると思うけど、私たちは宝玉を探しています。そして、あなたたちも」
「・・・・そうね」
「私たちのお仕事は『無の玉』を探して確保し、宝玉を悪いことに利用しようとする人たちから守ることです」
「えっ?」
(宝玉を・・・・守る?)
「『陰の玉』『陽の玉』『無の玉』、三つの宝玉が揃うと『無の玉』に大いなる力が出現すると言われています。その力は3つの世界を統合する、凄い力だそうですね」
「・・・・」
(そうなの?)
 と思いつつ、取りあえず頷いておく透子。そして更に話を合わせる。
「あたしたちも、宝玉の保護が目的なの」
「やっぱり。悪い人たちには見えなかったもの」
「ありがとう」
(何だか、調子狂っちゃったな。敵だと思ってたのに。あ、ううん、まだ信用するのは早いわ。ゆかりは騙されても、あたしだけは騙されないようにしなきゃ)
「でも、さっきのは悲しかったな」
「さっきの?」
「藤堂院さんが私を引っ掛ける為にダークサイドだって名乗ったこと。私、仲間がこっちに来たんだって喜んだんだよ」
「・・・・ごめんなさい、だって貴方たちの正体が分からなくて怖かったの」
「いいのよ、分かるわ。つまりね、私たちの目的は同じってことなのよ」
「手を結ぶってこと?」
「要は『悪い奴らの手に無の玉が渡らないようにすること』が目的なわけでしょう?」
「そうね。でもその『無の玉』が見付かった後、それをどうするかが問題ね。そのままにしておけば誰かが手に入れるかもしれないわ」
「私は宝玉を持って帰るのが仕事なの」
「あたしは探してくれとしか言われてないけど、多分持って来いってことだと思う」
「それって、誰に? それよりも、貴方たちは何者? この世界の人なら、どうやって宝玉の話を知ったの? あれはイニシエートとトゥラビアにしか伝わっていない伝説のはずよ。そう言えば『ダークサイド』っていう呼び方は、トゥラビアの人たちが私たちの世界を指す時の言葉だと教わったわ。でもあなたたちはこの世界の人よね・・・・」
「?」
 耳慣れない単語が出てきたので、透子は首を傾げた。その顔には「透子、難しいことは分からないの。教えて」というニュアンスが込められている。
「あなた、何も知らないの? いいわ、ちょっと長くなるわよ。知っている話もあるかとは思うけど、聞いておいてね」
 芽瑠は時計を見て、昼休みがあと何分あるかを確認して話し出した。
 まずは透子たちが「ダークサイド」と呼んでいる芽瑠たちの世界「イニシエート」。芽瑠たちの世界は厳密に言えば異世界ではなく、この世界と隔離されただけの同じ世界。はるか昔、大きな力によってこの世界から切り離されてしまい、独立した世界を形成した。長い間、この世界とイニシエートとは互いに行き来することは出来なかったが、イニシエートのある研究家がゲートを開いた。それは「出入り口」ではあるが物理的な大きさと言うよりも精神の穴であり、魂の小さいもの、例えば子供などは通り抜けられるが、大人は通ることができなかった。
 もう1つはミズタマたちの世界「トゥラビア」。こちらは全くの異世界で、地球上にはないが「扉」によってミズタマたちのようにこちらに干渉することが可能である。詳しいことは芽瑠にも分からないが、イニシエートとトゥラビアは互いにその存在を認識しており、昔から何らかの繋がりがあるとのことだった。
「その『トゥラビア』だっけ? そこのウサギに宝玉探しを頼まれたのよ。国宝である宝玉がこっちの世界で行方不明になったから探してくれって」
「国宝? トゥラビアの?」
 今度は芽瑠が首をひねった。
「変ね。私たちの世界でも『国宝』なのよ」
「ふぅん、おかしいわね」
 イニシエートとトゥラビアが共に「無の玉」を国宝だと言う。どちらかが嘘を付いているのだろうか、それとも同じものが2つ存在するということなのだろうか。もし1つだけだったとしたら、それはどちらに渡せばいいのか、またどちらにも渡してはならないのか。
 透子がそんなことを考えていると、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「午後の授業、始まるわ」
「あ、待って、水無池さん」
「何かしら?」
「聞いた話によると、あなたたちは太陽の光に弱いってことだったの。でもあなたは現にこうして日差しを浴びていても平気なのよね。情報が間違っていたの? あなたがあたしの腕を掴んできたことと関係があるの?」
「触ってみて」
 透子は芽瑠が差し出した腕をそっと触ってみた。
(あれ、この感触・・・・そういえばゆかりが萌瑠って子の腕を掴んだ時のことを「ストッキングみたいだった」って言ってたっけ。でも、見た目はどう見ても肌だよね)
「これは?」
「太陽の光から身を守るように、私たち3人は『カメレオンスーツ』を着ているの」
「カメレオンスーツ? 色を変えるってこと?」
「ええ。全身を覆うスーツで、表面の色を自在に変えられるの。この腕も、脚も、顔までね」
「顔まで! 暑くない?」
「通気性はいいのよ」
「あ、じゃああの黒ずくめの格好は・・・・」
「スーツの元々の色なの。色の変化を消せば真っ黒になるわけ。あなたたちの正体が分からなかったから、こっちもあの格好で姿を見せたってわけなの。本当は、ちょっと恥ずかしいんだけどね」
「でしょうね・・・・」
 2人は喋りながら教室に戻った。
「そうだ、もう1つ。3組の出雲巳弥ってあなたたちの仲間?」
「え、誰?」
「さっき犬をかばった子よ」
「いいえ、違うわ。この世界に来ているのは私たち姉妹だけだもの」
「そう・・・・」
(だとすると、出雲さんのいかにもダークサイドな体質は何?)
 透子はまだ芽瑠の話を完全に信じた訳ではなかった。何より、異世界の存在自体が信じられない。確かに自分たちも異世界の住人というウサギから不思議なアイテムを授かっているのだが・・・・。
(とにかく一緒に宝玉を探すにしても、見つけた時にどうするかを決めておかなきゃね。もめごとが起こる前に)
「水無池さん」
「なに?」
「何となくだけど・・・・あなたは信じられる気がする」
「そう? ありがとう」
 芽瑠はニッコリ笑って自分の席に座った。

 透子が来なかったので、結局ゆかりはこなみと2人でお昼を済ませ、巳弥のことが心配になった2人は再び保健室を訪れていた。
「どうですか、先生」
 心配そうな顔で入って来たゆかりに、桐子は「もう心配ないわ」と笑顔で返答した。 「いつもより強い貧血といったところね。あと腕や脚に軽い火傷の症状があるけど、海やプールで急激に肌を焼いたようなものね、心配はないわ」
「良かった・・・・」
(出雲さんはきっと、ただ体が弱いだけだよね)
「肌が弱いから、いつも長袖だったりストッキングを履いたりしてたんだね」
 こなみが寝ている巳弥の顔を覗き込む。
「外で遊べないんだね、出雲さん」
「うん・・・・先生、何とか治せないんですか」
 ゆかりに言われ、桐子は困った顔をした。
「私はただの保健婦よ。それに彼女だってこんな体だったら、きっとお医者さんに係っているはずだわ。それでも治らないなら、私たちにはどうすることも出来ない」
「そうですよね・・・・」
「さぁあなたたち、5時間目が始まるわよ。帰った、帰った」
「はぁい。わっ」
 こなみが保健室を出ようとドアを開けたその前に、犬が一匹座り込んでいた。
「あ、さっきのワンちゃん?」
 犬はゆかりがしゃがんで頭を撫でると、少し迷惑そうな顔をした。
「出雲さんのお見舞い?」
 犬は何も言わない。
「知ってるのかな、出雲さんが助けてくれたって」
「どうかなぁ」
 こなみもしゃがんで背中を撫でる。
「お〜い、お前たち、もうチャイムは鳴ったぞ」
 ゆかりとこなみが犬を玩んでいると、廊下の向こうから太い声がした。確か3年の体育教師だ。
「ん、何だその犬。ノラか?」
「はい、多分」
「どれ、摘み出してやろう。どいてろ」
 体育教師はゆかりとこなみを押しのけ、犬を片手で抱き上げた。
「あ・・・・」
「ん、どうした?」
「あの、そのワンちゃん、ここにいたいんです。追い出さないで下さい」
「ああ〜? 犬がここにいたい? 何だそれは、やけに乙女チックな発想だな。俺は現実的に考えるぞ。犬は糞をしたりして学校を汚す。授業の邪魔になる。だから追い出す」
 スタスタと犬を抱えて廊下を歩いて行く体育教師。クゥン、クゥンという犬の鼻声が廊下に響く。
「先生、連れて行かないで!」
「邪魔だ、邪魔!」
「何ですか、廊下で!」
 保健室から桐子先生が顔を出す。
「あ、いやぁ、井ノ坂先生。汚らしい犬っころがいたので、摘み出そうと思いましてね」
「汚らしい犬っころ?」
 桐子はキョロキョロと辺りを見回した。
「どこにいるのですか? 私には斎藤先生が抱いておられる可愛い仔犬しか見えませんけど」
「はっ、はあっ、いや、可愛いですねぇこの犬、コロコロしていて! 食べてしまいたいくらいだ」
「食べないで下さいね」
「もちろんですとも!」
「で、摘み出す犬というのはどこに?」
「いやっ、私の勘違いでした。目の錯覚!」
 体育教師・斎藤は犬を廊下に降ろした。犬はチャッチャと足音を立てて、桐子の足元まで来て、座った。
「あら、いい子ね」
「そ、それでは桐子先生、私、授業がありますので!」
 と、何故か手を振りつつ足早に去ってゆく斎藤先生であった。
「あの反応はひょっとして・・・・」
「あの先生、桐子先生のことが・・・・好き?」
 ゆかりとこなみが顔を見合わせている中、桐子が頭を撫でながら犬に話し掛けた。
「男の人は美人に弱いんだよね。キミもオスだから、出雲さんにホレたのかな?」
 犬がクゥンと小さく鳴いた。

 放課後。
 昼休みの恒例ランチタイムに透子が姿を見せなかったのは、まだ怒っているからだとゆかりは思っていた。
(やっぱり、悪いこと言っちゃったよね・・・・)
(でも、透子だって悪いんだから)
 実は、5時間目と6時間目の間の休み時間に透子はゆかりを尋ねて来たのだが、ゆかり達のクラスは6時間目が音楽だったため、教室移動ですれ違ってしまっていた。マジカルレシーバーならどこにいても連絡が取れるのだが、また喧嘩になるのが怖いゆかりは、透子と連絡を取る勇気が出ない。
「ゆかりん、いたよ」
 こなみが何やら小型の電話帳のようなものを持って来た。
「それは?」
「この学校の生徒名簿。3年生に『水無池』って人がいたの。ゆかりんがここに来る少し前に転校してきたみたい」
「どれ? あ、本当だ」
 つまり、水無池姉妹は卯佐美小学校の5年、卯佐美第三中学校の1年、3年に在籍しているということになる。
 疑問としては、彼女らは何故ここに宝玉の手掛かりがあると分かったのか、だ。ミズタマたちの世界のように、占ってくれる人がいるのだろうか。
「ゆかりん、この後どうするの?」
「保健室の様子を見てくるよ。出雲さんのこと、心配だから」
「それなら、私も行くよ」
 ゆかりと一緒に教室を出ようとしたこなみだったが、背後からクラスメイトに呼び止められた。
「芳井、お前今日、掃除当番だろ?」
「え? あ、そうかぁ・・・・ごめん、ゆかりん。先に行ってて」
「うん、そうするね」
 ゆかりは掃除を手伝おうかとも思ったが、それはクラスのルールにおいて禁じられていた。友達に手伝って貰う子はいつも手伝って貰えると思ってしまい、当番としての自覚がなくなるということと、一度手伝った子は他の子にも手伝いを頼まれてしまい、気の弱い子は毎日掃除をすることになりかねないからだ。生徒同士で当番を交代することも原則として許されてはいないが、やむを得ない事情がある場合は先生の許可を得れば可能である。
 そんなわけでゆかりは掃除当番のこなみを置いて、1人で保健室にやってきた。
「お、姫宮か」
 そこには桐子先生ではなく、担任の露里先生がいた。
「出雲の様子を見に来たのか」
「先生も?」
「あぁ、いつも倒れるから心配でな」
 ゆかりはベッドで寝ている巳弥の顔を覗き込んだ。
「ずっと寝たままなんですか?」
「そうらしいな」
「・・・・」
(ゆかりたちが出雲さんを巻き込まなければこんなことにならなかったんだ)
(あの人たちさえ現れなければ・・・・)
「ごめんね・・・・」
「どうして姫宮が謝るんだ?」
「だって、外に出たのは、ゆかり達のせいだから・・・・」
 露里がゆかりの頭に手をポンと置いた。
「出雲は小さい頃からこういう体質なんだ。姫宮のせいと言ったって、無理に外に引っ張り出したわけじゃないだろう?」
 コクン、と頷くゆかり。
「なら、出雲が自分の意志で外に出たということは、出雲にも責任がある。自分を責めるな姫宮。出雲が目を覚ましたら、そんな泣き顔じゃなく笑顔で迎えてやれ。姫宮が泣いていたら、出雲だって心配をかけてすまなかったって思うぞ」
「・・・・はい」
「俺は笑っている姫宮が好きだ」
「えっ」
 思わず露里の顔を見上げるゆかり。2人の視線が合う。
「せん・・・・せい?」
「俺は時々、姫宮がその・・・・凄く大人に見える時がある。何故だろうな、普段はとても無邪気な姫宮の目が、大人の女性の目に見える時があるんだ」
(えっ・・・・)
「ん・・・・」
 その時、ベッドで寝ていた巳弥が寝返りをうった。
「あ、い、出雲さん?」
「お、おい、出雲、起きたのか?」
 巳弥の瞳がゆっくりと開いた。

 露里が「職員会議がある」と言って保健室を出て行き、ゆかりは巳弥と2人きりになった。巳弥の赤くなった肌は、かなり色が落ち着いてきていた。
「えっと・・・・」
 いざとなったら、ゆかりは巳弥に何と言っていいか分からなかった。あの3人、特に萌瑠のことを何と説明すればいいのか。しかも、ゆかりの放った「スゥィートフェアリー・マジカルトゥインクルスター」を見られているかもしれないのだ。
「ごめんなさい」
 ゆかりが困っていると、巳弥の方から頭を下げてきた。
「え、ど、どうして謝るの?」
「迷惑かけたから」
「そんな、こっちだって・・・・あ、そうだ、ワンちゃん」
 ゆかりはタタっと小走りに保健室のドアを開けに行き、まだ外に座っていた犬を招き入れた。保健室に犬を入れていいのかどうか、そこまで考えないゆかりだった。
「ずっと出雲さんのことを待ってたんだよ」
「そうなの?」
 ゆかりが犬を抱えて巳弥の近くに持ってくると、犬はベッドの上の巳弥に向かって飛びついた。胸のあたりに前足をついて、尻尾を振りつつ巳弥の顔を舐めにゆく。
「きゃっ! もう!」
 嫌がっているようないないような、微妙な反応の巳弥だった。
「ほら、出雲さんは具合が悪いんだから、そんなにしちゃ駄目だよ」
 犬を巳弥から引き剥がそうとしたゆかりだったが、犬はその手をスルリと抜け、巳弥の寝ている布団の中へと潜り込んでしまった。
「きゃっ、そんなとこ入っちゃだめっ」
 慌てて布団をめくる巳弥。そんな彼女を見つつ、ゆかりは「へぇ、出雲さんも慌てることがあるんだ。可愛い」とのんきに考えていた。そして、元気そうな巳弥を見て胸を撫で下ろすゆかりだった。
「凄くなついてるね。このワンちゃん、出雲さんが寝ている間、ずっと外で待ってたんだよ。騒がしくしたら駄目だって思ったのかな」
 太腿に抱きつかれて困っている巳弥を見かねて、ゆかりは犬を後ろから抱き上げて引き離した。
「こら、Hだなぁ」
 ゆかりは4本の脚をバタバタさせて抵抗する犬を、自分の膝の上に置いた。
「こいつ、野良犬かな」
「首輪がないわね」
「行くところ、ないのかな。うちはゆかりもお父さんも猫派だし・・・・」
 尻尾をブンブンと振って巳弥を見つめる犬。
「ごめんね、私、1人暮らしだから」
「えっ」
「飼えないんだ。世話、出来ないの」
 ゆかりは巳弥が1人で暮らしていることを初めて知った。知らなくて当然、クラスメイトで知っている者は1人もいない。知っているのはせいぜい担任である露里から上の教師だけだ。
(中学生で1人暮らし? 大変じゃない)
 と思ったゆかりだったが、その理由・・・・なぜ1人で暮らしているのかという理由は聞けるはずもなかった。
 その巳弥の言葉を聞いた犬は、不思議とショボンとしたように大人しくなった。そしてゆかりには、巳弥の表情も淋しそうに見えた。
「ねぇ出雲さん、今度一緒に遊びに行かない?」
「えっ?」
「あ、駄目ならいいよ」
「ううん、今までそんな風に言われたことなかったから・・・・」
 恥ずかしいのか困っているのか、巳弥は下を向いてしまった。
「この土日は連休だからさ。あ、明日は・・・・」
(明日は休みの土曜日だけど、学校に手掛かりを探しにこなきゃならないんだっけ。透子と交代だから、明日はゆかりの番だ)
「日曜はどう? お買い物とか」
「でも私、日差しに弱くて・・・・迷惑かけちゃうから」
「いいよ、デパートとかでお買い物すれば、あんまり外に出なくていいよ」
「・・・・それなら・・・・」
 巳弥はコクリと頷いた。

 8th Love へ続く



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